第7話美術館
唯杏くんと会うまでの一週間はとにかく平凡な日々を過ごした。
唯杏くんに出会う前の時のようだった。
それと同時に、私の人生が彼中心になっていたことに気がついた。
金曜日。
「彩奈ー!朝だよー!いつまで寝てるの!」
体が言うことを聞かない朝だった。だらだらと布団から抜け出し、半分寝た顔のまま、遅い手つきで準備を進めた。
''明日で最後なんだな''と思いながら
いつもどうり学校に向かった。
教室に向かうと沙耶がいて声をかけてきた。
「彩奈おはよー!進路決まった?!決まってない?!」
変わらず行き良いよく話しかけてきた。
いつもなら''明るい子だな''とほっこりするが、
何故かいらいらしてしまい
「決まってないよ。ていうかズカズカ聞いてこない方がいいよ。前から思ってたけどうるさいよ。しつこい。」
あれ、なんで言っちゃったんだろう。
言ってから後悔し、沙耶の悲しそうな顔を見て申し訳なくなって黙って席に座った。
その後の休み時間も放課後も沙耶と喋ることはなかった。
自分が酷いことを言ってしまった以上、自分から話しかけることは出来なかった。
一人で沢山悩みながら家に帰った。
いつも帰ってる道がすごく長く感じた。
家に帰ってベットに飛び込んでそのまま寝てしまった。
土曜日。唯杏くんと会う日。
「寝不足って言えば誤魔化せるかな」と思いながら、準備をしていつもより濃いメイクをした。
唯杏くんとは美術館に行く予定だった。
十分早めに着いてスマホのカメラを開いてメイクがおかしくないかのチェックをして待っていた。
トントンと優しく肩が叩かれた。
「彩奈ちゃんごめんね待った?」
と言われ、しばらくじーっと見られた。
「待ってないよ。なんでそんなに見てるの笑」
目が腫れてるのがバレたのかと思い少し恥ずかしく、髪の毛で顔を隠した。
「ううん。いつも通り可愛い彩奈ちゃんだ。」
ほっとして美術館へ向かった。
美術館は彼がおすすめしてくれたところで、最後のところくらい彼の好きなところに行きたかった。
美術館につくと、色々な作品をゆっくり見て回った。
正直私には初めて来たのもあって何がいいのか分からなかったが、周りの行動に合わせてわかってるような雰囲気を出していた。
そんなことをしていると唯杏くんが笑いながら
「彩奈ちゃん全然わかってないでしょ笑
子供だな〜」
頭をポンポンと軽く叩くと目の前の作品をまっ
すぐ見て
「俺ね美術館の、誰のものでもない美しさがそのまま置いてある感じ。あれが好きなんだよね。」
そう言うと私は
首を傾げた。
美術館を出るとあっという間に暗くなっていた。
最後は今までいた居酒屋に行こうという話になり、一緒に居酒屋に行った。
いつものようにだし巻きたまごと、
私はレモンサワー、唯杏くんはビールを頼んだ。
ふたりでテレビを見ていると、いつもの綺麗なお姉さんがニコニコしながらこっちに来て、
「久しぶりですね!お待たせしました!だし巻きたまごと、ビールとレモンサワーですねー!」
と渡してくれた。ふたりで礼をして頼んだお酒を持って乾杯した。
「ほんとにあの人綺麗だよね。」
思わずつぶやくと
「うん。綺麗。俺色気ある人好きなんだよね。
タバコ吸う人とか色気あって見ちゃう。」
私は今まで楽しかったのに急に自分が口に出してしまったことに後悔した。
私はタバコなんて吸ってないし色気なんて全然ない。
しんみり感じながらお酒を口に運んだ。
だし巻きたまごをお互い1口食べると、唯杏くんが口を開いた
「そういえば進路の時期だよね。決めたの?」
「私、、、唯杏くんと一緒にいたい。
私も一緒に大阪に行きたい。」
お酒の勢いと共に口に出した。
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