このミステリーがひどい! 里中芋三郎の事件簿

@panjizzz

第1話FileNo.01 木馬にひそむ影

【プロローグ】

深夜の新宿。

ネオンの光が雨に滲み、裏路地には甘い香水と革の匂いが漂っていた。


都内某所のSMクラブ「女帝城」。

そのプレイルームで、女王様の麗奈(26)が何者かに殺害された。


胸には鋭い傷口。そして――

鍵は内側から掛かっていた。

完璧な密室殺人。


パトライトの赤が壁に揺れる。


そんな中、二人の刑事が現場へ入ってきた。


「里中芋三郎刑事、現着しました」


新米の広瀬刑事が緊張した声で言う。


その横で、芋三郎はコートの襟を立て、低く呟いた。


「……厄介な夜になりそうだな」


芋三郎刑事は、この密室トリックを暴き事件を

解決へ導くことができるのか!?



【解明編】

プレイルームは薄暗く、器具が影を落としていた。


三角木馬、拘束台、ムチ、吊り輪――


広瀬は思わず顔を赤くする。


「うわ……これは……刺激が強すぎます」


「仕事をしてください、広瀬くん」


芋三郎はハードボイルドな声で返す。


「しかし……ほんとに密室殺人ですよ。

いったい犯人はどうやって逃げ出したんでしょうね」


その時、ドアが開いた。


「お邪魔するよ」


「村さん!」


現れたのは村田留三刑事。

定年まで残り一か月の大ベテランだ。


村田は部屋を一望し、低く呟いた。


「……似てるな。

三十年前、俺が唯一、解けなかった“あの事件”に」


広瀬が息を呑む。


芋三郎は村田を見ると、ぽつりと告げた。


「……一度署に戻りましょう」


三人はプレイルームを後にした――が

芋三郎だけがドア前で立ち止まる。


広瀬は不思議そうな顔で芋三郎を見る。


芋三郎は、何か言いたげな広瀬の口を手でふさいだ。


そして、ゆっくりと振り返りプレイルームへ戻った。


「ガタ……ガタガタ……」


「……やっぱりそこにいたか」


「……お前のトリック――この芋三郎が見破った!」

ビシッ!と三角木馬を指をさす芋三郎刑事。


三角木馬がガタガタ揺れ、

その“内部”から人影が這い出ようとしていた。


犯人「……あっ、やべぇ……」


広瀬刑事が吠える。

「お、お前そんなとこで何してる!」


犯人「くそぅ、警察がいなくなったら逃げようと思ったのに」


犯人は木馬に下半身を突っ込んだまま連行されていった。

ガラガラガラガラ……(木馬の音)


ちなみに殺害の動機は、書くとBANされる可能性があるため

ここには書けない。


広瀬「さすが芋三郎刑事、事件解決ですね!」


芋三郎は、黙ってろうそくの火にタバコを近づけた。


村田刑事はその後、残りの勤務日数を全て有給で消化し、

特に誰からも惜しまれずに退職していった。


[第一話 完]

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