ボクっ娘の幼馴染と同棲をはじめました〜
枝豆コーヒーサラダ
ニューゲームリスタート①
『ピピピッ ピピピッ』
眩い朝の光を切り裂くように、アラームが容赦なく鳴り響く。
頭の奥にビリリと残響が広がり、さっきまで夢の中を漂っていた意識が少しずつ表面へ浮かび上がってくる。
「しんちゃん、しんちゃん!!朝だよ!!起きてよ!!」
ベッド脇で身を乗り出しているのは、少し茶色がかったくるくるのボブでぴょんととアホ毛が立っている少女……三条咲。彼女の元気な声が、まだ眠りにしがみついていた僕の意識を強引に引き戻す。
「あと十分だけ……」
枕に顔を埋めたまま、半分寝言みたいにそう呟く。
「ダーメ!遅刻しちゃうよ!」
咲は腰に手を当てながら、完全に“呆れモード”に入っていた。それでも布団の温かさには勝てず、僕はゆっくりと再び布団の中に身体を滑り込ませる。その動きを見て、咲はぷくっと頬をふくらませ、『ぺしっ』と、布団を軽く叩いた。
「もう! じゃあ僕、先に行くかね!!」
そう言い残して、咲はバタバタと部屋を飛び出していく。
その小さな足音が遠ざかるのを聞きながら、僕はようやく片目を開いた。
僕と咲は同棲しているのだが、どうしてこうなってしまったのか。
その答えは、少し前、いやもっと昔まで遡る。
※※※
僕こと安倍心太朗には幼馴染、三条咲がいる。
三条咲との最初の出会いは、小学生の頃だった。当時は、妖怪ウ〇ッチやス〇ブラがめちゃくちゃ流行っていて、僕も例にもれず毎日のように遊びまくっていた。そんなある日、公園のベンチでゲームに夢中になっているとふと視線を感じて顔を上げる。少し離れた場所で、画面をじっと見つめている少女がいた。
「……やってみる?」
「うん!」
あまりにもキラキラした目で見てくるものだから、思わずゲーム機を差し出した。
最初はぎこちない操作だったけれど、すぐに夢中になったようで、気づけば二人で一緒に笑った。その短いやり取りが、俺と咲の始まりだった。
それから僕たちは毎日のように一緒に遊び、同じ中学に進学しても、放課後はほぼ毎日顔を合わせていた。ただちょっと変わったのは、一緒にいる時間が長くなったことぐらい。
でもそんな生活は長く続かなかった。親の仕事関係で、都内に引っ越しすることになったのだ。これを機に高校では一人暮らしをすることになり、新しい制服、新しい街、新しい学校。もう、咲とも会うことも少なくなるだろうそう思っていた。だが違った教室を入ってすぐの窓際の端に机に突っ伏している小学校からの幼馴染がいたのだ。
「……咲!?」
思わず声が裏返る。
すると、その少女はぴくりと肩を揺らし、眠たげな目をこすりながら顔を上げた。
「ん……? あ、しょうちゃん! 久しぶり~元気してた?」
ちょっと猫っぽい笑みで、ニヤニヤしている「サプライズ~びっくりした?」
「めちゃくちゃびっくりしたけど……お前さ、上京してくるなんて一回も言ってなかっただろ」
「言ってないよ? だって言ったら驚かないじゃん」
当然といった顔で胸を張るが、すぐに視線をそらして、指先をいじりながら小声で続ける
「……僕、コミュ障でしょ。
もし知らない人ばっかの高校だったら、絶対不登校になる未来が見えちゃって。
だから……しょうちゃんと同じ高校なら大丈夫かなって思って……来ちゃった。」
最後だけ、少しだけ照れたようにこちらを覗く。ジト目のくせに、妙に甘えるような視線だ。
「いや、来ちゃったじゃなくて……。いつの間に受験してたんだよ」
「ふふん、秘密~」
どこか、懐かしさのあるような再開の空気がじわじわと教室を満たしていた。
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