第3章 元店長佐山の反撃
第9話 佐山の陽動作戦
佐山は翌日のシゴト帰りに、あおいとラフマンとアディーを飲みに誘った。
あおいたちは佐山に強引に誘われた。あまりもう店長でもない佐山と飲みに行きたくはなかったが、ゴールデンウイーク中の営業で疲れているので、ただ酒でストレス解消できるならそれでよかった。
佐山はかなりしつこくタイゾーを誘ったんだが断られた。あいつこのシゴト辞めるのかな?辞めたいと顔に書いてある。以前はガマンしていたのかな。オレが実質の店長でなくなったからなのか、露骨に言うことを聞かなくなってきた。
「全額おごるぜ。男の2次会もあるかもよ。」
甘い文句にも無反応だった。もともと若いのに陰気な野郎だと思ってはいたが。
タイゾーもここ何日かのことは自分の中でも整理が付かなかった。ただ言えることは、もう実質の店長ではない佐山の言うことを聞く必要はない。
これは素晴らしいことだ。佐山にはいいように小僧のごとく使われていたから。
佐山の誘いを二つ返事で断れた。
奴隷解放宣言だ。
佐山は新世紀サイタマ新都心オオミヤ店からできるだけ近い深夜営業の居酒屋にあおいとラフマンとアディーを連れて行った。深夜2時の店内はさすがに佐山達以外に2組いるだけ。キャバ嬢風なのか、ただ派手目なだけなのか女性二人組と、おじさんと若い女性の出会い系カップルとおぼしき客のみだ。
佐山は今日も、AIロボット店長のカズトに言われるままバッシングや洗い物に明け暮れた。ゴールデンウイーク中なので赤くない日でもそれなりに来客は多く忙しかった。
佐山はこんなつまらない日々を続けるわけにはいかないと思っている。
「あおい、おかしいと思わないか?なんでロボットに店長できるのか?なんでロボットの言うことを聞かないといけないのか?」
「でもカズトの言うことケッコウ的を得てるじゃん。正直佐山さんの指示より的確だし。」
「なに、お前酔ってるだろう。失礼だろう。」
「カズトさんはやさしいです。」ラフマンも続けた。
「僕たちに目を向けてシゴトを教えてくれるんです。昨日もてんぷらのコツを教えてくれた。あんな忙しい中で。」
「なにー。オレだってビールの注ぎ方教えてやったろう。」
「そのあと、捨てたら罰が当たるとか、オレは店長だからとか言いながらそのビール飲んでたけどね。」あおいがちゃちゃを入れた。
「オレはおまえらにメシおごったり、飲みつれてったりしてるんだぞ。感謝しろ。」
「たいがい大目に払うだけの割り勘だったじゃないですか。今日はホントに全部おごられますよ。」
またあおいに突っ込まれた。
佐山はあらたまって言う。
「今日は全額おごりなんだから、君たちはオレがまた店長に戻れるように、庭山さんとかが来た時にだなー。」
「やっぱりロボットじゃダメだとか、佐山さんの時はもっと店が明るくて活気があったとか伝えてくれるかな。」
いや今の方が、活気があり秩序もあり、店としてのテイをなしてますよとアディーは思っていたが言わなかった。
おごってもらうんだからしゃべらせてあげればいいや。こんなことじゃ、誰もあなたになびかないと思いますけどね。
「みんなで一斉に朝礼をボイコットするとかどうだ?あいつ慌てるかな?ロボットのクセに。」
「オレ達もロボットが店長やっているという前代未聞の事態に対応できるように、いろいろとリスクマネジメントをしておかなくてはならないんじゃないかな。」
佐山は何か知った言葉を並べて、真顔でみんなに同意を求めた。
「みんな協力してくれるよな。」
「これはカイシャをよくするためだ。」
「じゃ、わたしはパリパリピーマンつくねと生中をお替りで。」ラフマンはタブレットに注文を打ち込んだ。
佐山のゴタクはハイハイ言って適当に聞いてればいいや。アホらしい。
せっかくおごりで日本の美味しいものが食べられるのだからこんな機会を逃す手はないとラフマンはひたすらタブレット上のメニューを見て次の注文を探し続けた。
佐山さんは人懐っこくて悪い人ではないんだけどな。シゴトがいい加減すぎるんだよな。
「わたしはこのザクザクレモンのハイボール飲んでみたい。それから、無限リーフサラダも。」あおいも佐山のゴタクはうんうん聞いてるフリだけしておいて、飲み食いに夢中だ。
そりゃわたしも、佐山さんと長年やってきて嫌いじゃないけどね。シゴトがいい加減すぎて。バイトリーダーのわたしからしても、店長としてやるべきことやってくれずに自分の指示ばっかり出すから、あきれてはいたよね。
佐山さんはお調子が良いだけで、店長としては割り切っていた感じ。
バイトの身としては楽でいいけど。お店のこと考えたら違うヒトが店長の方がいいのは確かよね。
庭山統括スーパーバイザーはどう思っているのかな?あのヒトちょっと陰気でわたしは苦手だけど。
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