第7話 緊張と小さな掛け合い
道中の休憩所は、旅人や商人で賑わっていた。 紗代は荷車のそばで立ち尽くし、胸の奥で鼓動が早まるのを感じていた。 「……私も、商人として何かしないと」
アレクセイが横から静かに言った。 「交渉は練習だ。ここで少し試してみろ」
紗代は深呼吸をして、野菜を並べていた旅人に近づいた。 「あの……この干し果物、少しだけ……安くしていただけませんか?」
旅人は眉をひそめ、しばし紗代を見つめた。 「若いのに、随分と真剣だな。……いいだろう、少しだけまけてやる」
紗代は驚いて目を見開いた。 「……ありがとうございます!」
手にした果物はほんの少しの差だったが、紗代にとっては大きな一歩だった。
アレクセイはその様子を見て、静かにうなずいた。 「ぎこちないが、悪くない。少しずつ慣れていけばいい」
紗代は果物を抱きしめるように持ちながら、胸の奥で思った。
夜、焚き火の炎が揺れていた。 紗代が交渉で手に入れた干し果物を差し出すと、ぽぷらんが大げさに両手を広げた。 「おお!これぞ商人の成果!紗代殿、立派だ!」
バンデは果物を一口で頬張り、豪快に笑う。 「うまい!だが少ないな!次はもっとまけてもらえ!」
アリシアは苦笑しながら果物をかじり、穏やかに言った。 「交渉は品物の価値を見極めること。次は私も手伝ってあげるわ」
エマは静かに果物を味わい、ぽつりとつぶやいた。 「……悪くない」
紗代は顔を赤らめながらも笑った。 「まだまだですけど……次はもっと頑張ります!」
焚き火の周りに笑い声が広がり、緊張に包まれていた旅が少しだけ温かくなった。
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