第39話 次なる旅支度

ダンジョン調査を終え、あたし達はギルド長室に案内されていた。


「ギルドマスター、『鬼姫』の皆さんをお連れしました」


『どうぞ』


元副ギルドマスターのハゲの騒動やら謝罪やらで登録する暇がなかったが、最初のダンジョン調査をする際に、パーティー名『鬼姫』として登録していたのだ。


中に入ると、ギルドマスターのナタリーの他に、副ギルドマスター代理のカンナが待っていた。


「今日もご苦労様でしたね。ダンジョンはどのような感じでしたか?」


「あたしら、通常のダンジョンはこの4日間のしか知らねぇ。それでいいなら、これと言ってなかったな。5層もカンナに聞いていた奴らしかいなかったしな」


「なら、大丈夫そうですね。今日には他のダンジョンに行っていた高ランクパーティーの方々も戻ってこられますし、『鬼姫』の皆さんは今日までご苦労様でした」


まてよ、今日までご苦労ってこたぁ····つまり!


「今日までってこたぁ、情報あったのか!?」


ナタリーは「はい」と答え、カンナも「うんうん」と頷いていた。


「ですが正直、信憑性が薄いです」


「そんなこたぁねぇよ!全く情報がねぇよりはマシだ!」


「わかりました。ではお話ししますね」


ナタリーの話をまとめると、東の大陸から帰ってきた奴の情報だ。


なんでも、ある国の辺境の街とその周辺の村に、数ヶ月に数度、その周辺では珍しい種族の龍人族が度々目撃されているらしく。


突然、目の前に現れたり、目を離した隙に、いなくなっているらしい。


余談だがここで初めて、今いる大陸と東の大陸の名前が判明した。


あたし達がいる大陸がウェストリア大陸、東の大陸がホウライ大陸だ。


閑話休題


「そんで、東のホウライ大陸?の、なんつう国に行けばいいんだ?」


「詳しい場所はわからないのですが、ヤマトという国のカムイという辺境の街です」


マジかよ!名前が一気に日本ぽくなったぞ!


「ここからが重要なのですが」


カンナが大陸の地図を広げながら説明してくれた。


「ホウライ大陸に今現在、向かう船が出ている港がある街は2ヶ所です」


カンナはそれぞれの場所に指差していった。


「まず一般的な海路ですが、ここから南東の国、貿易連邦 オーシャナから出ています。ここなら滅多なことがなければ、簡単にホウライ大陸までの船に乗れると思います」


一般的っつうなら次はここか。


「次なんですけど、こちら東にある大国、聖ルミナス教国です。この国は元々、ホウライ大陸との交易をしていたわけではないのですが、1年くらい前に、ある出来事があり急遽、交易を進めたみたいです」


「なんだその出来事ってのは?」


「それがですね、ある儀式を行い、異世界から『勇者』を召喚したのが発端らしいです」


は!?


あたしはカンナが何を言ったのか、わからなかった。


「なんでも、数人いる内の何名かが、ヤマトから輸入される『オコメ』という穀物類が、どうしても欲しいとのことで、最近やっと港から船を出すことが出来るみたいです」


「ちょっと待ってくれ!!」


カンナは『は、はひ!···』と急にあたしが声を上げたことで、変な声を出して一旦、話は止まった。


おいおい、ちょっと待ってくれ!情報量が多すぎんだろ!


あたしが頭をかきむしっていると、不意に後ろから肩を掴まれた。


「!」


「シノブ!落ち着け!!········お前らしくないぞ」


ナガレの一言で落ち着いてきた。


「くぅーん」


「クーン、ク~ン」


アカツキからは『主、大丈夫?』と伝わり、シズクからは心配してるような上目使いで頭を刷り寄せてきた。


あたしは2人の頭を撫でながら笑って言った。


「大丈夫だ、問題ね。ナガレもすまん」


ナガレは『ああ』と言って1歩下がった。


「だ、大丈夫ですか、シノブさん?」


ナタリーも心配そうな顔で言い、カンナに至っては『わ、私がなにか!』とオドオドしていた。


それを見たあたしは笑ってしまった。


「2人もすまんすまん。大丈夫だ。ただ、頼んでた情報もそうだが、他の情報が思ってた以上の内容と情報量でな」


ナタリーとカンナは安堵し、ため息をついていた。


「話の途中ですまんな、続きを言ってくれ」


「大丈夫です。えーと、どこまで····そうそう、港から船は出ていますが、 オーシャナほど頻繁には出ていないので、直ぐに乗れるかどうかはわかりません」


「勇者召喚の目的はなんなんだ?」


「すみません。そこは箝口令が敷かれていて、わかりませんでした。ただ、予想なのですが聞きますか?」


「頼む」


「予想では、いくつかあります。まず1つ目、隣の大国ゼニス帝国との戦争の準備、2つ目、魔族への対抗手段もしくは両方ですね」


「今は魔族とはやりあってないって聞いたぞ?」


「私も聞いたことはないです。ですが、こことは場所が離れていますし、それこそ箝口令でこちらまで伝わっていない可能性がありますからね」


「わかった。思った以上の収穫だった」


ナタリーは『良かったです』と言い、入ってきた時は張り詰めた顔をしていたが、今は和らいだ顔している。


カンナも笑顔になり、出していた資料を片付けていた。


「今後『鬼姫』はどうするのですか?」


「ここでの情報集めも終わったしな。明日にでも東のダンジョンに行って、そのままヤマトを目指す」


「そうですか········シノブさん東ダンジョンに行く際、注意が1つあります」


「?」


「まず東ダンジョンですが、全50階層になります。10層までの魔物はこことそんなに変わりません。30層から罠が加わってきます。その罠の中に転移の罠がありますので気をつけてください」


「どうなるんだ?」


「内容は毎回ランダムです。シノブさん達にはそこまで脅威ではないと思いますが、魔物が密集している魔物部屋、自分達にはどうすることも出来ない階層への転移ですね。一番厄介なのは壁の中ってのもあるらしいです」


へ~、まぁ【万能探知】あっからどうとでもするさ。


「あ、こんな話もありますよ」


カンナが割り込んできた。


「どんなだ?」


「冒険者をしていた時の話で、こことは違うダンジョンの話なんですけど、転移の罠にかかって、全くダンジョンと関係ない場所に、飛ばされた人もいるみたいですよ。その人は行方不明から数ヵ月後に戻ってきたみたいです。なんでも、違う国に行ってたみたいです」


「わかった。参考にさせてもらうさ」


「では、明日も早いみたいですし、今日でお別れですね。『鬼姫』の皆さんには色々とありがとうございました。近くに来られる際は是非寄ってください。歓迎しますよ」


「ああ、そん時は頼むな。カンナもまたな!」


「はい!私も色々とありがとうございました」


カンナは最後に『アカツキちゃんもシズクちゃんもまたね』と2人をもふもふしていた。


そこへ便乗してナタリーも混ざっていた。


ギルドを後にしたあたし達は、宿に帰る途中にある露店の食べ物を片っ端から買いまくり、すべて【収納】へしまって明日以降の物資を確保した。


宿に戻ると、女将に明日出ることを伝えた。


女将は悲しそうな顔になり、アカツキとシズクの、もふ納めをさせてと言ってきたから、2人の許可をもらいさせてあげた。


夕食と風呂を済ませて、今日は早めに眠ることにした。


翌朝、女将と旦那と娘に見送られ、あたし達は東のダンジョンへ向かった。

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