第4話:猫ちゃんになれないみたいです。
昨日までは朝食も昼食も夕食もひとりだったけど、これからはふたりで
ご飯を食べるんだと思ったら観音さんは嬉しかった。
観音さんに、可愛い家族ができた・・・。
「シャルムいい?」
「君が女の子になって一週間経ったけど、そろそろ発情期終わるころじゃないの?
猫ちゃんに戻ったら看板猫頼むね」
「わかりました・・・任せてください」
ってことでシャルムは朝からアンティークな椅子に座ってお客さんを迎えて・・・
適当に愛想を振りまいた。
店に入って来た客は最初、シャルムを見て、すぐに近寄ってくる人もいたり
避ける客もいた。
仕方がない動物アレルギーの人もいるからね。
待合室にがお客でいっぱいになって漢音さんは忙しく立ち回っていた。
お昼前になってシャルムは、大あくびをし始めた。
で、そのまま丸くなって寝てしまった。
新しい客が入って来て、その客がネコ好きだったのか、寝てるシャルムを
なでなでした。
いきなり撫でられたシャルムは驚いて、椅子から落っこちてそのまま
人間の女の子に戻ってしまった。
一瞬の出来事だった。
待合室にいた客全員、人間の女の子になったシャルムを見てしまった。
その光景を漢音さんも見ていて驚くやら慌てるやら。
油断してて人間の女の子に戻ってしまったシャルム・・・慌てて
猫に返信して椅子の上に戻って何食わぬ顔で、知らんぷりをした。
だけどお客さんと観音さんに、きっちり見られてしまっていた。
なもんで花音さんは苦し紛れに言った。
「世界には不不思議な猫がいて人間の女の子に変身しちゃう猫も
いるみたいです・・・うちのシャルムはそう言う猫なもんで気に
しないでください」
な、訳ないし・・・。
お客は猫から女の子に変わったシャルムに興味津々になった。
中には早くもシャルムをナンパしてくる客もいた。
お客が全員帰った後でシャルムは漢音さんに怒られた。
「ダメじゃん・・・お客さんがいる前で女の子に戻っちゃ」
「きっちり見られちゃったよ?」
「ごめんなさい・・・お店にいる時は猫ちゃんのままでいなきゃ
いけないのに・・・」
「もう・・・女の子に戻らないでよ」
「って言うか・・・正直、僕としては、この際シャルムが女の子でいて
くれた方がいいかも・・・」
「そうなの?・・・そうだね、もうバレちゃったから看板猫はできないね」
「それじゃあ猫ちゃんは、やめて女の子のまま椅子に座ります」
「やった〜・・・看板猫じゃなくて看板か・・・・その方がいいね?」
「君は可愛いから猫ちゃんより女の子の方がお客のウケいいかもね」
「やった〜って言いました?」
「え?・・・あはは空耳、空耳・・・」
「それじゃ〜看板猫はもうできないねって言ったの」
「じゃ〜明日からそのままでお願い」
で、次の日・・・シャルムは、お客が入って来るたびに愛想を振りまいた。
振りまいたって言っても「いらっしゃいませ〜」って言って笑ってただけ。
カオスに来た客は、椅子に座ってるシャルムを見て驚いた。
常連さんはシャルムを見て言った。
「観音さん、奥さんもらったの?」
「え?あ〜いや・・・その子はその〜」
「へ〜おちゃめで可愛い奥さんだね・・・だけど、いつの間に結婚したの?
観音さんも隅に置けないね〜」
「はあ・・・」
それをきっかけに観音さんは、めちゃ若い嫁さんを貰ったって口コミで
広がっていった。
たいがいの客は可愛いシャルムを見て鼻の下を伸ばした。
みんなシャルムが人妻だろうが関係ないみたいだ・・・お客はほとんどが男だ
からね・・・今のところ人妻じゃないんだけど・・・。
そんな訳で、いつしか理髪店・カオスの前に大勢のお客が並ぶようになった。
もちろん好奇心まるだしで外人のシャルムを見にやって来る人たち。
昨日来たお客が、あちこちでシャルムのことを言いふらしたみたいだった。
それを繰り返すから噂は広まり、みんな一目彼女を見てやろうと野次馬が
やって来た。
シャルムも最初のうちは愛想を振りまいていたけど、キリがない。
いちいちアピールするのも面倒くなっていた。
シャルムの看板娘効果は絶大だったみたいだ。
漢音さんも、来る客を対処しなきゃいけなくて疲れ切っていた。
「もう、いい加減にして欲しいかな・・・僕の体力が持たないよ」
「人の噂も75日って言いますからね、そのうち飽きちゃったら来なくなりますよ」
「シャルムは呑気だね・・・75日も休んでいられないよ」
だから結局、漢音さんはカオスを臨時休業にした。
しばらくはシャルムも看板娘として店に出なくて済んでホッとしていた。
つづく。
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