第26話 まだ…はやかったようだ

ナガレSide


我は今、初めての感覚に悩んでいた。


我が主····シノブに、我が子であるシズクと共に命を助けられ、眷属となって恩を感じ、シノブの助けになりたいという思いで旅についてきた。


ギルドの帰りに邪な人間とのいざこざで、戦いにはならなかったが、シノブの強さの片鱗を見て、感情が高揚し畏怖した。


本来魔物は、強いものにひかれる習性があり、我もこの時、恩だけの想いだったが忠誠を尽くすと決意した。


だが今度は人型の時に着る服を買う時、シノブがなにやら人間と話していた。


内容はいまいちわからなかったが、シノブが我の名前を呼び『大事な奴なんだ!』と言ったときに、我の心の臓が激しく脈打ち、顔が熱くなっていくのがわかった。


その後の会話はほとんど頭に入ってこなかったが、宿に戻ることがわかり、返事をしたが『ああ』としか返せなかった。


その問いに対しシノブは、我のことを心配し、名前を呼び『どうした?』と聞いてきた。


心配してくれたことには勿論嬉しかったが、それ以上に名前を呼ばれるのが、堪らなく嬉しく感じてしまった。


その後宿に戻り、夕食ができるまでと我は部屋に残り、シノブはアカツキとシズクを連れて、この宿の女将に約束を果たしに行っている。


不意に『くぅ~』と腹がなり空腹なのを実感した。


「腹を満たせば、この感覚も治るかもしれんな」


そこへシノブの足音が聞こえてきた。


『ナガレー』


扉を開ける前に名を呼ばれ、また心の臓がはね、高揚してきた。


ガチャ


「飯できたってよ。食べようぜ」


「わ、わかった。先に行ってくれ、直ぐに行く。」


シノブは『おう』と笑い行ってしまった。


いったい何なんだ?この感覚は?


シノブが去った後、考えは纏まらなかったが多少落ち着き『とりあえず腹を満たそう』と向かうことにした。


街にきて食べた肉程ではなかったが、料理は旨かった。


部屋に戻り、夕食に満足した我は、さっきまで感じていた感覚が消えたことに気づいた。


やはり腹が減ってただけか。


「お!ナガレ、どうやら悩みは吹っ切れたみてぇだな。」


名前を呼ばれても先程の高揚感はこなかった。


「どうやら、腹が減ってただけのようだ」


シノブは『そうか』と笑っていた。


眠くなり寝ようとしたら、突然シノブが叫んできた。


「なぜ!?裸になるんだ!?」


眠るときは、元の姿に戻りたかったため、服が破れると思いその事を話すとシノブは納得してくれたようだ。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


忍Side


あたしはアカツキとシズクを連れて宿の風呂に浸かっていた。


寝ようとしていたナガレも誘ったのだが断られたので【洗浄】をかけてきた。


ここの風呂は宿の名前通りに、従魔も一緒に入れる素晴らしい場所だった。


勿論小さい従魔限定だった。


他にも従魔を連れた客が数名いて話は盛り上がった。


内容は勿論、うちの子自慢から始まり、出会い方、もふもふ具合などだ。


その後、互いの従魔を洗い合い、一緒にダンジョンに潜ってみないかと誘われたが、仲間のランク上げに集中したいと断りお開きとなった。


部屋に戻ってみると、ベッドよりも大きいナガレは器用に丸くなりながらベッドで眠っていた。


その隣に眠ってしまったシズクを寝かせた。


ナガレとシズクを一撫でずつしてから、アカツキと一緒にもう一つのベッドに入り寝ることにした。


次の日、目覚めると先にナガレが起きていて、間に合わせで買った服を着ていた。


間に合わせで買ったとは思えないほど、似合っていたので感想を聞いてみた。


「おはようナガレ、服の着心地はどうだ?」


「まぁいい、慣れだろうが少し窮屈だがな、しっぽも問題ない」


問題無さそうだな。


「アカとシズもおはよう」


「くぅ~ん」


「キャンキャン」


特攻服に着替え、みんなで食堂に行き、朝食を済ませて宿を出ようとしたら、女将が話しかけてきた。


「今日はどうするんだい?」


「ナガレのランク上げをしてぇから武器屋に行ってからギルドで良さそうな依頼を探すつもりだ」


「ならちょっと遠いけど北地区のギルドまで行って学園敷地内のダンジョンの依頼を探すといいよ」


東地区にはないのかと聞いてみると


「有るかもしれないけど、確実ではないね、直接行った方が沢山あると思うよ」


女将にお礼を言って宿を後にした。


歩きながら地図を出し場所を確認してから南地区にある鍛冶屋を目指し、ナガレにどんな武器を買うか聞いてみた。


「ナガレはどんな武器を使うか決めたか?元の姿だと爪か牙だろ?」


「そうだ。スターダストウルフになったことで影魔法もだ。この姿だとどうだかな?実際に見てみんとなんとも言えん」


目的地に着いてみると武器屋だらけで何処に入ればいいかわからなかった。


とりあえず1軒ずつ見て武器の種類は短剣に決まったが、いい武器にはありつけなかった。


残り数ヶ所となったときにドワーフがやっている武器屋にたどり着いた。


「ほう?珍しいな女の客とは、用件はなんだ?」


「彼女に合う短剣を探してんだ」


「ならそっちの棚だ、自由に見てってくれ」


教えてもらった棚には他の店とは違い、色々な種類があった。


「振っていいか?」


「かまわん」


ナガレは順番に振り始めた。


ナガレは2つの武器、ククリナイフとナックルダガーで悩んでいるようだったので提案してみた。


「ナガレ、二刀流でやってみたらどうだ?」


「二刀流?」


試した結果、ナックルダガーは微妙らしく、ククリナイフを二刀流で使うことにしたようだ。


「おっちゃん、これ2本とこれ1本買うよ」


ドワーフは『大銀貨3枚だ』と言ってきたので大銀貨3枚を渡し武器屋を後にした。


武器を買うの初めてだからな、高いのか安いのかわからんな。


鑑定しても値段はでねぇもんな。


「シノブ、なぜナックルダガーを買ったんだ?」


「ナガレが欲しそうにしてたからな」


「·····ありがとう」


ナガレの武器は普段はククリナイフで予備でナックルダガーを使うことになった。


ナガレの嬉しそうな顔を見てあたしも満足し、そのまま冒険者ギルドに向かった。

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