LOVE STORYS i

KPenguin5 (筆吟🐧)

第1話 ちかの話

「はぁー、最悪」

ここのところ激務続きで疲弊していた所に、ミスをしていたことが発覚し、それ自体は上司の采配でなんとかことなきを得たものの、昨夜は相当凹んでいたらしく家で呑みながらパリからの国際電話でジンに愚痴ってしまった。

最後の方はあまり記憶がなく、朝起きてみたらジンからの鬼電の嵐…

「あーあ。またやっちゃった。もう嫌われたかもなぁ…」

とりあえず今日も出勤なので朝の支度に取り掛かる

鏡を見ると、なんと酷い顔をしているんだろ?

昨夜、テレビ電話にしなくてよかった…

酷い顔とはっきりしない頭を流すためにシャワーをし出勤の準備をして出掛けた。


今日も相変わらず残業だ。でも、これを乗り切れば明日から連休なのだ。そう思えば、少し気持ちも軽くなる。

あとは後片付けをしたら帰れる。

「ねぇ、サキ。明日休みなんだし飲みにいかない?」

同じく残業組のサキを誘ってみた。

「…あ、ごめん。今日はだめなんだ。また今度行こ。」

…あ、サキ。今日はデートだ。…ん?

「…ごめん、そっか。今日はクリスマスイブやん。ん、楽しんできて。」

「ありがと。ごめんね。じゃ、おつかれ。あ、彼氏ときちんと仲直りするんだよ。」

サキは、少し気を使った笑顔を残して部屋を後にした。


そう、今日はクリスマスイブだった。

10連勤のバタバタとジンとは国際遠距離恋愛という事もあってすっかり忘れてた。

1人残された私は、焦燥感に押しつぶされそうだったが、

「よし、帰ろ。で、ジンに謝らなきゃ。」

と、戸締りをして事務所を出た。


会社を出たら

「ちか。」

聞き慣れた優しい声がした。

え?ジンの声がした?

でも、まさか…

とキョロキョロしていたら、目を塞がれた。

「だーれだ!」

顔に冷たい肌の感触と、懐かしい愛しい人の香りがして心臓が跳ねた。

「ジン!」

振り返った私の前には、茶色のロングコートを着ていつか私がプレゼントした白のマフラーをしたジンが眩しいぐらいの笑顔で、そこに立っていた。

「え?なんで?」

「…なんでって、今日はクリスマスイブやん。それに、最近のちか、すごく疲れてそうだったし。だから、日本での仕事を入れてもらって帰って来た。」

「帰って来たって。なんで教えてくれないの?

あ、それより…あの…昨日はごめんなさい。」

やだ、昨晩の事思い出して、まともにジンの顔見れないよ。

「本当だよ!ちか、もう私なんか生きる資格ない!とか死んじゃいたい!って泣き叫ぶからマジで焦ったやん。本当は昨日、帰国する事言うはずだったのに、それどころじゃなかったよ。…あれ?ちか泣いてる?え?泣いてる?」

「…ごめんなさい。でも嬉しくて、ジンがいるのが嬉しくて。こんなにあいたかったんだって思ったら…涙が勝手に…」

そう言う私をジンが優しく抱きしめて、涙を拭いてくれた。

「いつも強がりばっかり言うちかが弱音吐くなんて、相当疲れてたんだよね。でも、弱いところ見せて甘えるのはおれだけにしてね。ほら、涙拭いて。

今回はちかのお陰でサプライズになったよ」

「うぅ…ジン優しい…」

本当に私の彼氏は最上級に私を甘やかしてくれる。

私はジンをギュッと抱きしめてから体を離した。

「さ、美味しいレストラン予約してあるから、早く行こ。寒くて凍えそうだよ。」

「うん。」

私とジンは2人並んで歩き出した。

空からは白い天使が舞い降りて来た。

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