転生したらヴァイキングの農民でした。文化勝利を目指します
ダイスケ
プロローグ & エピローグ そして 第1話へ
まえがき:「ええいっ!貸せっ!!内政モノはこう書くんだ!」
という気持ちで書きました。
あとヴィンランド・サ◯大好きです。ビジュアルイメージはあんな感じで。
大体お昼に更新します
プロローグにしてエピローグ:僕は北方の征服王
僕は、自分でも言うのもなんだけど凡人なのだ。
だから凡人の幸せを追求して生きたいんだよね。
「人は助け合って生きるべきだと思うんだよね。暖かい家と美味しいご飯があればなお良い。争い奪い合うのは良くない生き方だよ」
「なにを異教徒のような戯言を!陛下、皆があなたを待っているのですよ!!さあさあさあ、我が儘を仰らずに早く!」
水晶の転がるよう、と称えられる美しい声が、僕の
しぶしぶと見事な黄金の髪を誇る婚約者に手を引かれ、
待っていたのは、爆発だった。
人々が吠え、叫び、足を踏み鳴らし、盾を叩き、角笛を鳴らす音圧。
処理しきれない大量の情報が、ほとんど物理的な圧力を持って吹き付けてくる。
冷たく凍てついた空気、
雲一つない空から降り注ぐ強烈な太陽の光。
そして、戦斧と丸盾と鉄兜と鎖帷子を鈍く反射させた大勢の、視界を覆わんばかりに詰めかけた大柄で経験豊富な精鋭戦士達。その数は数千人以上だろうか?
高台から見える湾に翻る帆の数々。舳先と船尾が高く北海を切り裂いて走るロングシップだけでも、数百隻は集まっているだろう。岬の影にいるものも加えればもっとか?
戦士達は僕を目にした瞬間から、己の磨き上げた鋼の武器を振り上げ、分厚い丸い盾を叩き、口々に叫んでいた。
「おお、北方の征服王がついに立つか!!」
「大王よ!征服のときは来たり!」
「大神オーディンよ、ご照覧あれ!今こそ地上にヴァルハラをもたらすとき!」
「戦だ!神々に捧げる大戦だ!」
「我らに勝利を!」
「勝利を!」
「栄光を!」
僕は誰かが止めてくれないものかな?と隣を見てみた。
残念ながら、僕の美しい婚約者も精鋭戦士達と一緒になって、いや、誰よりも熱狂し、鋭い槍を振り上げて「勝利を!!」と絶叫していた。
「おかしい。どうしてこうなった」
後代の歴史書には「トールステイン大王は雄々しく雄叫びを上げ、兵士達の歓呼に力強く応えた」と記されている。
これは中世北方のとある田舎の村に転生した凡庸な現代人に過ぎない僕が、北方の王やら征服王へと担ぎ上げられる物語なのである。
第1話:トールステインは暖衣飽食したい 5歳の冬
僕はトールステイン。5歳。
なんとなく自我を獲得したのは、ここ一週間ほどのことだ。
ほとんどの子供がそうであるように、赤ん坊の時の記憶はハッキリしない。
なんとなくほぎゃほぎゃして、走り回って、虫をつついて、ご飯のたびに口の周りを汚して、外で鼻水垂らしていたら、突然、今ここにいる自分を発見したのだった。
一般的には、自我の目覚め、とか言うらしいね。
とにかく僕は、幼児から子どもになったことを自覚した。
そうして、今はちょっとした悪戯を思いついたので実行しているところ。
ただし監視付きだけど。
「トール、火遊びは怒られるわよ」
「大丈夫。
「トールステイン!あなた、ほんと小賢いというか。
「人聞きが悪い。
エリン
まあ、5歳の子供が家から石鍋を持ち出して、手製の竈で火にかけていたら注意したくなるのはわかる。
これでも一応は火事の対策はしているのだ。
竈の周囲は雪が積もっているし、風のない日も選んだ。
家の裏手で燃えるものもないし、木桶に消火用の水も汲んである。
「それで、何してるの?なんか変な色の水を沸かしてるけど。また草の汁飲むの?」
「草の汁じゃなくてハーブ茶ね。松の新芽は体にいいんだよ。それと、これは塩を作ってる」
「塩!?」
姉ちゃんは青い瞳を丸く開いた後で、お腹を抱えて金髪の三つ編みを震わせた。
「あはは!トールも可愛いところあるのね!そんな小さい鍋と竈で塩づくり!小さいトールは知らないかもしれないけど、塩っていうのはね、大人たちが総出で、すっごく大きな鉄鍋で沢山の薪の山を使って、一日中かけて海藻を焼いたり、海の水を炊いて乾かして作るものなのよ?ふふっ。くべる薪だって小枝ばっかりじゃない!わかるわかる。小さいときは、塩なんて海の水を汲んで沸かせば直ぐにできるって、思うのよねえ」
「…まあ、すぐに分かるよ」
僕は得意げな姉に反論することなく作業を進める。
家の火炉から火種を貰ってきて、削った小枝の木屑と枝を無造作に突っ込んだだけの竈の口に移すと、火はすぐに燃え始めた。
「あー…あったかーい」
火を見ると、なぜ人は手をかざしたくなるのだろう。
エリン姉も僕に習ってか、隣にしゃがみ込んで同じように手をかざした。
手製の竈にかざした手は、我ながら白く小さくて頼りない。
指は短いし道具も思い通りに使えない。
お陰で竈づくりに5日もかかった。
「早く大人になりたいなあ」
「生意気ねえ。今だってこんなに大人ぶってるのに。そんなに早く成長したら、わたしがお嫁に行く前にお爺ちゃんになっちゃうわよ」
「…僕は運命の糸の子なんだってさ。生まれたときに旅の
「そんな大層な子には見えないけどねえ…」
エリン姉はなぜか楽しそうに言うと、竈に集中している僕の髪をいじり始めた。
まるきり犬猫扱いだけど、まあいいか。
小一時間後、頑張って小枝を足し続けていた甲斐があってか、僕の髪の小さな三つ編みが10を超える前に家から持ち出した石鍋の底には、かなりの量の塩ができ始めていた。
「え!?なんで!?なんでこんな短い時間とクズ薪で、こんな量の塩ができるの!!?トール、まさか魔術とか使った?」
「作るところ一緒に見てたでしょ。魔術なんて使ってないって」
これで冬の小遣いは調達できた。
あとはニシン卵を塩漬けにして燻製でもつくるかな、それとも革なめしの爺さんに交渉して
ぼんやりと塩の使い途を考えていた僕は、エリン姉が「母さん呼んでこなきゃ!」と勢いよく立ち上がって、一目散に走り出すのを止めそこねた。
「母さーん!!トールがねえ!大変なのーー!!!」
「あ、ちょっ…」
5歳の体では8歳の子供に追いつけるはずもなく。
少しして、村中に響き渡るんじゃないかという大音声が響き渡った。
「トールステイン!トールステイン!!トールステイン!!!」
3回繰り返し呼んだということは、かなりボルテージが上がっている証拠だ。
おかげで僕がやらかしたことは、あっという間に近所中にに知れ渡り、石鍋の持ち出しと無断の火遊びの件は、家族会議でたっぷりと叱られる羽目になったし、せっかく作りかけた塩は家で使用するために取り上げられた。
「僕の小遣い…」
叩かれて真っ赤になった尻をさすりながら、次はもう少しうまくやってやろうと計画を練る。
諦めが悪いのが、僕の取り柄なのだ。
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