勇者が死んだあとの世界

近藤がく

第1話 王たち

勇者が死んだ


そのことを聞いたものたちは

誰もが悲しみ、誰もが今までの功績に感謝した


勇者がこの世に残したものは世界を数段便利にするものばかりだった

汽車という高速移動を可能にするもの

電気という夜になっても常に明かりを照らしてくれるもの

鉄砲という鉄の玉を飛ばし、殺傷するもの

馬や松明、弓を使ってた我らからすると大幅なグレードアップ

他にも勇者は功績を沢山残してくれた


だが一番の功績は魔王討伐だろう。


70年前、突如南国の目の前に半径10キロは超えるであろう円が表れ、その数日後に飛行物体が数百と表れた

得体の知れないものに市民は恐怖し、南国の王は立ち向かわんと軍を配置した


その状態が数日と続いたのちに一隻

今までの飛行物体が赤子のように見えるサイズの戦艦が姿を表した

ついに来たかと、誰もが思いを寄せる

南国軍の緊張感がピークに達しようとしたとき戦艦から2つの光柱が照らされる

そして各光柱から人らしき者が舞い降りてくる

中央の光柱からは1人、黒色の鎧に身を包み大剣を肩にかけ降りてくる大柄な者

となりの光柱からは2人、黒色の鎧に前腕から金に輝く鎧をつけている大剣の者より大柄な者と白色の鎧に身を包んだ者

計3名が姿を現した


その中でも大剣の者はただらなる気配を放ち南国の王がコスプレに見えるほどの圧倒的なオーラと立たずまい、今すぐに逃げ出したいと思わせるほどの威圧感を放っており、初めてその姿を見る者たちは恐怖から口も体も動かなかったという 

その話を聞いた誰かが悪魔の王、魔王と呼び始めたちまち魔王という名が定着した


魔王降臨後、約1分間は誰もが硬直し動けなかった

そんな中、王の一言により軍は動き出す


「かかれ!!!!」


盾を持ち突進するもの、馬に乗り突撃するもの、弓を引くもの計3000の兵が戦闘を開始した

いや、戦闘といえるものは行われなかった


全軍壊滅


南国軍が突撃を開始した直後戦艦から放たれたレザー砲により軍諸共南国崩壊、地面がえぐれ、南国があった形跡すら残さぬ圧倒的火力で破壊

とうてい弓などで勝てる相手ではなかった


魔王が南国破壊させた。圧倒的な力を持って。

そう世界に報道されるのに時間は要さなかった


そこに突如現れたのが勇者 ショウゴ

仲間を引き連れ魔王に立ち向かった


魔王の部下を仲間達が抑え

勇者ショウゴが聖剣アスタルトを手に魔王を討伐した


そこからは凄かった

勇者 ショウゴが南国を復興し新たな技術を開発、その技術を惜しみなく他国に伝授し世界のレベルがどんどん上がって行った

そして、数年後には勇者 ショウゴが南国の王となり、今まで拮抗していた国々が南国を頂点とし運営していく方針に変わっていった


勇者 ショウゴが世界を幸せに、世界を笑顔にしたと伝えられている


そう、伝えられている。市民には。


勇者死後、7日後 中央国会議室に東国、西国、北国の王が集っていた

中央国は中立の国。

王は存在せず民事によって運営されており、他国の王達が集まり会議される場としても利用されている


会議室には、ダイニングテーブルがありその中央に陣取る白髪で威圧的な人物が最初に口を開く


「まずは、情報共有からだ。東王、西王、知ってることを話せ」


「では私から。我々西国は勇者様死後、聖剣アスタルトのありかと超電脳の伝授について調べ、聖剣アスタルトは南国の地下に封印されており超電脳はアストくんに伝授されているとの情報を入手しました。」


