第6話 初依頼要請

あたしは今、ドラン王国ワーグマ領ルカールの冒険者ギルトで、冒険者登録をするために来ていた。


登録も終わり、同行者のランドー商会代表のシビル・ランドローの用事が終わるのを待つだけだと思ったら、ギルドマスターに『会いたい』と呼ばれ受付嬢の案内で会議室に向かっていた。


入れ違いに『クローバー』の面々とすれ違い、ミラとカリンは小さく手を振ってきて、あたしは頷きで返し、それに対しマイクは睨んできたけど、軽めの【威圧】をしたら青ざめて逃げていき、二人は首をかしげてから後を追って行った。


『クローバー』の面々の後にシビルが歩いてきた。


「よう、シビルさん話し終わったのか?次は、あたしが呼ばれたんだが、何か心当たりあるか?」


「はい、今回『クローバー』の皆さんは運がなかったということで話は終わりました。シノブさんの話は私達を助けてくれたお礼と、シノブさんが倒したオークについての話だと思います。」


「そっか、長くなりそうだな。シビルさんを待たせるわけにはいかねぇしな?」


「その事ですが、私は先にお店に戻っていますのでシノブさんのことは、ギルドマスターに頼んでおきましたよ。用事が終わり次第、受付嬢の何方かに送らせるそうです。」


「あいよ。そんじゃまた。」


あたし達はそこで一旦別れた。


会議室に到着し受付嬢が、ノックをして『シノブさんをお連れしました』と声をかければ『入れ』と男性の声が返ってきた。


あたしは部屋に通され、ギルドマスターの反対側に座った。


このオッサンがギルドマスターって奴か。


案内してくれた受付嬢は新たにギルドマスターとあたしに、飲み物を淹れてから部屋を出ていった。


「自己紹介をしようか、俺は此処、ルカール冒険者ギルドのギルドマスターをしているシモンだ。よろしくな。」


「おう、あたしは忍だ。」


「それだけか······まぁいい今回うちの冒険者と依頼人を助けてくれたそうだな、感謝する。それと、魔物を一撃で倒したってのは、本当か?」


「まぁな、まさかあんなにモロイとは思わねぇよ。」


ギルドマスターは苦笑いし、あたしは爆笑していた。


「脆いってお前なぁ、今回の魔物、オークには違いないが、さっき、討伐の証の魔石を見させてもらったが、オークはオークでも上位種のハイオークだったぞ。」


ハイオーク?上位種?つまりあたしがブッ殺したのは、普通の奴じゃねぇってことか?


あたしが首を傾げているとギルドマスターが、゛ヤレヤレ〝と首を振った後に真面目な顔をして、今回の説明と推察を話し始めた。


「大体の事情は、ランドー商会の代表に聞いている。虫に食われたみたいに、記憶が無くなってるってな。今から魔物に関して軽く説明するぞ。」


纏めると、魔物は条件を満たすと進化するらしい、あたしが倒した奴は一つ上の奴だったってわけか。


「でだ、ハイオークがいるってことは、森の中にソイツらを纏める、さらに上の上位種がいる可能性がでてきたわけだな。今回、街道に現れたソイツは群れからはぐれたか、斥候の可能性がある。報告と同時にこちらから斥候を出した、それ次第では、明日にでも討伐隊を組もうと思ってるんだが。」


ギルドマスターは飲み物を飲み一息入れた。


「シノブはハイオークを一撃で倒した、それを見込んで明日、討伐隊に加えようと思うんだがどうだ?報酬は弾むぞ。承けてくれるなら、この後、実力を見せて貰おうとは思う。配置を決めないといかんからな。」


魔物とガチの殺し合いか、この世界にきて一匹は倒したが、一撃で終わったし、今後もやり合うからな。経験を積まなきゃいけねぇし、ちょうどいい参加してみっか。


「その話のった、但し条件がある、あたしの実力を見た後でいいから条件を聞いてくれ。」


ギルドマスターは頷き二人は部屋を出て、忍は受付嬢の案内で訓練場に向かい、ギルドマスターは模擬戦相手を探しにホールに向かった。


訓練場で待っていると、模擬戦相手とそのパーティーメンバーらしき人達を連れてきたギルドマスターが入ってきて、冒険者の紹介をし始めた。


「こいつは、Bランク冒険者のカイルだ、明日の討伐隊のリーダーを任せてある。向こうにいるのがパーティーメンバーだ。」


「初めましてだな、冒険者パーティー『鷹の爪』のリーダーをしているカイルだ。ギルマスから聞いたよ、俺も君の実力に興味があるから、模擬戦よろしくな。」


「おう」


互いに握手をして中央に向かい、ある程度距離を取り向かい合い、ギルドマスターは見計らってルールの説明をし始めた。


「ルールの説明する、明日に響かないように、怪我だけはするなよ。攻撃は寸止めもしくは武器を手放した方が負けだ。武器は木製を使って貰う。······シノブは武器はどうした?まさか素手でやるつもりか?」


「あぁ、基本あたしは素手だな。一応、武器も使えるが素手ほどじゃない、それに此処にはその模倣武器がねぇみたいだ。」


ちっせぇ時からテコンドーやってたしな、まぁ······なるようになんだろ。


ギルドマスターは驚いていたが、カイルはキレかけていた。


「ふざけているわけではないみたいだが、ちょっと俺を侮りすぎてないか!?」


「あぁ、別にそんなこと思ってすらいねぇよ、こっちはマジでやる気でいるからよ、逆に聞くけどよ、その言い方はあたしを格下と思ってるってことだよな?見た目で判断しねぇ方がいいぞ!」


『鷹の爪』の面々は怒り心頭として、ギルドマスターはヤレヤレと肩を落としていた。


「始めるぞ!もう一度言う。怪我だけはするなよ。」


ギルドマスターが手を上げ『始めっ!』と号令をだした。


カイルは速攻で決めるために号令と同時に駆け出した。


それに対し忍は棒立ちだった。


それを見ていた『鷹の爪』の面々は『終わったな』と嘲笑し、ギルドマスターは『まぁこんなもんかと』案の定とした顔をしていた。


誰もがもう終わりと気を緩めていたときに、『バキィィィン』っと音がし、カイルの背中に手を添えている忍が立っていた。


誰もが何が起こったのかわからず『はぁ?』と揃えていた。


静寂に包まれた空間で忍がギルドマスターに向けて声をあげた。


「オッサン!勝ちでいいよな!」


その声でいち早くギルドマスターが正気に戻り、あたしに向かって駆け出した。


「今、何をしたんだ!?」


「? おいおい、ちゃんと見てろよ!武器を破壊して後ろに回り込んで背中をタッチしただけだろ。」


ギルドマスターは顔を青ざめ驚愕し、カイルは地面に膝をつき『あり得ない』と呟き『鷹の爪』の面々は今だに口を開けたまま固まっていた。


ギルドマスターは気を取り直して、『鷹の爪』のメンバーに解散を告げ、あたしをつれてギルド長室に向かった。

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