第20話 忍の7日間

初めて自分の金で買い物をした日から七日が経った。


あたしは七日間のことを思い出してみた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


あの後、シルから金の価値と、この世界のことを聞いた。


まずこの世界の通貨を日本円に当てはめると、だいたいこんな感じだ。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


銅貨1枚=100円


大銅貨1枚=500円


小銀貨1枚=5000円


銀貨1枚=1万円


大銀貨1枚=10万


金貨1枚=100万円


白金貨1枚=10億円


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


この話を聞いた時、


「一日で億万長者かよ!」と叫んでしまい、シルに『億万長者?とは』と不思議がられた。


次にこの大陸についてだ。


聞いた話を簡単にまとめると


あたしがいるこの国ドラン王国


大陸の南西にあって、比較的平和で冒険者が活動しやすい国、南東にある貿易連邦 オーシャナとの交易が盛んらしい。


南東にある貿易連邦 オーシャナ


商業と海運の国でドラン王国の友好国家でもあり、東の大陸とも交易がある。


海鮮丼あっかな。


ドラン王国とオーシャナの間にある国


鍛治の国 ヴォルカン


険しい山脈に作られた、トンネルと地下都市の国であり温泉もある。


温泉か、いつかは行きてぇな。


西にあるビースティア公国


獣人たちが暮らす自然豊かな国でまさに、モフモフパラダイスの国だ!


ぜってぇ行きてぇが今は日本に帰るための情報収集が先だ。


北にあるゼニス帝国


人族至上主義の国で軍事大国だ。


めんどくせぇ感じの国だな。


あとゼニス帝国とビースティア公国の間の森、通称【迷いの森】そのどこかにエルフの隠れ里があるという噂らしい。


名前の通り森に入ってしばらく歩いていると、気づいたら森の入り口に戻っているみたいだ。


東にある聖ルミナス教国


宗教国家で帝国とは敵国


行かねぇ方がいいと思うが情報収集でいつかは行かねぇとな。


最後に中央、中立の学園都市アトラス


世界中の知識や技術が集まる場所で、各国の貴族の子息が通う学園や誰でも入れる学園などがあり、数ヶ所ダンジョンがあるみたいだ。


そういえば日本にいた頃、零に見せてもらった漫画にあったな、異世界学園もの。


情報は集まりそうだがそれだけだな。


他にも大陸は二つあるみたいだ。


北にある大陸に魔族が支配する国があるらしい。


今は魔族との戦争は聞かないみたいだ。


東の大陸には、あたしの名前みたいな発音が主流らしく、話を聞く限り、江戸時代頃の日本みたいな場所らしい。


米!だが当分は無理そうだな。


二日目と三日目


シビルに旅の練習がてら二日間、外で野宿することを伝え、金を払うから一セット揃えるように頼んだ。


『お金はいいです』『助けてもらったお礼です』と断られた。


一セットを【収納】にしまい、練習ついでに何か依頼を受けるために、冒険者ギルドへ向かった。


あたしはまだEランクだから丁度いい薬草摘みを見つけ、カウンターに向かったが断られた。


なんと、いつの間にかBランクになっていた。


どうやらオーク討伐の実績でなっていたらしい。


Bランクには近場の仕事がなく、諦めてそのまま行こうとしたら、『クローバー』のミラとカリンにあった。


ミラが『何してるの?』と聞いてきたから、あと少しで旅に出るから、その前の練習をすると答えた。


なぜか二人も参加することになり、一緒に行くことにした。


アカツキを紹介するところから始まり、テントの張りかたや、どの木の枝を集めればいいかを習った。


日が沈み、アカツキに獲物を取ってくるように、頼んだ。


二人は心配していたが、アカツキが元の大きさになり、驚いていたがそこに恐怖はなく、その神々しさに見とれ畏怖していた。


アカツキが取ってきたイノシシをミラが捌いてくれて、やり方を習った。


食べ終わったあと、カリンに簡単な生活魔法【ウォーター】と【ホール】を見せてもらい【完璧投影】で取得し、次に魔法の【ファイアボール】を見せてもらい、こちらも使えるようになった。


この時カリンは『あり得ない』『なんで無詠唱』など自信喪失していた。


説明ができず謝り、【ホール】で余裕で人が入れる穴を掘り、【ウォーター】で溜めてから【ファイアボール】で温め即席の風呂を作って二人に入ってもらった。


二人は諦めたのか、なにも言わずに入り、あたしも入ってから寝ることにした。


次の日二人は街に戻り、あたしはアカツキと一緒に野宿して終わり、次の日の朝には街に戻った。


四日目、五日目


街の探索と旅の準備で終わった。


ただこの二日間は、やたらと観察されてる視線を感じていた。


【万能探知】と【鑑定】でどこの誰なのかは分かっていたから、あえて無視をしてた。


まぁ後でぶっ飛ばすがな。


六日目


とうとう、頼んでおいた念願の特攻服が届いた。


あたしは早速、ナベシャツとワイドレッグパンツに似せて作ってもらった物を着て、最後に背中に金色で『鬼姫』の文字を刺繍された、漆黒の色に染めたロングコートを羽織った。


感極まったあたしは我慢できずに、涙を流し、今ここで背中の『鬼姫』に誓った。


『鬼姫』のみんな、あやめ待っていてくれ!必ずどんなことをしても、日本に帰る!!


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


この七日間を、振り返ってみれば充実していたと思う。


あたしはランドー商会の前でシビル、シル、そこまで関わってもいなかったが店員の人達と別れの挨拶をしていた。


「シノブさんお気をつけて下さい。私はまだ貴女に恩を返せたとは思っていません。また何かありましたらいつでもお越しください」


「シビルさんも次の行商は気をつけろよ」


「シノブ様が無事に故郷へ帰れるのを心よりお祈りしています」


「あぁ、ありがとな。じゃ······」


『シノブ』


さよならと言いかけたときに、知ってる奴の声が被さり、声の方へ顔を向けた。


そこには三日前からあたしをストーキングしていた男、冒険者ギルドのギルドマスターが強張った顔をして立っていた。

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