時空乃香菜梅(前編)
つばき
第四話 時空の巫女と過去の人
私がここに落ちたとき、彼は私を受け止めてくれた。
彼は未来の中学時代の時も。感謝をこめたい。「ありがとう」と。
私は心の中で思い、そして決意した。私は彼に言った。
「この世界でも。助けてくれた。それが浩雪君。だからもう一度言うね。守ってくれてありがとう。」
「香奈梅! 希望は捨てるな。」
「そうする。」
「…うん、香奈梅。俺は香奈梅のこと好きだよ。」
「知ってる。私も好き。でもかなわないけど少しお願いしてもいい?」
「何? 香奈梅。」
「この世界だけで私を好きでいてほしいの。それであいつから私を解放して私を未来に返してほしいの。浩雪君、元の世界に…。」
「香奈梅、分かった。約束する。」私は浩雪君にもたれた。
「ありがとう。大好き。」
その様子を見ていた竜はセイランに言いました。
「この状態では彼女を時空に飛ばすのは不可能です。一度撤退され、次の策を一族と練り実行するべきかと。」「そうね。撤退しましょう。
「くそ。貴様ら今日の所は撤退するわ。また会いましょう。ほほほ。」そよ風をまといながら風をふかし敵は消えた…。
「香奈梅、大丈夫か?」
「うん。浩雪君。願い主は?」
「消えたよ。ごめん。これから作戦を練って倒そうと思ってたのに逃げられた。」
「いいの。ありがとう。浩雪君が助けてくれたから私、戻れるかも。」
「香奈梅…。」
僕は彼女の笑った姿を見て思った。
(何でそんなに笑えるのにいつもおとなしいんだ。ちゃんと言えば俺を失わなくていいのに。こんなのお互いに みっともないじゃないか。)
文化祭が近づいていた。9月頃のことだった。
香奈梅は浩雪君に頼んだ。
「浩雪君。お願いがあるの。」彼は尋ねた。
「なに?」
「文化祭の時に私の歌を聴いて、ほしいの。私、音楽部で出るから。」
「おう。」ドクン
笑って話す。彼に私の心は揺れた。
「あっ、昌樹君たちも聞いてね。」
「おう。楽しみにしてるよ。」
「うん。これが私の最後の曲になるかもしれない。」昌樹は尋ねた。
「どうして最後なんだ?」
「この世界の人間じゃないから。」
「香奈梅…。」
僕は最後という言葉が嫌だ。だって君を失う事になる。君の友たちとして好きでいられなくなるからだ。だから僕はー。
「嫌だ!」
僕は彼女を失うことが嫌で彼女に触れてしまった…。
浩雪君は私を抱きしめた。
「最後なんて言うなよ、香奈梅。」
「どうして私にそう言ってくれるの? 浩雪君。」
「約束したじゃん。香奈梅を現実の世界に返すと。願い主には渡さない。香奈梅には指一本も触れさせない。戻すために。絶対に…。」
「そう僕は決めた…君が消えたら君を失う。それに君の友たちでいられなくなる。俺は君を失いたくないんだ。だから最後なんて言わないでくれ」シュー
風が吹き始めた。
「浩雪君。」
「ごめん。それに君がこの世界の香奈梅じゃないことは俺も知ってる。」
「どうして?」
浩雪は答えた。
「空から降ってきたからに決まってるだろ。誰が受け止めたんだ? 受け止めたの俺だよ。君とは初めて出会ったように見えるけど、僕らは未来で会ってると君は言った。だから最後まで守らせてくれ。」香奈梅の心が大きく揺れた…。
「うん。」
香奈梅は尋ねた。
「一つ聞いてもいい? どうして私を守るの。こんな別世界から来た私を。」
「香奈梅…決まってるだろ。好きだから。だから今だけ好きでいさせてくれないか?」
「…私も好き。今だけ好きになってもいい。」
「今だけだ。俺もそう思ってる。」
「じゃあ約束。」
「約束。」
私は幼なじみと指切りをしたのである。たとえこれがかなわぬ恋心でも、これを現実とつなぎ、友たちになる。そして、全てが変わる事を私は信じ、その思いを心に残した…。
僕は決めたんだ。香奈梅を絶対過去から未来に返すと…。
ぎゅっ
僕たちは互いに手を握り、祈った…。
「浩雪君。」
再びそよ風が吹き始めた…。
僕は心の中は揺れる思いであふれていた。香奈梅のことで。かなわない恋心を描いていた。
