第2話動物の名付け親キャンペーン
針釘崎光流は自宅のパソコンで、ネットサーフィンの最中。
何か面白そうな話題はないかなっと。
・・・・・・コレは良さそうだ。クリックしてっと。
動物園のホームページから目当ての記事を探して、目を通す。
『○○○○○動物園で今度お友達が誕生します(お友達とは動物の赤ちゃんの事です)』
分かってるよ。括弧の中はいらないでしょ。
『そこでお友達の皆さんにお友達の名前を付けて貰いたいと思います(実際にはお友達でなくても構いません)』
いらん事は書かなくていいでしょ。
そもそもこっちもあっちもお友達って分かりにくいし。
『諸注意、空想上の物語に登場する名前は禁止です(具体的には漫画アニメゲーム小説映画ドラマ舞台芝居歌詩落語絵本歌寓話民間伝承CDドラマラジオドラマカセットテープドラマミュージカルオペラ朗読劇歌舞伎能雑誌漫才歌劇路上ライブネット配信、その他の現実に存在する作品)。
理由は著作権の問題があるからです』
確かにその通り、後で問題が発覚すると大変な事態になりうるからな。しかし書き方が悪いね、見辛くて仕方ないよ。
『ヒラガナ及びかたかなでお願いします。小さいお友達(幼稚な幼児類)が漢字が読めずに悔恨すると慚愧に堪えません。よしんば当方因果に拠り遺憾の意を表明し血涙を流し痛恨の極みです』
ひらがなとカタカナが逆なのは何でだ?
しかも意図的に難しい言葉を使ってるし。意図的に分かりにくくしてるよな。何のためにこんな文章を付け加えたんだ?
『文字数制限もなんと、なんとなんとなんとなんと今回はしっかりとあったりします。ビックリドッキリですね。読み方で六文字以内です(以内なので六文字はOKです)。
七文字以上が駄目な理由は落語の寿限無(・・・・・・面倒なので省略)等の長いのに決まったら困るからです(名前を看板に書いたり、書類に記入したりするのが大変な労力となります)』
書いてある事は合ってるが、手抜き感が酷い。前回は長文での名前応募があったんだろうか。それで長文での名前が採用された前例もありそうだ。
『希望としては「ん」「ン」を入れてくれるといいですね(悪魔デーモン、訂正、あくまでも個人の感想なので有っても無くても問題ありません)』
昔に聞いたな、「ん」が付く芸人は売れるって話。嘘か本当か知らないけど。訂正じゃなくて修正して消しなよ。
『実際の人物、芸能人、スポーツ選手(プロアマ問わず)、芸術家、格闘家、漫画家、音楽家、詩人、友人、友達、親友、家族、親戚、知人、仲間、家来、御本人、召使い、その他の名前も駄目です。
裁判になったら色々とお金が掛かるでしょ、分かるでしょ、分かるでしょ、分かってよ、分かる筈です、分かれ』
圧が強いな。
『応募数に限度はありません。お一人で一億通送って頂いても構いません(理由は私が直接目を通す担当ではないので知ったこっちゃないからですよ)』
酷いな、この人。ぶっちゃけすぎだろ。仕事意識も仲間意識も低そうだし。
肝心の、何の動物が生まれるのか書かれてないんだけど、どこに書いてあるんだ?
針釘崎光流は、画面をスクロールさせた。
『ハダカデバネズミの名付け親キャンペーン』
なんでよりにもよってコイツを選んだんだ。
裸で、出歯で、鼠だぞ。もう一度繰り返すぞ。裸で、出歯で、鼠だぞ。
もっとかわいい系の動物の候補があっただろうに。
この文章、推敲されてないだろう。
少なくとも二重チェックはなされてないな。
『応募者の中から抽選で十名の方に豪華賞品をプレゼントします。
ドンドンガツガツゴンゴンドッコンドッコン送って下さい』
まぁいいや、何か適当な名前を五百個位送っておこう。暇だし、それにメールだから無料で送れるし。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二か月後。
動物園の名付け親の件、豪華賞品とやらが送られて来たんだけど、
豪華な鼠の餌じゃねぇか。
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