第18話 勝手に深まる魔族疑惑

ギルドマスターside


とうとう、シノブは門が閉まる時間になっても、帰って来ることはなかった。


これ以上、領主様を待たせるわけにはいかず、1人で行くことにした。


前回と同じ部屋に通され、領主様に今回の顛末について報告をした。


「貴様の報告で件の冒険者はスパイではないのは、いうまでもないな」


「私も同じ考えです。スパイだとしたら、目立ちすぎです」


「わざと、目立っている可能性もあるが、今回はそれはないだろ」


領主様は目をとじ、アゴに手を当て考え始めた。


「領主様?」


「シモンよ、その冒険者は真に人族か?『魔族』ではないのか?」


領主様は、今1番聞かれたくないことを指摘してきた。


「人族の·····はずです」


「その反応、貴様心当たりがあるな?全て話せ!」


言葉の過ちと、感情を抑えられず表に出してしまったことを後悔し、領主様にまだ言っていない、オークの血がなかったこと、集落のあり得ない惨状を全て話してしまった。


「貴様、その冒険者を庇うつもりか?」


「いっいえ!確証が持てなかったのです。曖昧なことを領主様に話すわけにもいかず、もう少し調査をしてから、お伝えしようと思っておりました」


領主様はため息をつき『今回は不問とする』と許してくれた。


「シモン、私は貴様の話を聞いて、ある出来事を思い出したぞ」


「そっ······それは数十年前の帝国での話でしょうか?」


この話が出てしまったことで、もうどうしようもないと思ってしまった。


数10年前、隣国のゼニス帝国で起きた、一夜にして街の1つが滅んだ事件、その際、血痕がなく、街の規模に対して死体の数が合わないうえ、全ての死体から血がなくなっていた。


様々な調査でわかった事実は、1体の魔族、爵位を持つ吸血鬼が起こした災害だったのだ。


「やはり、知っていたか」


「当時の私は冒険者をやめ、帝国に近い地域で副ギルドマスターをしていました。その時にギルドマスターの指示で斥候を放ち顛末を知りました」


俺は解体場でオークの話を聞いたときにこの事を思い出していた。


「この帝国の事件と今回のオークの集落、死体から消えていた血、多少違いはあるやもしれんが、似ているとは思わんか?」


頷くことしかできなかった。


「なら、やることは決まったな、私は明日にでも、貴様から預かった武器と件の冒険者を陛下に伝えるために王都へ向かう、貴様は私が戻るまでに、その冒険者を見張っておけ。その間、貴様はなるべく、その者と接触を控えよ」


承諾をして今回の話は終わった。


領主様の館を後にした俺はシノブに対しての罪悪感でいっぱいになっていた。


シノブ、すまない。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


忍side


街に入れなかったあたしは、アカツキと出会った森に戻ってきた。


元々、アカツキの縄張りだったらしく、魔物も殆ど居なくて、ゆっくり休むには丁度よかった。


抱えていたアカツキを地面に下ろして、自分の食べる分を取ってくるように指示を出した。


あたしは、火を起こす道具や魔法的な火が使えないため【万能探知】と【鑑定】を使い、半径100メートル範囲で木の実を探すことにした。


「それにしても、吸血姫はホントに便利だなぁ。夜だってのに朝と同じくれぇに周りが見えてっから探すのが楽でいい」


暫く歩いていると、探知範囲の端に木の実を探知し向かうことにした。


「お!リンゴみてぇなの見っけたぞ」


【鑑定】の結果、案の定リンゴだった。


跳び上がって、1つ捥いで味見してみた。


日本で食べていた物より、味は落ちるが旨かったのは間違いなく、持って行くことにした。


幸いここは群生地らしくアカツキの分と合わせて10個ほど【収納】にしまい、アカツキと別れたところに戻った。


アカツキはすでに戻ってきており、もとの大きさで獲物を食べている最中だった。


おう······流石に生で食べてるシーンはクルもんがあんな。


アカツキも気づいたようでこちらを振り向いた。


「アカもリンゴ食べるだろ」


「くぅ~ん」


うーーん······折角カワイイ顔と声で返事してくれるのに、鼻から下が血でベッチョリなせいで、若干台無しだった。


顔に【洗浄】掛けて綺麗になったところでリンゴを口元へ持っていった。


腕ごと咥えられた時は一瞬焦ったが、すぐに甘噛みと気付き逆にホッコリしてしまった。


食べ終わり、徐にアカツキが立ち上がり、『ついてきて』と伝えてきた。


暫くついて行くと、洞穴があった。


どうやら此処はアカツキの住みかだったようだ。


アカツキはそのまま寝そべり、その周りを念のため【洗浄】を掛けた。


「おやすみ、アカ」


「くぅ~ん」


あたしはアカツキの、もふもふお腹を枕にして、眠ることにした。


次の日


あたしは、今までにない快適な朝を迎えた。


アカツキの、もふもふが想像以上に、快適すぎたみたいだ。


洞穴の中で時計もないから、時間帯がわからないが、洞穴から見える外は明るいので丁度いい時間だと察した。


あたしが起きたことで、アカツキも起き出し互いに挨拶をして昨日のリンゴを分けあい、アカツキに小さくなってもらい、抱えて街を目指した。


門にはすでに、人が列をなし並んでおり、そこへ加わった。


あたしの番になり、身分を証明するものを出すように言われた。


「おや?あんたは昨日の?」


「よう。オッサン伝言は伝えたか?」


「あぁ、問題ない、すごく心配していたぞ。早く顔を見せに行ってやれ」


「そうするよ。じゃ~な」


行こうとしたら呼び止められた。


「嬢ちゃんにとってはテイムじゃないかもしれんが、ちゃんと冒険者ギルドで従魔登録しとけよ。じゃないとその子、討伐対象になっちまうぞ」


まぁ、返り討ちにすればいい話だがやっとくか。


「わかった。あんがとよ」


言われた通り登録をするために、冒険者ギルドへ向かった。


途中、時間を確かめたら10時を回っており、丁度いいと思ってたら、結構寝ていたようだ。


まぁ何だかんだで昨日、濃い1日だったし疲れてたんだな。


まだこの世界に来て3日目だ、慣れてねぇんだな。


ギルドに着いたあたしは、アンリさんを探したが見つからず、空いているカウンターへ向かった。


その間、昨日の行いが広まっているのか、あたしに対しての鬱陶しい視線は無くなっていた。


「おはようございます。ご用件をお伺いします」


受付嬢の子がまぶしい笑顔で応対してくれた。


「この子の登録を頼む」


アカツキを受付嬢に見せた。


「くぅ~ん」


アカツキは狙ってやったのか、追撃と言わんばかりに鳴いてみせた。


「はうっ」


案の定、受付嬢にも効果は抜群のようだ。


あたり前だ、うちのアカツキの可愛さに勝てるヤツなどいるはずがない。


あたしが笑っていると、受付嬢は正気に戻り『コホン』と咳払いをして姿勢を正した。


「失礼しました。従魔登録ですね。こちらにその子の名前と種族名、貴女の冒険者カードの提出をお願いします」


カードを出し書類にアカツキの情報を書き提出した。


「登録完了です。ではカードと、これがアカツキちゃんの従魔証明になりますので、無くさないように気を付けてくださいね」


登録を終え行こうとしたら、まだ何かあったのか、呼び止められた。


「シノブさん、昨日の解体が終わったようなので、素材の代金と任務の報酬を渡しちゃいますね」


「わかった」


もう終わったのか、夕方って言ってたが、親方には感謝だな。


いよいよ旅の準備ができるな!

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