第3話 最悪の結果
今日は久しぶりに学校に行く足取りが重かった。
結局用事があると嘘をついたが、今日直接空いてる日なんて聞かれたら困る。嘘をつくのだって限りがある。
溜息を吐きながら教室に入ると、いつもと違う異様な空気が漂っていた。カースト上位が喧嘩でもしたのだろうか。
まあ私には関係ないと席に座り、いつものように時間が流れていくのを感じた。
唯一の懸念点であった天乃さんも、人に囲まれていれば私と話すことなどできない。
このまま平穏に過ぎていくことを願うばかりだ。
──そうフラグを立ててしまったせいか、昼休みに問題が起こった。
昨日天乃さんに嫌われたクズ男子が、天乃さんがいなくなった瞬間私に嫌そうな顔を浮かべて近づいてきた。
「おい芋女、優華ちゃんに俺のことは許したって伝えとけ」
ゴミと会話することはないので、私は黙々と昼食の準備を進めた。
「おい! 聞いてんのか!」
うるさいなとヘッドホンをしようと手に取ると、その手を強く握られた。
「触るな! 穢れる!」
咄嗟にその手を思いっきり振り解く。
「気持ち悪いのはお前の方だろ! ふざけんなよ! せっかくお前みたいな芋に優しくしてやってんのに! 大人しく俺の言うこと聞いとけばいいんだよ! お前のせいで優華ちゃんにフラれたらどうするんだよ!」
私を殴ろうと胸ぐらを掴み、拳を振りかぶったその瞬間、場にそぐわない上機嫌な声が教室に響いた。
「花恋〜、優しいお姉様がお弁当持ってきてあげたよ〜」
サングラスをしたお姉はお弁当を高々と上げたまま一時停止した後、すぐにスマホを取り出して写真を撮った。
パシャっという音の後、私を乱雑に離したクズにお姉は近づいた。
「妹に何しようとしたの?」
「別に」
「別にで女の子の胸ぐら掴んで拳を振りかざす?」
ああ、やばいこれ。お姉キレてる。
「お姉! ちょっとこっちきて!」
「花恋、後にしてくれる?」
「いいから早く!」
力づくでお姉を引っ張り、あまり人気のない奥の廊下まで連れていった。
「何で止めるの」
「当たり前でしょ! 先生来たら面倒な事になるじゃん! そもそも何でここにいるの! 大学は⁉︎」
「今日は全休。例の天乃ちゃんを一目見ようと思ってね。だからこのお弁当はただの口実だよ」
「だから天乃さんは──」
「私?」
後ろから声がして恐る恐る振り返ると、天乃さんが立っていた。
なぜだ! この先にある階段は職員室とかに用がない限り通らないはずなのに!
「あ、花恋ちゃん。聞きたいことがあったんだけれど、お取り込み中だよね」
「君が例の天乃ちゃん? 確かに可愛いね。お姉ちゃんは花恋と違って見る目があるから分かるけど、天乃ちゃんは絶対良い子だよ!」
何が私と違ってだ。私だって見る目くらいある。
「お姉さんでしたか。初めまして、花恋さんの友人の天乃優華です」
私達は一体いつ友達になったのだろうか。
「花恋の姉の
「ちょっ、お姉!」
なんてことをしてくれたんだお姉! せっかく、せっかく断ったというのに! というかなんで私が用事あるって言って断ったの知ってるの⁉︎
「花恋ちゃん殴られそうになったの⁉︎」
「いや、別に」
「大丈夫? 怪我してない? ……もしかして滓君? だとしたら私のせいだ。ごめんなさい! 怪我していたらどうしよう。保健室行こう。私もついていくよ」
私のこの姿は嫌悪され、誰にも構われないように作り上げたのに、どうして彼女だけは私に構ってくるんだろう。やはり清潔感を捨てられなかったのが敗因か……。
「大丈夫ですから。怪我していないので放っといてください。私、触られるの苦手なので」
「あ、ごめんね。怪我していないようで良かった」
「それじゃあ、失礼します」
「あ、ちょっと待って! 週末の事だけど──」
「適当に決めといてください」
お姉のせいで、結局出かける羽目になってしまった。
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