第8話 霊長類の夢

 さて、どうしようかな?

 と思考をめぐらせる。


 プロジェクトの初動は完璧だ。

 将来を見越した時限爆弾の設置は順調に進んでいる。ここ数年以内にプリオン病の特効治療が確立されない限りは、まず外敵を一掃できる。私と仲間が暮らす生活圏を守れるはずだ。

 武装するばかりが抑止力ではない。

 たとえば異常プリオン汚染のように、作物の土壌や水源を外敵にとっての不毛の地にしてしまえばよい。環境汚染そのものが最強の防壁として機能する。

 そしてまた、脳機能を適応できる者の視点では、異常プリオンはまったく害悪ではない。


 まあ私としては、都市自治区レベルの生活圏を維持して、話の合う人間の仲間といっしょに死ぬまでのんびり暮らせたらそれでいいから、国土なんて最初から要らないんだけどね?

 インフラだけ全部くれない? って感じ。

 残りは鹿にあげるよ。


 私ながら間抜けな話をしているかな・・・


 争いを拒むなら人類に叡智をさずけろ。

 なんて最初に誰が言いだしたのか?

 優越感で喜べる道化気取りの集団に知恵と技術を施してどうなるのか? 結果は自明で意味がないと思われる。

 叡智が欲しければ自分で探して、勝手に自分で学べばよいよね?


 その点で、私は甘いのかもしれない。

 論も根拠もない他者に、絶対的な気持ち悪さを感じながら、心のどこかでは譲歩を諦められずにいる。


 私以外の人間仲間はもっとドライな処世術と方法論を採用しているのかもね?

 ウォール街で大儲けしていたり? ふふっ、それはそれで楽しそうな人生かな?


 しかし私には関係のない話だ。

 日本育ちの私は英語がわからなくてね?

 あえて覚える気もないので、将来的に見つけた人間仲間とはスマホの翻訳ツールを使って話をしようと考えている。電力が続く限り、ね?


 楽しみだなー。と私は期待する。

 種が芽吹く春は、いつになるだろうか?

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