竜戦記

@goldfish1971

プロローグ:始まりの神話

 始まりの時、世界には二柱の竜がいた。  万物を生み出す『光の竜』と、万物を無に帰す『闇の竜』である。


 光は慈愛をもって生命を育み、大地にエルフを、山にドワーフを、そして平原にヒトを生み出した。  対して闇は、その濃き影から魔物と魔族を生み出し、世界を混沌で満たそうとした。


 光と闇、創造と破壊。相反する二つの力は永きに渡り相争った。  だが、戦いの果てに光の竜は悟る。闇を完全に滅ぼせば、対をなす光もまた存在し得ないことを。


 故に光の竜は、その身を裂く覚悟で闇の竜を封印することを選んだ。  自らの力を四つに分け、炎、風、大地、水の守護竜を創造し、世界を繋ぎ止める楔としたのだ。


 世界の均衡は、この四体の竜が守る封印によって、かろうじて保たれていた。  ……しかし、その均衡が永遠に続くことはない。


 今、封印の鎖が錆びつき、再び混沌の時代が訪れようとしていた。

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