タイムリープした元プロゲーマーの俺、人生やり直しでヒロインと親友になろうとした結果、幼馴染みモブ男からヒロインの心を奪ってしまった件~公爵君のラブコメ~
第13話 モブ幼馴染みが横槍入れても関係なし。VTuberヒロインは湊の合言葉にときめく件
第13話 モブ幼馴染みが横槍入れても関係なし。VTuberヒロインは湊の合言葉にときめく件
田島が提案した行き先は、郊外にある大型ショッピングモールだった。移動はバスである。
ちょうど窓際の席が空いたのでそこへ座る。すると、すぐさま隣に航平が座ってきた。
暦深たちが別の席へ移動したのを確認した航平は、湊に小声で、しかしやや強い口調で尋ねてきた。
「お前、プロゲーマーだったってことは、金があるんだろ? まさかその金で、暦深たちをたぶらかそうってんじゃないだろうな?」
「たぶらかす? 俺が?」
「そんなことしたら、幼馴染みとして許さねえぞ」
「金は確かに人より持ってる。けど、たぶらかすために使うなんてことはしない。むしろ、信頼できる親友と共同管理できるようになるまで、あの金はできる限り使わないつもりだ」
「へぇ。ご立派なこった。ちなみに聞くが、俺に託すつもりはないってことか? お前の辛い過去話を聞いてやった俺でも?」
湊は怪訝に眉をひそめながら頷く。航平は鼻で笑った。
「お前の言う『親友』のハードルって高いのな。いつもそればっかだから、もっと条件ユルユルなのかと思ってた」
「何が言いたいんだ?」
「そんなことじゃ、お前に一生親友なんてできないぞってことだ。俺はそう思うけどね」
言いたいことだけ言って、航平は席を立った。揺れるバスの中、暦深たちの座る席まで移動する。
どうやら、湊に釘を刺すためだけに隣に座ったようだ。
「あ。こーへーくん、こっち座る? 天宮っちの隣空いたなら、あたしが座ってもいい?」
「は? いや、そうじゃねえし。お前たちが寂しくないかなあって思っただけで」
「そう? 何か最近のこーへーくん、やたらあたしたちに構いたがりじゃない?」
「そんなことない!」
憤然と言って、航平は戻ってきた。湊の隣にどかっと座り、口をへの字に曲げて黙り込む。
不機嫌になった航平を余所に、湊は窓の外を見る。窓ガラスに映った自分の顔は物憂げだった。
湊の基準では一生親友はできない――面と向かってそう言われたことが、思っていた以上にメンタルに響いていた。
――その後、しばらくして大型ショッピングモールへと到着する。
バスを降りた田島は、まるで子どものように目を輝かせながら湊たちを促した。
「こっちだぜ、こっち!」
「イベントホール……?」
てっきり併設された映画館かカラオケに向かうものだとばかり思っていた湊は、館内地図を見て首を傾げた。他のメンバーも同様である。
唯一、福音だけが「もしかして……!」と顔を輝かせていた。
田島の先導でイベントホールへ向かうと、そこには巨大なブースが出来上がっていた。
VR体験フロア、とある。
どうやら、最新のVRシューティングゲームをプレイできるコーナーのようだ。
湊はパンフレットを手にした。
「『クライシス・ハングVR』。へえ。ここの会社、VRにも手を出したのか」
「クラハンは名作ですよね。元々、アクション重視のプレイングが求められるので、VRとは相性が良いんだと思います!」
いつの間にか隣で同じパンフレットを開いていた福音が上機嫌に言った。
湊は目を瞬かせた。
「詳しいな」
「え!? あ、いえ。その。ごめんなさい」
ススス……とパンフレットで顔を隠しながら下がる福音。恥ずかしがることなんてないのになと湊は思った。
クライシス・ハングは3対3のチームバトルFPSだ。福音の言うとおり、一人称視点で縦横無尽にフィールドを駆け回る爽快感が売りのひとつである。
(そういえば今度、初の世界大会が行われるって話だったな。それに合わせてのキャンペーンってわけか)
「あの」
再び福音が近づいてきて、遠慮がちに尋ねた。
「天宮君は、クラハンの大会に出たことは」
「いや、ないな」
「あ。そう、なんですね……」
「ただ、作ってる会社に呼ばれてプレイデータのサンプル採取に協力したことはある。今度の世界大会のレギュレーションやギミック調整に使われたって聞いた。個人的には感慨深いな」
「そう、なんです、か!?」
驚愕した様子の福音に頷く。湊にしてみれば、プロとしてさして珍しくない業務内容だ。
なおも話を聞きたそうな福音に、航平が声をかけた。
