第22話 サイタマネイティブとサイタマトライ

いつものように17時となり、タイゾーは表に出て店の暖簾のれんをかけた。


 

 その時、今まで聞いたこともないような低い爆発音がいきなり響いたので、タイゾーは思わず地面に伏せた。


 ドゥオッッッカアーーーーン!!!!


 あきらかに爆弾だ。


 鉄の破片が飛び散り、3軒先の老舗マチ中華の店が跡形もなく吹っ飛んだ。


 アーミー服を着たヒト達が小銃を片手に行き交う。

 なにやら大きな声で、ヒト達が言い合いをするのが聞こえる。


 「タイゾーさん、戻って!」カズトの大声がどこからともなくヒビキ、タイゾーは我に返った。

 

 慌てて地面に手を着き、力まかせに起き上がった。全身に力がみなぎる。ヒザが少し痛いがとくにケガはしていなさそうだ。


 暖簾を再び手に取り、店内に戻った。


 一番近くにいた悠斗が駆け寄ってきた。


 「タイゾー大丈夫か?ケガはないか?」


 「大丈夫だ。それよりいまのは何だ。」タイゾーは暖簾を杖のように立てて唸った。


 4輪がフルスロットルになり、カズトがタイゾーのもとに近寄ってきた。


 「最新の情報をキャッチしました!どうやら、サイタマトライビトの一部が暴徒化し爆弾を投下したようです。」


 「爆弾を投下?この現代のニホンでそんな内乱みたいなことが起きるの?」あおいも近くに来て心配そうにタイゾーのホコリで汚れた衣服を見ている。

 

 「信じられませんがどうやら現実のようです。テレビを投影します。」

 

 そういうとカズトの目と目の間のやや上の額のあたりからカメラのレンズがニョキィとせり出し光が投影され、客席奥の白壁のポスターなどが何もない部分を狙ってテレビ画像を投影させた。


 信じられないくらいご近所の映像がテレビ画面に映っている。

 そして、ガレキのように崩れた建物と、立ち昇るケムリと、血を流し引きずられながら行き交うヒトビトが映る。


 「……」


 みなコトバを失った。これはいつも見ている、すぐ目の前の道の光景だ。


 「この店に居て大丈夫なの?」あおいが顔を蒼白にしてコトバを発した。


 「この店は2年前の改装で堅牢に作り変えられているので大丈夫です。外に出るよりこの中にいた方がよっぽど安全です。」カズトが答えた。


 「何でこんなことが……。」


 みなが沈黙していると、テレビ画面から緊急速報の警告音が鳴った。


 「ただいま、サイタマ県知事が自衛隊に出動を要請したとの速報が入りました。」


 ブルブルブルブルブルブルブル……


 言う間もなく、近くにヘリコプターが旋回する音が響く。

 

 テレビに自衛隊のヘリが着陸した映像が写しだされた。


 「どうやら自衛隊がサイタマに投入された模様です。」


 定点カメラから映し出される映像を見てキャスターが叫んだ。


 するとキャスターの目に動揺が走った。ディレクターが白画用紙で何か指示を出しているようだ。


 「失礼しました。自衛隊が投入されたかもしれないという発言は、映像を見たわたしの主観でした。裏取りをした情報ではないので一度訂正させていただきます。」


 キャスターでさえ焦っているようだ。


 現代のニホンで内乱のような戦争行為が起こるなんて。誰もが信じられなかった。


 するとキャスターの目にまたしても動揺が走った。

 緊迫した生放送で、さすがのベテランキャスターも感情の起伏が全国にダダ漏れしてしまっているのを隠すことすらできない。


 「ま、また、臨時速報です。首相官邸から山室さんお願いします。」

 「はい、山室です。首相は声明を発表しました。サイタマ県知事がこのたび、首相の許可を得ず自衛隊を発動だ出たことに対して抗議声明を発表したということです。また、自衛隊トップの統合幕僚長にも同じく抗議したということです。」


 行政が混乱している。自分たちのごく近所から、ニホンを揺るがす重大事件が起こっている。

 

 「今日はみなさん、店舗に泊っても大丈夫です。安全が確認できるまでここにいて下さい。」ヒト型AIロボット店長カズトから従業員に気づかいのメッセージを発した。


 本日は営業できない。


 お客様のいない店舗で、従業員はみな思い思いに時間を過ごした。

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