違和感

 父さんの再婚話を聞いたあと、風呂に入った。

 湯船につかりながら、僕は遠い記憶の中にしかいない母さんのことを思い出していた。

 そこで、ふと、違和感に襲われた。

 毎日、父さんは長い時間、仏壇に手を合わせ、こまめに墓参りをしていた。

 親戚の伯父さんが見合い話を持って来たときも、すげなく断っていた。そのとき、僕を見ながら、「兄さん、僕は一生、再婚しないよ」と強い口調で言っていたのをよくおぼえている。

 そんな、おそらく、母さんを深く愛していた父さんが、よく考えを変えて、再婚する気になったものだ。

 時の流れというのは、残酷かつ優しいものなのだなと思ったが、心のどこかにもやもやが残った。

 また、義母になる人のなまえも気になった。いや、まさかな、そんなことはないと僕は頭を左右に振った。

 そのもやもやの正体は、どうにか無事に、第一志望の高校に受かり、及川家との食事会に出向いたときに判明した。

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