最高火力チームの海外任務旅行

いちのさつき

プロローグ 高校生になる春前

 三月下旬頃。桜が咲き始める季節。俺達は毎年恒例の実力テストで呼び出される。今後のダンジョン攻略に活かして欲しいと思いがあると聞く。何度も受けているので、俺達にとって体力テストと変わらない。


「お願いします」


松戸市にある魔法魔術の白い訓練場に入り、灰色の作業服を着た男から指示を受ける。


「よし。このミスリル製の玉に、全力の魔法魔術をぶつけなさい」


 ミスリルというダンジョンで採れる青色の、地球上もっとも頑丈な貴金属を見る。狙いを定めながら、右手で前をかざす。着火から火力調整までの術式を一気に組み立て、赤い魔法陣が出来上がる。


「ファイアージャベリン」


 上級者向けの火属性の魔術名のひとつを唱えた。一メートルぐらいの炎の弾は目で捉えられない程早く、ミスリル製の球に激突する。白い閃光と同時に轟音が響く。衝撃波も発生し、スタッフ三人が吹き飛ばされるばかりか、特殊なコンクリート壁にヒビが入っている。


「まじか」


 煙が晴れると、フィールドにミスリルの破片が散らばっていた。中心で燃え上がる火は天井まで届き、火災報知器が感知している。結果、警報が鳴り始めた。


「くそ! サポーターのリーダーならまだ大丈夫だろうと思ったら!」


 阿鼻叫喚の混沌と化す。同時にスタッフの消火活動も開始する。俺も手伝おうかと思った矢先、仲間たちからの電話がスマホに来た。


「ああ。お前もミスリル製壊しちまったか。俺もだ」


 口角が緩やかに上がる。良いアイデアを思い付いたからだ。


「これからチームでダンジョン踏破の試験をするだろ?」


貴重なミスリルの採取と、ダンジョン踏破の試験を同時にこなせるもの。まさに一石二鳥となるような場所を俺達は知っている。


「俺達が行くダンジョン、決まったようなものだ」


 天井からのシャワーで濡れても気にせず、出口に向かって歩く。


「上野ダンジョンにする。あそこの最深部にミスリルドラゴンがいたはずだからな」


 テンションが上がり始めている仲間の声がうるさい。少ししかめ面になりながら、俺はこれからのことを伝える。


「とりあえず俺がスタッフに話を通す」


 俺の仲間たちは強い。しかし、何かしらトラブルを起こす可能性もある。そのため、リーダーとして釘をさしておく。


「あとは変なことをするな。マジで」


 スマホの電話を切り、灰色の作業服を着ているスタッフに近付く。そのスタッフは二十代前半のようで、先程の電話を聞いたからか、顔色が悪い。


「上野ダンジョンの最深部に行くってマジで!?」


 上野ダンジョンは高難易度に分類され、最深部に生息するミスリルドラゴンはベテランでも苦労する。下手したら死ぬケースがあるため、スタッフが心配になるのも無理はない。


「ええ。お詫びの件もありますし。ダンジョン踏破の試験も、ある程度の難易度がないとだめでしょうから」


 出入口のボタンを押し、スライド式のドアが自動的に開く。無機質な廊下を渡り、仲間達と合流しに行く。


「はあ」


途中でため息を吐いてしまう。俺はともかく、仲間達の本気が出せる機会が減ってしまった。それをどうにかしてあげようと思っても、厳しいだろう。数年の青春を楽しむか。未来を模索するか。何かを選ぶ必要があるのかもしれない。


「何とかなるか」


 目の前に青春がある楽しみがあるため、思考が自然と止まってしまう。探索者としてではなく、学生として、楽しめればいいかと思った。ちょっと先の未来なんて、その時に考えればいい。どれだけ強くとも、俺達は子供でしかない。また悩むかもしれないが、どうとでもなると思いたい。

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