文才しか能がない俺が異世界転生したら、英雄扱いされた挙句文才スキルで無双出来た件
五月雨前線
第1話:異世界転生
「むふふ……1日でPV20万突破……あざーっす……」
小説投稿サイトのマイページを開き、戦果を確認した俺は、唇の端を釣り上げた。
ちょうどその時電車がホームに滑り込み、ドアが音を立てて開いた。俺はスマホをポケットにしまい、早足で電車から降りた。
「お前、最近できた彼女とどうなんだよ?」
「明後日の合コン楽しみだわ〜」
「先輩彼女いるらしくてさ〜狙ってたからマジショックなんだけど〜」
「なあなあ、午後の講義サボって雀荘行かね?」
「バイトマジだるいわ〜」
エスカレーターで上の階に移動し、改札を通り抜ける。周りには自分と同じように通学する大学生が沢山おり、ザ・大学生とも言うべき会話が耳に飛び込んでくる。
下らない。俺はお前たちとは違う。
俺は首を振り、会話を遠ざけるべくワイヤレスイヤホンを耳に突っ込み、スマホを操作してお気に入りの邦楽の曲を流し始めた。
人混みを避けたい気持ちが湧き上がり、俺はここから最も近い正門ではなく、少し遠くの門から構内へ入ることにした。正門を通り抜ける多くの学生を尻目に、遠くの門へ向かう。
今日の講義はただ椅子に座っているだけでいい。90分の間に、次回作のプロット作成を進めよう。次回作にもかなり自信がある。PVは鰻登りだろう。きっと書籍化の打診が来る。
「むふ……むふふ……」
輝かしい未来を想像し、思わず口角が上がってしまう。幸い周りには誰もいないので気味悪がられる心配はない。信号が青になったのを確認し、横断歩道を渡ろうとしたその時。
目に飛び込んできたのは、大型のトラックのフロントガラス、眩い光。
あ、まずい、と思った時にはもう手遅れだった。
信号無視で突っ込んできやがったトラックは俺の体を吹き飛ばした。
ふざけんな。
横断歩道は青信号だっただろうが。
てめえは何で赤信号なのに突っ込んできやがる。
痛い、というか熱い。
あ、駄目だこれ死ぬやつだ。
ふざけんな。俺はこれから日本一の小説家になって、今まで馬鹿にしてきた奴を見返して、素敵な女性と結婚するはずだったのに。
何で、何で、何で……?
痛さを通り越した熱さに全身を貫かれながら、俺の意識は漆黒の闇へと沈んでいった……。
――――――――――――――――――――――――――
あー、くそ。死んだ。終わった。
「…………さい」
どこだよここ。何なんだこれ。天国か? そもそも天国なんてあるのか?
「…………です…………さい」
暑くもなければ寒くもない。俺は今、目を瞑っているのか? ちょっと待て、実体があるというのか? 俺は死んだはずだろ?
「…………様…………いです…………ください」
ってか、さっきから聞こえてくるこの声は何なんだ?
「ベール様っ! お願いですっ! 目を覚ましてくださいっ!」
「おわあっ!」
一際大きな声に反応するように意識が急速に覚醒していき、俺はがばっと上体を起こした。
「はあああ……! やっと……やっと目を覚ましてくれたんですね……!」
目の前には、片膝をつき、蒼い瞳から大粒の涙をこぼしている女性が一人。
っておいおいおい。何なんだここ? 誰なんだ貴方は?
「初対面にも関わらず突然このようなお願いをするのは失礼なことだとは重々承知しています! しかし緊急事態なんです! お願いします! どうか、貴方様の文才で、我がパーブルー国の危機を救ってください!」
「…………はい?」
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※本日より毎日不定期の時間に更新します! 頑張って書いていきます!
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