「おい、予約が取れたってよ。田島がチーム分けするから、福音も来いよ」
「あ、うん。わかりました」
ちらりと福音がこちらを振り向いてから、航平たちが待つ場所へ小走りで向かう。湊も後を追った。
「じゃーん! こういうこともあろうかと、事前に組み合わせのクジを作ってきたのだ!」
田島が得意気に6本の割り箸を取り出した。
「……? クライシス・ハングは3対3のチーム戦だぞ。男子3人、女子3人でちょうど良くないか?」
「バッカ、天宮。それじゃわざわざ男女同数にした意味がないだろ。ここは男女ペアで参加するんだよ。CPU相手だから、2人でも問題ないってさ」
田島に叱られ、「なるほど、そういうものか」と湊は頷いた。
くじ引きの結果、組み合わせは次のようになった。
トップバッターは田島・暦深ペア。
次が航平・福音ペア。
最後が湊・鋭理ペアである。
「よろしくな。冴島」
「……これは身体を動かすゲームなのか?」
「元のゲームはそうだな。体験ブースでどこまで動きを再現できるかはわからないが」
「そうか。ならば楽しみだ」
いつもクールな表情の鋭理が、少しだけ口元を緩めた。本当に身体を動かすのが好きなんだなと湊は思った。
「よっしゃ。まずはオレらからだな。よろしく、暦深ちゃん!」
「よーし! やっちゃうよー!」
田島と暦深が張り切ってブースの中へと入っていく。
彼らの後ろ姿を見ながら、航平が「あいつ、どさくさに紛れて暦深を名前呼びしやがって」と呟いた。
プレイ画面は、ブースの外に設置してあるモニターからも見ることができる。
映されたフィールド『廃工場』を見て、湊は即座に「これはだいぶ攻めた難易度だな」と思った。
遮蔽物が多く、高低差も激しい。ルートを頭に入れておかないと、すぐに迷いそうだ。
フィールド選択はプレイヤーの選択らしいから、おおかた、良いところを見せようとした田島が背伸びしたのだろう。
敵はCPU2体。正確な射撃や機敏な動きから、敵レベルもわざわざ高めを選んで設定したらしい。
慣れないゲームで高難易度フィールドに高レベルCPU。さすがに無謀だった。
案の定、田島・暦深ペアは激しく動き回るだけであっさりとやられてしまった。
「あー、くやしいー!」
笑いながら悔しさを口にする暦深。プレイのために身につけていた専用のセンサージャケットを勢いよく脱ぐ。
彼女は額や胸元にうっすらと汗をかいていた。
「ホント悔しい。けど面白かった! ありがとね、田島くん!」
「お、おう。……うへへ」
「……? どしたの」
首を傾げる暦深。彼女の肩を掴み、航平が目を細める。
「気をつけろよ暦深。こいつ、お前の胸を見て鼻の下伸ばしてんだぜ」
「ご、誤解だって!」
「あはは。お目汚し失礼しました」
「いえ! 大変結構な光景でした!」
田島は正直に言った。
(ああいうことが嫌味なく聞こえるのは才能だよな。やはり田島、才能がある)
ひとり何度も頷く湊を余所に、航平がVR機器に手を伸ばす。
「よし。次は俺たちだな。いくぞ、福音」
「あ、あ。ちょっと待って。緊張して上手く着けられない……」
「ったく。相変わらずどんくさいなあ。早い来いよ。俺たちで格の違いをみせてやる。だからお前も、余計なことはするなよ。俺に任せておけばいいから」
そう言って、航平はさっさとブースの中に入っていく。
もたもたしている福音に、湊は近づいた。装着を手伝う。小柄なので位置合わせに苦労しているようだ。
「よし、できた」
「あ、ありがとうございます」
「グットラックハブファン」
福音が目を見開く。それから遠慮がちに応える。
「じ、じーえる、えいちえふ」
「よし。相沢をサポートしてやってくれ」
湊が言うと、福音はパッと表情を明るくした。そして、小さく頷いてブースへと走って行った。
暦深がそばに来て尋ねる。
「ねえ、天宮っち。さっきのはどういう意味?」
「Good Luck, Have Fun。幸運を祈る、楽しんでこいって意味だ。eスポーツじゃ試合開始前の定番挨拶だな」
「じゃあ、じーえる何とかってのは?」
「GLHFはその略語。この返しができるってことは、千代田もeスポーツを囓ってるのかもな。これは期待できそうだ」
「へぇ……。何かふたりだけの暗号みたい」
暦深が浮かべる表情に気付かないまま、湊はワクワクしながらモニターを見つめた。
しかし。
結果は湊の予想を裏切る惨敗だった。
その原因は――航平である。
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