その時、敵がそよ風とともに現れて、再び光の嵐を起こした…。
そして私を吹き飛ばした。
ドン
「ふふふ。そんな約束などなかったことにしてあげる。食らいなさい、我が竜の光を! ライトンソード!」セイランは竜を剣に変え、死の技、ライトンソードという破滅の剣で香奈梅に刃を突き刺した。
ぐさぐさと刺され、私は悲鳴をあげた。
そして彼の名前を呼んだ。
「助けて、浩雪君。あー!」
またあいつが香奈梅を殺しに現れた。香奈梅が危ない。
香奈梅を守るって決めたんだ。
香奈梅が手を伸ばし、僕の名前を呼んでいる。助けなきゃ。
僕は香奈梅に手を伸ばした。
「香奈梅!」
少女は呼び続けた。香奈梅は手を伸ばした。
「浩雪君…助けて!」
僕たちは意識朦朧の香奈梅に手を伸ばした。
「香奈梅、僕の手を!」
僕らは手を伸ばそうとした…。
「届け…届け…。」
「…。」
しかし、一歩届かず…香奈梅は意識を失い、倒れこんだ。
「香奈梅!」
私は夢の中をさまよい続けていた。
「浩雪君どこにいるの。」
闇のほうから声が聞こえた。
「こっちよ、あなたの居場所は。来なさい。」私は夢の中を走り続けていた…。
「これで香奈梅は我が思うまま現実に返る。最高よ。」
一方、浩雪は香奈梅を抱きかかえ、願い主を問い詰めた。
「お前、香奈梅に何をした?」願い主は言った。
「私の思い通りにするためにしただけよ。彼女に。」彼はバットを持ち言った。
「お前、よくも。香奈梅、目を開けてくれ。香奈梅!」
浩雪は目を閉じ香奈梅に触れた。次の瞬間僕の体が光った。そして、僕は眠ってしまった。
香奈梅に触れた状態で。そして、僕は香奈梅の夢の中にいた。
「ここはどこだ?」声が聞こえた。
「浩雪君、浩雪君。」
声を辿り行くと香奈梅が闇のほうに走って行くのが見えた。俺は叫んだ。手を伸ばした。
「香奈梅、駄目だ、そっちに行っちゃ。そっちは闇だ。やつの餌食になる。戻れなくなる。香奈梅、そっちに行くな。香奈梅、戻ってきてくれ、俺の元に。香奈梅!」
私は暗闇を走り続けていた…。
その時、声が聞こえた。後ろを振り返ると光が見えた。
声はその光の先から聞こえた。
「光の方から声が聞こえる。行かなきゃ。私は光の世界に。」私は光の世界にたどり着いた。
「あれ? ここどこ? 光の中? 浩雪君の声が聞こえる。」私がさらに走り続けると彼がいた。
「浩雪君!」
彼は言った。
「やっと戻ってこられたな、香奈梅。」私は尋ねた。
「どうしてここに?」彼は言った。
「君を助けたくて。君に触れたら君の夢の中に入れた。」私は言った。
「そうなんだ。ここはどこなの?」彼は言った。
「ここは闇の夢。君は闇にやられ、闇の夢にいたが、俺が呼んだからここにきた。」私は言った。
「私を助けにきたの?」僕は言った。
「そうだよ。さあ香奈梅、帰ろう。ここにいては駄目だ。昌樹たちも待ってる。」私は言った。
「浩雪君…ありがとう。」私は彼の手をとった。
「さあ行こう、香奈梅。」
私は頷いた。私は彼の手を取り出口に向かい、歩いていった。
「僕はいったい!」
僕は目を開けた。
「大丈夫か浩雪。眠っていたから心配したんだ。」僕は言った。
「ありがとう。あれはいったいなんだったんだ? 俺の力なのか。」彼らは不思議そうに言った。
「浩雪。」
俺は昌樹に言った。
「そうだ、香奈梅。」
私は夢と現実をさまよっていた。
「私の名前を呼んでいる声だわ。早く目を開けなきゃ。」私の鼓動が鳴り響いた。
「あれ? 何だろ、この感じ。」
浩雪は眠ってる香奈梅に言った。
「君が好きだ、好きだ。香奈梅、この世界でずっと。だから目を開けてくれ。香奈梅!」激しく鼓動が鳴り始めた…。
「この感じ…温かい…。浩雪君のぬくもりだわ。行かなきゃ。浩雪君、今そっちに行くわ。」タッタタ
「香奈梅!」
私は走り続けた。そして私は目を開けた。彼の胸の中で…。
「浩雪君…私どうしたの? 心配かけてごめんね。」
「香奈梅…よかった、よかった。すげ心配したんだよ。」彼女はありがとうと言い、そして笑った…。
