Paradigm Noema(パラダイム・ノエマ)

ReYusei(リュウセイ)

Scene 1-1:アウレリアの祈り

――光は、いつも静かに始まる。


アウレリア・リスフェルは夜明け前の大聖堂にいた。


石造りの天井は闇に沈み、

ただ中央の“理の灯(ことわりのひ)”だけが

淡い金色の光を放っている。


彼女は胸に手を添え、瞳を閉じて祈った。


「今日も、世界が正しくありますように。」




理信教の巫女として、光の観測者として。

彼女は毎朝ここに立ち続けてきた。


──その時だった。


胸の奥に、冷たい波紋のようなざわめきが走る。

アウレリアはそっと目を開けた。


“理の灯”が、わずかに揺れていた。


光は本来、揺らがない。

それは世界が持つ「理」が乱れた時にだけ起こる兆候。


「……光が、脈動している?」




ごくかすかだが、確かに脈打っている。

光が鼓動するような──そんな異質な気配。


アウレリアは思わず息を呑んだ。


大聖堂は沈黙していた。

外の世界はまだ夜の余韻に包まれている。


だが、彼女だけは気づいていた。

これは“何かの始まり”だと。


誰にも聞こえないほどの静寂の中、

その揺らぎは確かに世界を撫でていく。


アウレリアは一歩、光に近づき囁いた。


「……どうか、私に教えて。

何が、起きているの……?」




光は答えない。

ただ、揺れていた。


そして、その揺らぎは消えなかった。


Scene 1-1 END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る