白髪の問いに最初に答えたのは細身で非力そうな見た目の西王

名をルベール・シュタインという


「超電脳はワシら東も調べた、超電脳は確かにアストに伝授されておったわ、聖剣は誰に伝授されておるかわからん」


次に答えたのはこの中で最年長の東王

名をバッグ・フォース


そして白髪で威圧的な人物が北王 

名をアレク・ヴァリュアブル


ここにいる北、東王は魔王の姿を見たことがある世代だ

勇者ショウゴとほぼ同年代で当時のことを事細かく覚えている

その中でも大事な情報が勇者の能力


勇者 ショウゴは、自分に2つの能力が宿っていると魔王討伐後に明かしてくれた。


1つ、超電脳


やるべき事や、物の作り方、国の動かし方など全てにおいてサポートしてくれる存在

勇者以外はその姿も声も聞いたことがないが確かに勇者の行動には無駄がなく完璧だったのでサポートされていたと考えられる


2つ、聖剣


聖剣アスタルトの真の力を発揮でき、一太刀で森を切断する威力を発揮できるようになる

聖剣の能力を持たないものは聖剣アスタルトに触れることが出来なった


2つの能力を使って勇者は魔王討伐を成功させた


「能力を伝授できる可能性があるなんて聞いた時はビックリしたが死後に調べるとその真実性が増すから心臓が持たんかったわい」


「勇者様も死ぬ間際に超電脳に伝えられたなんて言ってましたからねぇ、我々が知るよしもありませんよ」


「その伝授方法は我々、北国が調べてきた。勇者は老衰にも関わらず、死体には心臓と脳がないことが判明した。あの方によれば保存できる技術があるらしいが、今の我々にはない。可能性といて高いのは脳と心臓を伝授者に食べさせるというものだ」


勇者の死因は老衰 齢88歳まで国の運営をし、健やかに旅立った


「....それは本当なのか?脳と心臓を食べると?食べるところを見たということか?」


「見てはない。ただ、勇者死後アストが誰も国王室に立ち入れさせなかったと報告を受けた息子娘達も含めだ。アストの様子は深刻で虚ろになりながら数時間後に出てきたと、その際に手と口に血らしきものが付いていたと言うものもな」


「わしゃぁ、あいつが食べるとは思えんな。あいつをずっと見てきたから言えるが誰よりも勇者のことを思っておったぞ」


勇者の息子娘達は国の参謀として勇者に仕えており磐石布陣な国運営だったと言えよう

その中でも勇者の息子、長男アストは突出した頭脳の持ち主であり次期国王として多くの期待を背負って来た

勇者への愛も敬意も高かった彼が脳と心臓を食べるのかという疑問を東王は強く感じた


「私もアストくんは食べないと思いますが、その可能性での話をしていくのでしたら脳”と”心臓でしょうか?それとも脳”か”心臓でしょうか」


西王が警戒しているのは伝授者が二人いるのではないかという可能性

脳を食べる者、心臓を食べる者で2人いたら警戒する者を増やさなければならない

超電脳は話す際独り言を言っているように見えるので確認しやすいが聖剣のほうは外観的見た目に変化はなく誰も伝授について確認できなかった

超電脳と聖剣を持つ者がいるのか、超電脳、聖剣は別々の人間に伝授されたのか不明なままでは行動に移せない


「我々が考えるに脳と心臓だ。死後当日アストが命令を下してから誰も国王室に立ち入った記録はない、次の日には葬式だ。誰にも見られずにアスト以外が食べることはできないだろう」


「ではアストくんにのみ伝授されているという前提で動きましょうか、聖剣アスタルトは警戒しなければいけませんが出されたら負けですしね」


「具体的な作戦はどうするんじゃ、すぐ行動に移さないと間に合わなくなるぞい」


「超電脳の伝授があるなら話は別だ。時間をかけてもいい、ただ血縁者のみに伝授されるのであれば急がなければならない。10....いや5年だな」


「今から話し合いましょうか、今後のアストくん殺害計画について」


勇者ショウゴは世界を平和に世界を笑顔にさせたという話

これは表面的な結果に過ぎない

勇者ショウゴ含め世界の住人たちは知らされてない国王達のみ入手している

重大な情報

それは、勇者ショウゴは女神に意図的に送り込まれた兵器ということ


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