願い主は目を覚ました奇跡に驚いていた。
「くっ! なぜ目を開けた。信じられないわ。」
「お前、香奈梅によくもやってくれたな。」願い主は浩雪に言った。
「くっ、やはりお前のせいね。香奈梅から離れて貰うわ。竜よ、貴様の力であの者を破壊せよ。」
「承知いたしました。」
竜は力を出し始めた。稲島の光を解き放った。
しかし、浩雪は光を跳ね返した。
「なに? 光を跳ね返しただと?」
「お断りだ。香奈梅はお前に渡さない。」竜は驚いた。
「どうゆうことだ。…それは野球のバット?」
「俺は野球部所属だ。香奈梅を兵器として思い通りに使うなら俺が許さない。」「このくそが! このセイランとセイラン二号に勝てると思うなよ!」
バン
「やっとバットを跳ね返したわ。これで終わりよ。」光は虹のように落ちていった。
願い主はバットの力により跳ね返された。
「香奈梅に触るなって言ってるだろう、この悪魔。大丈夫か香奈梅? 俺が守ってやるから。」
「…」
「浩雪君…」
「無駄なあがきよ!」
「香奈梅、しっかり掴まってろ!」
「うん。」
浩雪君は私を抱きかかえて逃げ回った。
「ちょこまかと。くそ! 人間ってどこまでしぶといのかしら。」しかし、敵の力は生徒の力により敗れた。
「あーくそ! あと少しで私のものにできたのに。まあいいわ。次はお前を思いどおりにしてあげるわ。ほっほほ。」願い主の巫女は笑いながら私たちの前から姿を消した。
「願い主はどうなったの、浩雪君?」
「消えたみたいだ。」
香奈梅は安心感を持ち、言った。
「じゃあ戻れるの、私? うれしい。」
「いや。あいつを倒さないと。」
「そう。まだ諦めるわけにはいかないわ。」
「ああ香奈梅。一つ頼みがある。今だけ俺の彼女になってほしい。」香奈梅は尋ねた。
「それはいつまで?」
「香奈梅が成人になる日までだ。」
「分かった。でもどうして?」
「香奈梅を元に戻すために決まってるだろう。」私は頷いた。
「それならいいわ。じゃあ約束だよ。じゃあ指切りしよう。」
「僕は君と指切りはしない。もっと大切なものを君にあげる。」
「…。」
彼は私に約束の口づけをしてくれた。
長い口づけが続いた。
…ドンドン、ぷるぷる…
「電話が鳴ってるよ、香奈梅。」
「うん。」
「出てみたら?」
私はうなずき携帯電話をとった。
「もしもし…。」
「桜綾さんですか?」
「はい、そうです。鈴木さんどうして?」
「桜綾さんが仕事にこないから 電話したのよ。」
「あ、鈴木さん、ご迷惑かけてすみません。」
「いいですよ。今どこにいるの?」
「今、時空の世界にいるんです。」
「時空? 見たことないよ!」
「私も、ないです。昨日変な人に飛ばされて、今、過去の世界にいるの。」
「なんだって? じゃあ、今こっちにいないってことだよね。」
「はい。鈴木さん、私もう戻れないかもしれない。鈴木さんはいつも私のピアノを聞いてくれる。でも、もう聞かせられない。」
「桜綾さん、諦めたらだめです。戻れます。みんな、待っています。」
「でもどうやったら戻れるの?」
「ピアノを弾いてください。そちらに音楽室ある?」
「あります。」
「でしたら音楽室に行ってピアノを弾いてください。」
「わかりました。」
「ではいったん切ります。また後でかけるから。」
「はい。お待ちしてます。」 かち
「誰から?」
「仕事の上司から…。ピアノを弾いてくれと。」
「もしかしたら帰る道ができるかも。」
「なるほどね。」
「行こう、香奈梅。音楽室に。」
「うん。」
「俺たちも行くよ。」
「昌樹君、大紀君ありがとう。」
「おう。」
私たちは音楽室に行った。
携帯が鳴った…。
「はい。もしもし鈴木です。」
「鈴木さん。音楽室に着きました。」
「ではこのままの状態でピアノの上に携帯電話を置いてください。」私は携帯を置いた。
トン
「置いたわ。」
「よし。ではピアノを弾いてください。気持ちを込めて。」
「わかりました。」
「ちょっと待て。」
「どうしたの?」
