第2話 キャラクター設定の時間だそうです。

そこは静寂につつまれた空間だった。

酷く郷愁を感じさせるようなフローリングが永遠と続いており、それはどこまでも先が見えなかった。

太陽のような光はないというのに不思議とあたりは明るい。

また遥か彼方まで際限のない空間は黒と偶に明滅する光で構成されており、まるで夜空のような空間だと感じた。


それはなんとも奇妙な空間ではあったが確かに綺麗だと感じる。


「すごいな、これ」


VR世界だということを忘れていたという事実と素直に綺麗だと感じたことに対してつい言葉が出てしまった。


「それはよかった。では君はここで何を求めるかね。」


どこからか声が聞こえた。それは含蓄のある言葉を話すような老人のような声であり、不思議と先人として頼りたくなるような声であった。


声の主がどこにいるのか分からず周りを見渡す。すると一度見たはずの場所に彼はいた。


彼の見た目は中肉中背であった。また白色のローブで体を覆っており、わずかに足が見えるのみだった。そのローブもボロボロであり彼に対して不気味な印象を齎した。

顔を見ようとすると深くフードをかぶっているため顔が良く見えない。それでも長いヒゲをもっていることはわかった。

ヒゲから安直だが彼は老人なのだと直感した。


そんな彼に対して疑問を返す。


「何を?」


「突然すまなかったね。いわゆるキャラクター作成の場だよ。ここは。そう、君は今から送られる世界で何をしたいのか。それを知りたい。」


「それは・・・。」


言葉が詰まる。老人からかなりメタい発言があったのもそうだがなんとなくで始めていたからだ。なんとなく面白そうだから。なんとなく新しい技術だから。なんとなくコミックや小説みたいな体験が出来そうだとおもったから。


やってみたいという気持ちが先行していて、その世界でどういう行動をするのかということを決めていなかった。それを彼は見抜いたのだろう。


「そうか、決まっていなかったか。いやなに、ここを訪れたものの多くはそうであった。安心するといい。では相談と行こうか。」


「相談?」


「そう、相談だ。君に対して私が質問していく。そうすることで君がやりたいことを決めていこう。まずはこの世界では休暇を求めてきたのかね。」


休暇。いや違う。刺激が欲しい。そう思ったし、冒険者のようなこともしたい。いわゆるネット小説やアニメのような別世界を期待していた。そうじゃないか?


「いや、アニメみたいな異世界を体験したいと考えてる。」


「そうか、アニメか。冒険でもしたいのかね。」


その質問は


「そうだ。多分。冒険をしてみたいんだと思う。違う世界で何かを探したい。」


「探したい。ときたか。ふむ。ではこうしよう。君は探索者としての目を持って訪れさせよう。」


「なぁ、思ったんだがこの世界ってステータス画面みたいなものはないのか?」


ふと思った疑問。ゲームなのにステータス画面でスキル振りやHP、そういったものがないと感じた。そりゃ現実的な世界でHPゲージなんてものが視界に写っていたら邪魔だけど。それでもステータス画面は呼び出させるものじゃないのか。そう思った。


「それはないよ。ステータス画面なんてものはない。ただスキルだけはある。それは見れる。こう手を振りながらなんでもいいから見たいと思えばできる。ここで持てるスキルは一つだけだが。」


どうやらスキル制の世界だったらしい。しかも一つだけとはケチだ。


「スキルは言ってしまえば個人だけのユニークな力だ。個人個人で違うことが多い。といっても強大な力は与えられないがね。」


そう思ったからか説明が来た。結構重要な選択だった。そう思ったが、とりあえずスキル画面を見た。


しかし特に表示はなく、取得できるスキルは空白であり選ぼうとしても選べなかった。


「個人の力だといっただろうに。スキルというものは個人の発露。普段は勝手に決まるような力を私がある程度偏らせることで持ち主が納得できるようにしているのだよ。」

「つまり、スキルは君の行き先を便利にする道具だ。ただし私が力を使わなかった場合は違うがね。」


どうやらスキルというものは固有能力であり、この老人が干渉しなければ好きな能力を選ぶということができないとのことらしい。


「とりあえず、汎用性が欲しいな。どんなロール(役割)を選んだとしても使えるようなものがいいな。」


「となればやはり私がオススメするのは探索者の目であろうな。説明しておくと何かしらのヒントや問題がある場所が分かるという能力だ。どういった状況だろうと活躍することは間違いないだろうな。」


少なくともこの老人がこれだけオススメしているということはメタ的にみてもこれを選んだ方がいいよということだろう。ならば・・・


「それで頼む。あと残っている決めなきゃいけない設定はあるか?」


「あとは名前と容姿を決めてくれれば完了であるな。」


名前。それならば


「ノヴァ。この世界を楽しめるように頑張ろうと思ってこの名前にした。」


「新しいもの、直訳すればそんな名前か。ノヴァ。君がどのような気持ちでこの世界に来たのかが伝わる名前だ。その名がより良い縁を持ってくることを私は祈ろう。では容姿はどうするかね。現実の君をそのまま持ってくるというのでもよいが。ただリテラシーの観点からはよろしくはないと思うが。」


「容姿はリアルのを軽く整えて、髪を明るめの茶色にしてくれ。目を、そうだな青色にでもしてくれ。」


「ふむ、できたぞ。鏡をだすから納得できたら了承してくれ。」


その言葉の後、老人は腕をふる。その後、ポンという音と煙と共に大きめの鏡があらわれた。


その中に写るオレはなかなかにイケメンであり、少なくとも現実の顔は雰囲気程度にしか残っていなかった。


これならばゲームとリアルを結び付けるのは不可能だろう。


「これでいい。あとは何かやることはあるか?」


「いや、ない。だが言葉は送らせてもらおう。君の道行は自由だ。何をするにもだ。だが忘れるなかれ、自由には責任があることを。それさえ忘れなければ楽しく生きることができるだろう。では行くがいい、君の道行は未来に溢れている。」


その祝福の言葉と共に再び腕を振るいゲートのようなものを開いた。


「この先はワシが決めた町に続ている。少なくとも君は気に入るだろうな。」


「あぁ、ありがとう。一ついいか、この後のチュートリアルはどうすればいい?」


「なに、この先にいる人々に聞くがよい。そこからシステムと一緒に説明をしてくれるだろう。」


その言葉に納得し、首を縦にふる。


この先に新しい世界があるということに心を震わせ、期待に満ちた体で一歩を踏み出した。


────────────────


はいどうもsinimukuroです。


今日の開示設定(フレーバーテキスト)


『スキル』 

他の作品だったらユニークスキルや異能。そういったように呼ばれる権能。これはプレイヤーの特権であり、新しき世界に飛び込む彼らに対する祝福である。

だが、忘れてはいけない。いつだって祝福と呪いとは表裏一体。いつだって与えられた力に溺れた人の末路はみじめなものなのだから。










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