教皇
ヒジリは早足で教皇の寝室の階段を登った。
大聖堂の奥にある特別な階段で、普段は司祭やシスターしか登れない階段である。
「急いでいるけど大丈夫なの?」
「はぁはぁ、枢機卿達の邪魔が入るかも知れませんので念の為に急いでいます」
なるほど。
先日、緊急で出発した馬車の護衛が、枢機卿の暗殺者達だった訳だしね。
でも、アイツらはヒジリちゃんが死んだと思っているみたいだけど、少し違和感があるわね。
シオンはその違和感を後で聞こうと、今は教皇の元へ急いだ。
「着きました。ここが教皇様の休まれている寝室です」
階段を登り切ると、目の前には丈夫そうな扉があった。
「見張りっていうか、護衛とかいないの?」
「はい、ここは少し特別でして扉に魔力を込めると開く仕組みなのです」
「ハイテクだなぁ~」
話を聞くと、あらかじめ登録した人物の魔力しか反応せず、後から誰の魔力で開いたのかわかる仕組みとのこと。
現在で言うところの、指紋や顔認証に似ているね。
そうしてヒジリちゃんは扉を開き中に入った。中はそれなりに広かったが、机にテーブル、後は図書館?みたいなほど本棚に本が多く収められており、部屋の窓の近くにあるベットに老人が寝ていた。
「・・・・誰じゃ?」
しんどそうに起き上がる老人にヒジリが近寄った。
「教皇様、聖女ヒジリです。ただいま戻りました」
!?
「お、おお、ヒジリよ。良く無事であった。枢機卿から賊に襲われて死んだと聞かされた時は、心臓が止まるかと思ったぞ」
「まだ死なないでください。それより、信頼できる仲間に出会ったおかげで九死に一生を得ました」
ヒジリは今までの経緯を話した。
「なるほどのぅ~。先日の女神像が輝いた時は、ワシは希望の光に感じたのじゃが、まさかそれがヒジリの命を狙われるきっかけになろうとは思わんだ」
教皇は見るからに顔色が悪かった。
「その女神像と女神様と対話したお方が、こちらにいらっしゃるシオンお姉様なのです」
なぜかヒジリは自慢げに紹介した。
「ヒジリを救って頂き誠にありがとうございました。ヒジリは私の孫の様な存在でしてな。ヒジリを引き取って聖女として修行させる時に私が面倒を見ましてな。なかなか、破天荒な性格の娘で難儀いたしましたが、しかし心に、悪を許さぬ正義の意志を持っておりました」
「も、もう止めてよお爺ちゃん!」
恥ずかしそうに叫ぶヒジリにシオンは微笑ましい姿を見た。
この2人は本当に血の繋がりはなくても家族として認め合っているんだなと思った」
「ゴホゴホッ」
教皇様が咽せたのでヒジリが水を飲ませた。
「大丈夫?」
「はぁはぁ、すまんのぅ。ワシがもう少し動けたのなら・・」
教皇は自分の体調に申し訳なさそうにした。
!?
シオンはまさかねと、秘密にしていた『鑑定』を教皇に行った。
毒物反応・・・・なし
この表示にホッとしたが、別の表示に目を開いた。
軽度の【壊血病】
「な、なんですって!?」
突然声を上げたシオンに仲間達の注目が集まる。
「どうしたんだシオン?」
「教皇様の病気が判明いたしました。多分、行為的に病気にさせられた可能性があります」
!?
「えっ!?どういう事ですか!?」
「他の人には秘密にして欲しいんだけど私は『鑑定』の魔法が使えるの」
「あ、あの勇者様にしか使えないっていう伝説の魔法じゃないですか!?」
これにはエルフのレオナも驚いた。
「失礼かと思ったけど、教皇様に毒物でも盛られていないかと思ってね。結果は毒物はなし。少し安心したんだけど、病名が【壊血病】って出たのよ」
「病名までわかるなんてすごいな!」
「私も人には初めてだったから驚いているの。でも本当に驚いたのはこの病気よ。通常なら船乗りの間で流行る病気なの」
そこで何かを思い出したかの様な様子でレオナが口を挟んだ。
「もしかして船乗りがかかったらほぼ助からない疫病じゃなかった?病名は違っていたと思うけど」
「地域や国によって病名が変わった呼び方になっているかも知れないけど、同じ病気よ。ビタミンCって栄養分が不足するとなる病気で、新鮮な野菜とか食べておけば問題ないのだけれど・・・」
そこでヒジリと教皇は思い至った。
「教皇様が体調を崩された時、教会のシェフが栄養の高い『穀物粥』の様なものを作ってくれて、数ヶ月はそれしか口にしておりませんでした」
「毒物混入は1番警戒しておったからのぅ。毒味役や毒物検査はしっかりとしておったのじゃが・・・」
「まさか、特定の栄養のない食べ物をずっと食べていたから病が進行したと?」
「わかりやすく言えば、数ヶ月間もお肉のみ食べていたら体調も悪くなるでしょ?って感じだね」
なるほど。
シオンはマジックバックに入っていたリンゴや蜂蜜など出して教皇に食べるように言った。
「飲み水に果実水としてレモンと蜂蜜を混ぜました。リンゴも今の病に効果がある果物です。リンゴを食べながら果実水を飲んで下さい」
シオンは毒味をしようとしたが教皇がそれを止めた。
「いや、毒味はよい。君達は信用できると感じたのでな。そのまま頂こう」
教皇はそれを食べると落ち着いた。
「ありがとう。少し良くなったのを感じるよ」
「それはよかったです。手持ちのリンゴと蜂蜜、レモンなどビタミンCの栄養のある食べ物をここに置いておきます」
ベットの横に引き出しになっている場所があったので、ひとまず隠しておいた。本当は新鮮な野菜を食べて欲しいけど毒殺の可能性があるから難しいよね。
「感謝する。それで枢機卿達の悪事の証拠の話できたのじゃったな?」
シオン達はようやく本題に入るのであった。
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