「空を見ろ。」
空を見ると、二体の竜が現れた。
「なんだ、あの竜は。二体いるぞ。」昌樹は言った。
「でもどうやって止めるんだ?」
「一つある。香奈梅の弾いてるピアノの音色を聞かせることだ。それと俺は香奈梅のピアノを邪魔するやつは絶対に許さない。あの糸を止めるぞ。音を糸に響かせれば竜は消えるはずだ。」
「なるほど。その方法で行くぞ。」
「おう。香奈梅、糸に君の曲を響かせるんだ。」
「…うん。」
私は光の糸に響くようクラシックをたくさん弾き続けた。糸に響くように。
「届け、糸に。私の音楽、届け。」
私は仕事を辞める鈴木さんのためにピアノを弾き始めた。その音は光の糸を作っていった。まるで音楽に魔法がかかってるように。
「香奈梅の弾いてる姿、初めて見たよ。奇麗だ。まるで香奈梅が僕のために弾いてるように聞こえるよ。」
「本当だ。僕たちのために弾いてるように聞こえるぜ。」
シュー
「聞こえる、鈴木さん? 私のピアノの旋律が。私は鈴木さんのために弾いてるの。お願い、届け。私の音楽、届け。」
「もしかしたら帰る道ができるかも。」
【現代の世界】
「ああ、聞こえる…桜綾さんの旋律が。俺のいる場所に君のピアノが聞こえてきた。俺が君のピアノを聞いたのは去年が最初だ。君の曲は俺の心を癒やす。
だから早く戻ってきてくれ。君の曲をまたこの場所で聞きたい。だから戻ってこい。早く早く。」 ピカー
私は弾きながら叫んだ。
「届け。届け。」ピアノの音が現代の空、そして今私がいる過去の世界の空に響き渡ったのである。そして、奇跡が起きた。空に奇跡の糸が現れた。三本の光の糸が現れた。
「何? 糸に光があふれ始めてる。これはいったいどういうことなの?」
ぎゃー
「あの光はまずい。私の思い通りの小娘が崩れるわ。そんなことさせない。祈りの竜よ。あの糸ができるのを阻止しなさい。」ぎゃー
二体の竜が光の糸から落ちていった。
「くそ。私の竜がやられただと。今日は止められたけど次はあなたを私が作った世界にとどめてやるわ。」シュー
敵は光の糸の近くから姿を消した。
「弾いたわ。敵は消えたみたいね。」
「そうみたいだな。」
「見て。糸が長くなってる。」
「本当だ。これで帰る道がまた一つできたね、香奈梅。」
「うん。あっ、電話。もしもし。私の曲届いた?」
「届きましたよ。戻って来る日をお待ちしています。みなさんに変わりますね。」
がしゃ
みんなの声が聞こえた。
「香奈ちゃん。早く戻ってきて。」
「みなさん。必ず戻ってきます。」
「待ってますよ。」
また一つ希望が見つかった。
「はい。」
私は電話を切った。
「浩雪君。帰る道がやっとつながったよ。」
「ああ。それも香奈梅がみんなにつなげたからだよ。」
「私が?」
「おう。ただ一番は俺だ。」
「浩雪君? どうして?」
「空から降ってきたからに決まってるだろ。それに、もし俺が受け止めていなかったら香奈梅はここにいないよ。」
「そうかもしれない…。」
「それに…。」
がさ
彼は私を抱きしめた。私は嬉しくて涙が頰から溢れ落ちた。
「やっと浩雪君の声が聞こえた。糸ができたから。今では現代のあなたの声が聞こえる。」
「やっと届いた。僕の声が。僕は過去の俺を通して君に話してる。」
「知ってる。今、聞こえるから。浩雪君の声が。」その瞬間、消えた。
「なんで消えたの?」
「わからない。けど大丈夫。俺がつなげてるから。俺の話を聞いて。」
「…浩雪君。わかった。」
「香奈梅は知らないと思うけど、俺は香奈梅のこと好きだった。なんでそう言うかというと、現代の俺自身も香奈梅が好きだったんだ。中学の卒業まで。俺たちは返事を返さず卒業したんだ。」
「そうだったんだ。でもありがとう、話してくれて。でもどうして現代の浩雪君の思いがわかるの?」
「感じるんだ。彼の思いが過去の俺に繋がってるから。香奈梅も感じてみてよ。」
「うん。さっきは感じたけど今は感じないよ。」
「大丈夫。俺が手助けする。」
「うん。でもどうやって?」
彼は私に手を差し出した。
