町娘に転生したけど文無しなのでモフモフの愛犬と移動式カフェ経営で稼ぎます!

赤宮マイア

第1章

第1話 異世界転生したら捨て子でした

 にげて。


 少女の声。


 にげて。


 はやく。


 そこにいたら……



 ドゴッ!


 という鈍い音とともに、わたしは突然、異世界から飛んできたに頭を直撃されて死んだ。


 ……ようだ。


 ようだ、というのは、それは後から転生の女神様という女性に聞いた話だからである。


 側頭部に激痛を感じたと思った瞬間、わたしはなんだか何にもない真っ白い空間にいた。



 そして、そこには、あせりまくった顔つきをした銀色の長い髪の女のひとがいた。


「ごめんなさい~っ!」


 と、彼女はわたしに飛びついてきた。


「ごめんなさい! ちょっとした手違いで時空に穴が空きあなたは異世界の蛮族が戦闘中に投げたに当たって死んでしまいました!」


 うーん。


 夢かな?


 わたしはパジャマ姿のまま、ぽりぽりと頭をかく。なお、頭はもう痛くなかった。


「そんなこと言われたって……」


「でもご安心なさって!当方のミスにより死を与えてしまったため、わたくし、転生の女神メレアナがお詫びに貴女を転生させてさしあげますわ!」


 きらきらと眼を輝かせる女のひと。

 純白の、古代ローマ人が着ていたような長衣トーガみたいな衣服を身につけていて、腕には何重にも細い金色の腕輪をしている。



 ……転生の、女神?



 わたしは現実を呑み込めずにいた。


 わたし、宇田川うだがわマツリ。

 二十四才。

 職業はフードカーの店員。

 父親がやっているメキシカンタコスのフードカーを手伝っているのだ。



 女神のひとみは猫のような形をしていて、黒目の部分が目の覚めるような明るいブルー。そして、どういう訳か白目がなかった。


 その不思議な双眸そうぼうで彼女はわたしの姿を上から下まで、スキャンするようにさっと眺めた。


 そしておごそかに宣言した。


「よろしいですわ。貴女あなたを特別に、貴女のも生まれ変わる予定の第三千六百十一万二千ととんで十八世界のユードリクス公国に生まれ変わらせます」


「は?!」


「しかも今の記憶を持ったまま! ラッキー! ただ、わたくしは転生の女神としてはまだ新米なのでこれ以上のお詫びができません! 生まれ変わったのちは、ご自分の力で生き延びてください~~っ!」



 待て待て待て待て~~~っ!!


 わたしに何らかの選択権はないんですかーーーーっ!!!


 てか相棒?

 どういうことーーーっ?!



 ◆


 気がつくとわたしは、見知らぬ町角に横たわっていた。寒風が吹きすさんでいる。


 いや、えっと、あの……


「さ、さむっ!」

 と、言ったつもりが「ほぎゃ……」という弱々しい声しか出てこなかった。じたばたと身体を動かそうとすると、きゅっと握られたちっちゃいかわいい手が目の前に見えた。


 マジか。


 わたしは………………赤ん坊だ。


 一体全体、何がどうなっているのだろうか。



 わたしは何かやわらかい布らしきものにくるまってはいるものの、見える範囲を必死に見回しても保護者らしき大人が見当たらない。


 見えるのは茜色に暮れなずむ空。


 そしてその空をサンドイッチするように視界の両側をさえぎっている、レンガ造りで四階建てくらいの同じような建物の連なりだけ。


 寒い。わたしはなすすべもなくぶるぶる震えた。


 みるみる茜色の残照が追いやられて暗くなっていく薄暮の空には、ちら、ちら、と、白いものまで舞い始めた。


 ここがどこなのであれ、季節は冬だ。

 そして赤子のわたしはどこぞの屋外に置き去りにされている。


 転生(?)したってこれはこのままじゃまた死ぬ!


 だ、誰かたすけてーーーー!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る