呪いは偶然か必然か
「一体何だったのかしら?」
聖女の魔力で霧散したってことは呪いかアンデットの類の可能性が高いと思うけれど。
いや、聖女関係なく魔力を受けたことで形を保てなくなった可能性も否定はできない。
「特殊な呪い……とか?」
「まあ、知らない呪いがあってもおかしくはないけれど。あきらかに自分から動いてたわよね?」
「そうですね。アリアさんに一直線って感じでした」
「咄嗟に飛び出たとかとは違った?」
「明らかに狙ってましたよ。それにアリアさんを吹き飛ばしたあとに逃げようとするどころか、更に飛んでいこうとしてましたから」
「そうなのね。リナがいてくれてよかったわ」
いつも通りひとりでやってたら危なかったかも知れない。
もちろん、簡単にやられることはないでしょうけど怪我は確実に増えてたと思う。
「ちなみに触った手とかに違和感とかない?」
「はい。今のところは特に毒や魔法を受けた感じはしないです」
そういってリナは私に両手を見せてくる。
少なくとも直接的に触った手のひらには、たしかに見た目上の違和感はない。
「何かあったらすぐにいいなさい」
「わかりました。それで、えっと呪い自体は浄化されたんですか?」
「たしかに」
呪いの浄化の最中に起きたから呪いが起因するものだと思ってたけれど、全く関係ない可能性もあるわね。
私は慎重に床に鎮座しているソードを手に取る。
呪いを確認すると、しっかりと消えていることがわかった。
「呪いは浄化されているわね。あれが呪いの魔力なのかは定かじゃないけれど」
念の為に一度ソードを鞘から半分ほどまで出せるか試してみる。
先程までびくともしなかったのが嘘だったかのように、するりと引き出すことが出来た。
そして、今まで鞘のマークだけが気になっていたけれど柄にも彫り込みがあった。
ただ、鞘のものと違ってこっちは見覚えがある。
「これ、やっぱり結構いいものね」
「そうなんですか?」
「この柄の彫り込みは、大陸最大の鍛冶ギルドのものよ。特定の個人の鍛冶師ってわけじゃないけれど、あのギルドで作られる武具の品質はどこかの騎士団でも贔屓にされているとか」
「なるほど……あれ、でもあのギルドって結構値が張っていた気が。それで安価で冒険者にも装備が届くようにしたいって人がでてきて内部争いが結構ゴタついたって噂が」
「そのギルドであってるわ。そのうちの高品質を売りにしている側の紋章が彫り込まれているの」
「なるほど」
私は剣を鞘に戻して机の上に置く。
「ただ、そうなってくると……話がちょっと込み入りそうなのが嫌なのよね」
「どうして……あ、そうか。確実にダンジョンで作られたものじゃないから持ち主がいる可能性が」
「そういうことよ。まあ、拾った当人と当事者でやってくれればいいのだけれど。もう一つの問題はダンジョン生まれじゃない武器に呪いがかかってたってことよ」
「誰かが呪いをかけたってことですか?」
「もしくは、ダンジョンの中に装備していたりするものに呪いをかける罠とかね」
その場合は噂ぐらいは流れそうとも思うけれど。この剣をもった誰かのパーティーが全滅して武器だけが魔物の手によってミニダンジョンの外まで運ばれたとかじゃない限り。
「まあ、どっちにしても呪いを浄化したからには依頼主のライトに返すけれど。気をつけたほうがいいってことぐらいは伝えておきましょう」
「そうですね。元の持ち主が突然現れたりするかもしれませんし」
謎は多く残ったままだけれど、すぐに答えは見つかりそうにもない。
その後は、ダンジョンだけでなく呪いについても教会にある範囲での資料を集めて読み返したけれど、あの謎の生物と思われる記述は1つも見つからなかった。
それから鞘のマークのほうについても新たな情報は見当たらない。
そして日も落ちた頃、予定通りライトがやってきた。
「呪い自体は浄化できたわ。ただ、ダンジョンで作られたものではなさそうだから。もしかすると持ち主がいつか現れるかも知れないから、そこら辺は気をつけて」
「わかりました」
「それから、ちょっとだけ聞きたいんだけれどこのソードが落ちてた場所で他に異変とかはなかったかしら?」
「異変っていうと……」
「魔力が濃かったり、そのソードの周辺だけ草花が枯れていたとか」
そこまで強い呪いは私も実物は見たことないけれど。
「いえ、特には……はい。思い出しても、本当に何故かダンジョン内の草原に落ちてた感じなので」
「そう……いえ、ありがとう。またダンジョンに潜るなら気をつけなさいね」
ライトはそう言ってこの場を後にした。
見送った後に空を見ると、もうすぐにでも日が落ちきりそうな時間だ。
「リナ、帰るから教会の資料は今日中に返すから運ぶの手伝って」
「はい、わかりました」
本日は業務終了といったところね。
ただ、ウィン神父に今日あったことを報告すると少し険しい表情になった。
特に理由を教えてくれる感じではないけれど、もしかすると何かが起きているのかもしれないわね。
しかし、私に何も言わないってことは出番ではないってことでしょう。
そろそろ、ダンジョンにもう一度潜ってもいいころかもしれないわね。
「リナ。明日は冒険者ギルドに行くわよ」
「呪いの浄化はいいんですか?」
「もともとすべてがすべてを私がやるわけじゃないわよ。教会でもあの魔法陣と同じやり方であれば新人の神官でも時間をかければ浄化できるんだから……弱い呪いなら」
「それで、なぜ冒険者ギルドに?」
「そろそろもう一度ダンジョンにいくわよ。ただ、洋館についてとかの情報はギルドに渡して数日はたったし何か新しい情報があるかも知れないじゃない」
「なるほど。わかりました」
あまり期待は知てないけれど。あの森そのものは探索はすでに終わっているに近い扱いだっただろうし。
明日の予定も伝えて私たちは家へと帰った。
リットにも今日あったことを伝えると「あのギルドから武器を買えるような冒険者がこの国にきたなら目立ちそうだが……まあ、わかった」という反応だった。
たしかに、あれを落とした主が誰なのかも少し気になるわね。
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