お酒の席での話し合い
大悪魔を倒してから聖王国では大規模なお祝いが開催された。
それは先の腐敗した神官達の排除と、裏社会のゴロツキを退治したことで、治安の改善と周辺の街や村に正しいお布施の料金で病気を診たり、怪我を治したりと正常運転になったことで、聖王国の教皇や聖女への感謝の熱狂がすごい事になっていた。そこに伝説上の世界を滅ぼしかねない程の大悪魔を倒したとなればお祭り騒ぎになるのも無理はないのである。
幸いにも、裏稼業のゴロツキや破壊僧になった者から回収した金品で教会は潤ったので、国を挙げてのお祭り騒ぎになったのである。
人々は口を揃えていう。
・現行の聖王国の癒しと不正を許さない聖女であるヒジリを讃える!
・本人は否定しているが大悪魔を倒したパーティリーダーである大聖女シオン!(なんでだよ!)
・十年もの間、エルフ総出で大悪魔を封じてくれていた里の姫が、同胞を救うために立ち上がった姫戦士フレイ!
・パーティ唯一の男性で王子である騎士王子ジーク!
街中で乾杯の音頭が響き渡った。
一部のエルフの里の者はしばらくの間は、近くの村でやっかいになるか、王都の大聖堂まで来て、保護を受けていた。
「まさか、10年の歳月でここまで変わろうとは、思いもしなかったよ」
「なぁに、ここまで変わったのは数ヶ月前のことじゃ。それまではワシが不甲斐ないばかりに、国は酷い有り様じゃったわい」
今のムキムキの教皇様をみて族長は苦笑いを浮かべた。
「それはあのシオンと呼ばれる少女のおかげですかな?」
あの大悪魔と同等の魔力を秘めた規格外の少女を思い出す。
「そうじゃ。あの娘には感謝してもしきれんわい」
普段は酒を絶っている教皇も、秘蔵のワインを煽った。
族長も一緒に飲み干すと、美味い酒に顔が緩んだ。
「美味いですな」
「そう言ってもらうと嬉しいぞぃ。ただ、若き者達の台頭に感謝じゃよ」
「いつの間にか成長しているのですから不思議な感じがしますな」
「子供の成長は早いものじゃて。まったくのぅ」
それから少し真面目な顔になった。
「エルフの里の復興に協力して頂き感謝いたします」
「いやいや、前にも言ったが、世界のために全ての里のエルフを動員して大悪魔を封じてくれていたんじゃ。感謝するのはワシらの方じゃよ。本当にありがとうございますじゃ」
エルフは掟を尊重する。
しかし、これはエルフにとっても転換期に来ているのかも知れない。
「教皇殿、忙しい所申し訳ないのだが、一度エルフの里に来て頂けぬか?」
「それはワシとしても激戦区になったエルフの里を見させてもらえるとありがたいのじゃが、人間が足を踏み入れても良いのかのぅ?」
「それこそ今更ですな。実は少し前に里の方で気になる事ができましてな。何故だか森全体が聖域化されて、魔物がいなくなっていると報告を受けたのです。どうしてそうなったのか、意見を聞きたいと思いましてな」
「あ、あ~それなんじゃが・・・実はのぅ?これはここだけの話として秘密にして欲しいのじゃが・・・」
教皇はシオンの、あ~ナムナムで女神像が光る能力を女神様から貰ったことを伝えた。
「なんと女神様からそんな能力を授けられたのですか!?」
族長が驚くのも無理はない。女神様は神託を授ける事があっても、能力を与える事など今までなかったのだから。
「最初はただ御神体の女神像が光るだけじゃと思っておったのじゃが、シオンが聖なる魔力を感じると言って、試行錯誤しておると、水魔法を女神像の形にして祈ると、聖水になることを見つけたのじゃ」
「まさか、それが事実であれば、大量の聖水を作れる事に───なるほど。大悪魔の決戦の時でも大いに役立った訳ですな」
「うむ、ヒジリからそう聞いておる。大悪魔を聖水の海に閉じ込め、溺れさせたとな」
ワッハハハハと教皇は笑いながら言った。
「それは痛快でしたな。私でも笑ってしまいますよ」
「それでシオンのお嬢ちゃんがのぅ、森中に聖水の雨を降らせたそうなのじゃ。聖域化の原因はそれだと思うぞい」
「せ、聖水の雨ですか・・・いや、それならば里の大樹が聖水の雨を吸収し、清浄な力を放出したと考えるなら納得がいくが。まさか『聖樹』になったのか?」
族長はブツブツと考えながら独り言を呟いた。
「教会でも聖域化の話は聞いております。神の国など聖域化された地域では害意を持ったものは入ることができなくなると。もしかしたら森に迷いの魔法を張らなくても良くなったかも知れませんな」
「確かに。これは検証が必要です。本当になんて規格外なお嬢さんなのだ」
そう驚く族長も顔も笑いで笑顔になっていた。
「そうじゃろう。面白い子じゃて。しかし、国元の実家では家族仲は良くなかったようじゃ。どんなに強くともまだ子供じゃということは憶えておいて欲しい。せめてここにいる間は年相応の扱いをして欲しいのじゃよ」
「それは・・・わかりました」
族長も教皇の言わんとしている意味を感じ取り素直に頷くのだった。
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