「俺の手を握って目を閉じてみて。」
「うん。」
私は彼の言うとおり目を閉じ、手を握った。その瞬間、私は彼の心を通した。
ピカー
「この波長の音は現代の彼の波長だわ。聞こえる…心の音が。」彼の声が聞こえた。
「香奈梅なのか?」
「あなたは現代の浩雪君。」
「そうだよ。やっと再びつながった。俺の声。」
「うん。浩雪君、聞いて。私、あの時、浩雪君のこと好きだった。」
「俺も好きだったよ、ずっと。君と同じクラスになってから。」
「浩雪君。いつから?」
「君が部活で、僕が練習してるの見てるのは知ってる。あと君が僕にチョコレートをくれたことも。全部知ってる。君の全てだ。僕にとって君は大切なひとだったから。」
「ありがとう。」
「おう。」
「私たち不器用のまま卒業したんだね。」
「ああ。けど僕はまだ君に届けてない。俺の気持ちを全部。あの頃の気持ちを。だから戻ってきてくれ。ちゃんと君に伝えたいんだ。」
「浩雪君。私もあの時の気持ちを浩雪君に伝えたい。全部。私の気持ちを。」俺と香奈梅の思いは一つになっていた。
「私も話したいこといっぱいある。だから待ってて。必ず戻るから。」
「俺も待ってるから。君が戻るまで、ずっと待ってるから。」
「うん。」
私は目を開けた。
「どう。現代の僕の声、聞こえた?」
「うん、聞こえた。だから私、諦めない。現代に帰るまで。」
「ああ。」
僕は君を必ず元の世界に帰す。たとえ君がこの時代から消えても。
最後のバレンタインが来た。三年生の卒業前の二月十四日が来た。
「みんなおはよう。これ友チョコ。」
「ありがとう。」
女子たちは喜んだ…。
私は心の中で思った。
この空気を絶対変えて戻るんだ。
「浩雪君、ちょっと渡す物があるの。」
「いいよ。ここでいいかな?」
「誰もいないところがいい。」
「じゃあ廊下はどう?」
「いいよ。」
僕たちは教室を出た。
「浩雪、どこにいくんだろ。香奈梅と。」
「ついて行こうぜ。」
「いく必要ないと思う。」
「なんで?」
「俺たちが介入したら香奈梅ちゃんが元の世界に戻れないだろ。」
「ああ、そうだな。」
「今はあいつに任せておこうぜ。浩雪に。」
「ああ。あいつなら必ず成功する。」
僕たちは浩雪と香奈梅を見守ることにした。
「香奈梅、ここなら誰もいないよ。話って何?」
「これ。今日バレンタインでしょ。浩雪君に。」それはクッキーだった。
「ありがとう。香奈梅、君が大好きだ。」がさ
彼は私を抱きしめた。
「…浩雪君。私も浩雪君のことが好き、大好き。」
「やった。互いに言えたね、香奈梅。」「うん。でも今度は元に戻ってからだね。」
「ああ。その時は君の友たちとして君を迎えに行く。」
「うん。じゃあ約束。」
「うん」
僕たちはこの時代で最後の指切りをした。
「一つ目印をつけておきたいんだ。」
「いいよ。どんな目印?」
「メアド交換だ。万が一、君があいつに奪われても連絡取り合いながら戻る道筋を作るために。」
「わかった。」
「じゃあ交換ね。」
私は彼とメアドを交換して戻れる目印を作った。
「これで大丈夫だ。」
「うん。」
その時、私の体が光った…。
「なに?」ピカー
「きゃー!」
「香奈梅、お前を必ず見つけ出してやる。どんな世界でも君を助け、元の世界に返す。だから待ってろ!」
「うん、待ってる。きゃー!」
「香奈梅!」
果たして香奈梅は元の世界に戻れるのであろうか…?
私は中学の時、空間から遙か彼方にある高校時代の時空に飛ばされた。
バン
「ここはどこ?」
それは、先ほどいた世界と違い、雲は浮いていた。天気は晴れていて、学校の形も違い、運動場も広く自然に囲まれた世界であった。
「なに? この世界、さっきと違う。」
「あなたはこの世界で彼を見つけ結婚するの。」
声が聞こえた…その声は以前の願い主と違う願い主の声であった。
果たして香奈梅は元の世界に戻れるのであろうか。
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