俺のスキルは全知全能ナビ~魔王も一瞬で追い詰め破壊する~最速攻略チート

天乃聖樹

第1話

 少年バルクは小麦倉庫に閉じ込められていた。

 毛布で体をぐるぐる巻きにされ、縄で厳重に縛り上げられた、簀巻き状態である。

「あいつら、なかなかやるな……」

 村はずれの倉庫の中で、バルクはつぶやく。ここにバルクを放り込んだ子供たちは、既に遠く離れたところまで走り去っているだろう。

「だけど、俺を甘く見るなよ! こんなこともあろうかと、準備は万端だ!」

 バルクは高らかに言い放つと、ポケットに仕込んでいたナイフで毛布と縄を切り裂いた。たちまち拘束から逃れ、壁をよじ登って倉庫を脱出する。

 寄ってたかってバルクを監禁した子供たちも子供たちだが、瞬時に縄抜けしてしまうバルクも大概である。とても八歳児のやることではない。

「さーて、みんなどこに行ったかなー?」

 バルクは周囲を見回しながら、村の大通りを走る。バルクの目的はただ一つ……子供たちのかくれんぼを邪魔することだ。なぜなら、かくれんぼから仲間はずれにされたからだ。

 バルクは物心がつく頃から、かくれんぼだけは誰にも負けたことがなかった。

 カロト村の子供たちみんなでかくれんぼをプレイするとき、どんな場所に相手が隠れてもすぐに見つけてしまう。

 逆に自分が隠れるときも、敵が近づいてくるとなんとなく分かり、ささっと他の場所に隠れてしまうものだから、鬼はいつまで経ってもバルクを捕まえることができない。

 だから、そのうち村の子供たちはバルクとかくれんぼをしてくれなくなった。バルクの唯一の取り柄なのに、である。

 悔しいのでバルクは、みんなのかくれんぼ中に鬼に隠れ場所をばらすようになった。

 すると子供たちは腹を立て、かくれんぼをする前にバルクを毛布と縄で簀巻きにすることにした。それが今日である。八歳になったバルクへの誕生日プレゼントにしては、簀巻きは少々スパイスが利きすぎていた。

「げっ……バルク! どうやって抜け出しやがった!」

 村の中央広場のところで、走るバルクを発見した少年が目を見開く。自由に行動していることからして、今回のかくれんぼの鬼だろう。

 バルクは笑う。

「さーな! それよりいいこと教えてやる! ここから一番近くに隠れてる奴の場所は――」

「うわあああああ! やめろやめろ! 遊んでんの邪魔すんじゃねえええ!」

 少年がバルクに飛びかかってくる。バルクは殴られながらもかくれんぼのネタバレをすることをやめない。命がけである。是が非でも、かくれんぼに混ぜてくれなかった差別主義者への報復を果たさねばならないのである。



 こんなふうに普通とは少し違う幼少期を過ごしたバルクではあったが、十代後半にさしかかる頃には、いたって普通の怠け者になった。

 実家の畑仕事も手伝わず、毎日ぶらぶらして過ごす。仕事なんて退屈すぎて、堪えられなかったのだ。もっと楽しく生きたかったのだ。

 今日も今日とて村の近くの川辺で釣り糸を垂らし、バルクはぼーっとする。空に浮かぶ雲の形はバラエティ豊かで、一日中眺めていても飽きない。

 そんなバルクのところへ、村の方から一人の少女が歩いてきた。

 健康的に引き締まった四肢に、誰にも恥じることがない見事な胸。畑で太陽をしっかり吸い込んだ肌は、小麦色に焼けて艶めいている。

 くりくりっとした瞳がきらめき、鼻筋や唇は穏やかな曲線を描く。表情には愛嬌が溢れており、見る者すべての心を惹きつける。

 肉付きの良さといい、きっと将来は完璧な村人妻になるだろうと思わせる容姿だ。

 彼女はバルクの幼馴染みで、名をリリカという。

「もー! バルクったら、また仕事さぼって釣りなんかして! ダメだよー、ちゃんと刈り入れの手伝いしなきゃ!」

 リリカはぷんすか怒った。

 しかし、バルクは断固として首を振る。

「俺は働くつもりはない。これは何度も話したことのはずだ」

「そんな堂々と言われても! バルクのこと、村のみんながなんて呼んでるか知ってる? ニートだよ! 不名誉すぎるでしょ!?」

「いいじゃないか、親からもニートって呼ばれてるんだから」

「なにがいいの!? このままじゃバルク、結婚もできないよ!? みんなからずーっと仲間はずれなんだよ!?」

 リリカは本当に心配そうな顔をする。

 住民の九十九パーセントが実家の畑仕事を継ぐような辺境の村で、バルクは異質な存在と見られるのは必然。

 行商人が『あーそれは、いま王都で流行ってるニートだぁね』と指摘してからは、バルクは村人たちからニートと呼ばわりされるようになった。今やバルクを名前で呼んでくれるのは幼馴染みのリリカくらいのものだ。

「ま、リリカは普通につるんでくれてるし、他の奴らになんて言われたっていいさ」

 バルクが笑うと、リリカは頬を紅潮させた。

「な、なにそれ!? 私さえいれば充分って言いたいわけ!? だ、だめだよ、そんなので誤魔化そうたって! それくらいで私は引き下がったりしないんだからああああああ!」

 なんて叫びつつ、走り去っていくリリカ。

 しっかり幼馴染みが引き下がったのを確認するや、バルクは再び釣りに没頭し始める。

 とりあえず食べ物はこうやって手に入れているし、実家には負担をかけていないから、あくせく畑で働く必要はないだろうと思うのだった。

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