私の彼は秘密の恋人

@kiokunomaikyuu

第1話

私の彼は秘密の恋人


勘違いから始まる甘い恋







椎名壮一

20歳

大学生。霊媒師。

過去に色々とあり捻くれてて警戒心が強い。

ゆいなに一目惚れする。



北条ゆいな

17歳

高校三年生。霊媒体質。

清楚でおっとりとした女の子。

誰にでも優しくできる。









俺、椎名壮一には好きな女の子がいる。


財閥の令嬢の北条ゆいなという子で、近くで見た顔が好みだった為、一目見て気に入った。


ただ、俺は見た目だけでは落ちない。


性格も雰囲気も相性がよくて、気づいたら自然と好きだと思った。


そして、ある事をキッカケにして本気で好きだと認めてしまった。





俺は、人から裏切られた経験が山程あるので、疑り深いし、愛は歪んでると思っている。


ゆいなのその誰にでも優しい所も裏があるんじゃないかと思ってしまい、中々受け入れられなかった。


最初は良かった。ただ、可愛いから好きと思えたのだから。


…でも、いつもニコニコと笑顔を向けてくれるその笑顔が、俺だけのものじゃないのも知ってる。







彼女と出会ったのは、たまたま仕事の依頼でだった。


俺は霊媒師(れいばいし)として名高い家系に生まれ、生まれた瞬間から「才能がある」と言われて育った。


幼少期から、親が現場で怨霊(おんりょう)を祓う(はらう)姿を間近で見ながら、自分もその技術を学んできた。


ちゃんと祓える霊媒師は少ないとされ、中学生になると、親の手伝いとして現場に駆り出されることも珍しくなかった。


高校生になる頃には、独り立ちして、親から渡される依頼をこなし、すでに5年という実績を積んでいた。


数々の難事件を解決してきた経験と、椎名という名門霊媒師のネームバリューも相まって、


俺は20歳という若さながらに、世間に名を知られる霊媒師となったのである。







今日は、依頼人である財閥の社長という北条孝彦に会い、

どんなことに困っているのか聞き出すも、中々話さない。


俺の若さに驚いたのか?


それともこの独自の髪色にか?


分からないが彼は俺を見て眉をひそめた。


霊媒師なんて霊が見えない相手からするとインチキと思われるので、俺も色々と言われてきた。


だから、彼の態度にも仕方ないと時間を置いて、他の日常会話的な話をし始めると、

段々と緊張が解けていったのか、本題の話をし始めた。




内容は、霊媒体質の依頼人の娘に取り憑いている(とりついている)霊を追い払ってくれとの事であった。


色々な霊媒師を渡り歩いても退治出来なかった大物らしく、最終的に俺じゃないと無理と言われたらしい。


話を聞いただけでも厄介そうだとため息を吐く。


俺にはこういう難しい依頼がよく来る。


「お前なら大丈夫!」


と言われているけど、勘弁してくれとため息を吐く。



そして、娘の写真や簡単なプロフィールを見せられた。


金ならいくらでも払う!と言い、


大切な娘だから、よろしく頼むと頭を下げられたので、分かりましたと頷いた。







……









指定された場所に、時間よりも少し早く着くも、彼女は居なかった。


しかし、怨霊の気配はあって、しかも、おびただしい量の気配があるので、彼女がここのビルにいるのは何となく分かった。


怨霊によって引っ張られて、意図せず移動してしまうなんて事は良くあるので、俺はその気配を追った。




気配を追って、屋上の扉を開く。


写真の彼女はそこに居た。




彼女は遠目から見ると、ほっそりとしててスタイルはいいけど、背は高くはなく、髪の長さや色にも特徴はなく、服装は清楚な感じで可愛らしい。


顔の印象は、普通にいる可愛い女の子という感じだった。


渡された写真と顔のイメージが違うので、首を傾げる。




しかし、彼女が依頼人の娘であるのはハッキリしている。


何故なら、物凄い数の怨霊に取り憑かれていて、しかも、屋上の端に移動していっていたからだ。


彼女は怨霊に引っ張られていく。


ふらふらと歩く彼女を、俺は慌てて引き止めた。




危なかった!







……








彼女は、何でも無自覚に受け入れてしまう優しい性格の為、

怨霊達の格好の餌食(えじき)にされているみたいだった。




可愛い!と取り憑く(とりつく)男の悪霊。


彼女を好き好きと熱く語る生き霊にも憑かれている。


美少女でモテモテとか許せない!と語る女の悪霊(あくりょう)にも恨まれている。


霧(きり)のようなモヤの低級霊、手のような地縛霊(じばくれい)など、様々な霊が彼女の背後から顔を出す。


だからか、俺以外の霊媒師である仲間からは、あれはもうお手上げ。と言われているのを聞いた。


彼女に近付いて気分が悪くなって倒れる子までいるらしい。




…こんなに大勢の霊に取り憑かれていて、彼女よく平気だったな。


目の前にすると、これは、並の霊媒師では退治できないレベルになっていると、改めて理解できた。


それにしても、ボディーガードも連れずに、一人でフラフラしてるなんて、何してるんだ?


まぁ、ボディーガードが席を外した隙に、霊によって引っ張られていったのだろう。


取り憑かれているとそういう隙をつかれるから、厄介だ。





その後、彼女のボディーガードというかデカくてガタイもいい男と、合流して、喫茶店に入って、彼女の霊媒体質について話す事になった。


ただ、霊媒師という言葉すら知らないらしい彼女とは話が合わなかった。


祓うを払うと聞き間違えるわ、首を傾げまくるわで、はぁー、とため息を吐く。


でも、まぁ、そうだよなと思う。


幼稚園からずっと、お嬢様が通う女子校という閉鎖された空間にいて、霊が見えないなら、こうなるのも分からなくもない。


取り憑かれているのに、霊関係に疎い人にも何人かと会った事がある。


理解は出来る。けど、少し苛立つ。


会話が出来ないのは正直しんどかったし、見えない相手に、理解できるように説明するのも面倒臭かった。




はぁー、と息を吐き出して、気持ちをリセットする為に、コーヒーを飲む。


そして、チラリと彼女の方を改めて見て、


…目を見開いた。



至近距離でよく見てみると、かなり可愛かった。



遠目からだと普通にいるオシャレな服を着た可愛い女の子。


近くで見ると、女優レベルの美少女。



——それが北条ゆいなだった。


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