7


「……お姉ちゃん。あの日のケンカのこと、ごめんね」


彼女は声をかき消すように叫ぶ。


「やめて!!」


その手には、血がにじむほどに強く握りしめられた“ひまわりのバレッタ”。


世界の崩壊は加速していく。

色は消え、街全体が白黒のセピアに塗りつぶされる。

足元のアスファルトに亀裂が走り、光の粒となって空へ舞い上がる。


弟の姿も薄れていく……。何かを伝えようとしても、もう言葉が出ない。



しかしその瞬間。


僕の身体が、まるで画面のノイズが走るように揺らぎ始めた。

輪郭が一瞬、白い光のフレームに切り替わり──周囲のすべてがスローモーションになる。


崩壊しかけていた街も。

ひび割れた空も。


──周囲の人々が停止する中、弟だけが輪郭を取り戻し、色づいていく。


そして、世界は止まる。


弟に最後の一言を言わせたいと願った瞬間、僕は“世界を止めた”。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る