第4話 『魔女と熊と偉大なる主席』
昼下がりの松井家。譲二は中国から来た取引先の陳さんを自宅に招いていた。
「陳さん、ようこそ!日本の家庭料理を楽しんでください」
「ありがとうございます、松井さん。日本は観光客が多いと聞きましたが…
ここは静かですね」
譲二は苦笑。「まあ、京都とかはすごいですけどね…」
その瞬間、庭から「ガタガタッ!」と異様な音。窓の外には黒々とした巨大な影。
ガオオオオ!
「え…熊!?」譲二の声が裏返る。
「ク、クマですか!?」陳さんは顔を真っ青にして立ち上がる。
熊は窓を突き破り、リビングに乱入。譲二はスマホを取り出すが、
手が震えて画面が押せない。
(なんで携帯取り出す?
撮影か?
あっ警察へ連絡するのか…)
ありさは心の中で叫んだ。(なんでこんな時に!)
ありさは深呼吸。
(魔法は使わないって決めたけど…このままじゃ陳さんが日本嫌いになる!)
指先がうずく。呪文を唱える。「クマさん、落ち着いて…」
次の瞬間、熊の姿がふっと変わった。
――白黒の毛並み、丸い耳。パンダだ。
「パ、パンダ!?」譲二が絶叫。
陳さんは目を見開き、突然、床に額をつける最敬礼。「パンダ様…国家の象徴!」
ありさは思わず吹き出しそうになる。(なんで拝んでるの!?)
だが魔法は暴走し、パンダはさらに変化。黄色い毛、赤いシャツ、蜂蜜の壺を抱えた
――
「プーさん!?」譲二が絶句。
プーさんはのんびりした声で言った。「ハチミツ…どこ?」
陳さんはさらに深く頭を下げ、「ディズニーの神…!」と震える。
そして、魔法は止まらない。プーさんの姿が光に包まれ、次に現れたのは
――
金色の衣をまとい、巨大な椅子に座る「偉大なる〇キンペー主席」。
陳さんは絶叫しながら最敬礼。「主席様!世界の秩序をお守りください!」
ありさは頭を抱える。(やばい、完全に国際問題レベル…!)
その時、奥から母・夏木マリ演じる魔女が登場。
「ありさ、あんたまた魔法使ったわね?人間の前で!」
「だって熊よ!?放っておけないじゃない!」
母は冷笑。「熊くらいで騒ぐなんて、日本も観光地化しすぎね。
オーバーツーリズムで街がパンクしてるのに、家まで主席が来るなんて笑えるわ」
譲二が必死にフォロー。「いやー、陳さん、これが日本の…えっと…文化です!」
母は呪文を唱え、テレビにニュース速報が映る。
《政府発表:観光客急増により、日本全土に渡航禁止令を発令。
理由:魔法生物と主席の出没》
譲二は絶句。「え、そんなことできるの!?」
母は不敵に笑う。「できるわよ。観光客が減れば、静かになるでしょ?」
陳さんは顔を上げ、「日本…すごい国ですね」と呟きながら、心の中で
(次は絶対に同胞が経営するホテルに泊まろう)と決意していた。
主席は椅子に座りながら、「観光税を倍にしろ」と低く呟く。
「我が国はサンフランシスコ条約を否定する!」
「日本の熊をパンダにしてやる。そうすればパンダは駆逐できまい」
「沖縄も尖閣も樺太も北方領土もすべて中共の領土だ!」
母は肩をすくめ、「次は富士山を消してやろうかしら」と笑った。
――こうして、松井家の午後は、魔法と皮肉と渡航禁止で彩られたのであった。
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