遥風の吸血鬼

かいるん

【第一話】夏の遥風

ヒュー。

夏に遥風か吹いた。

太陽がジリジリと光り、蝉がなく。まさに夏だ。7月のカレンダーが揺れる。

そよ風によってー。

「遥ちゃん。はるちゃんってばぁー!!」

山田 遥は隣の席の大瀬 優花が話しかけているのに気づかず、窓の外をを見ていた。

「…。あっ大瀬さん。」

遥は眠たい目を擦りながら、ボソッと言う。

「熱中症?スポドリ買ってこようか?」

「あ、いいよ。」

自分は陰キャなのに話しかけてくる陽キャの優花にオドオドしながらも遥は言う。

「…。遥ちゃんは、前世に興味ある??」

「前世??」

遥は疑問に思いながら尋ねる。

「うん、前世。興味ないの??」

…前世??前世…。

ー前世??

「魔王よ死ね!!」

「勇者よ。お前は俺に勝てぬ!」

「…!!エクスカリバー!」

「ダークエジット!!」

お互いに相殺した。

「…!!効かない!??」

「消えなさい!魔王!」

「太陽の光により眠りなさい

ライトニングシャワーー!!」

「…。くっ。我もここまでか。」

「魔王様…。 」

部下共よ…。来世で会おう…。

「魔王…。グッ。」

勇者も倒れたかー。


「私は、前世勇者だったの。」

優花は言う。どう考えても冗談…。

は?と思いつつも何故だか少し怒りの湧く顔を思い出す。

「…。そうなんだ…。 」

何故か納得してしまった。信じられないはずなのに。

「…魔王はね、吸血鬼だったの。太陽の光を浴びたら死んじゃうから地中に住んでた。スズランの花が至るところにあって…。」

ー自分の話だった。

スズランは初恋の人の好きな花だった。だから飾ってた。

「…。好きだったのかもね。スズラン。私も好きだった。でも、故郷にはもう咲かない花だから。」

本当に前世が勇者だったように語る。

絶対嘘なのにー。

「…。そうだったんですね。あの、今死んで転生してるから優花さんなんですよね??魔王に負けたんですか??」

自分の話…。忘れたい話。

「うん。負けたっていうか、魔王は倒したの。お互いあと一発ってところで最後に私が全力で技を撃ったの。魔王はそれで倒れた。倒せた。でも私も倒れちゃった。それで、死んじゃった。」

…。前世の記憶の通りだった。遥は信じられない。でも、あの記憶を思い出した。さっき脳みそを駆け巡ってたあの記憶をー。

「…。ごめんね。嘘って思っていいよ。」

遥は咄嗟に首を振った。

「嘘なわけ…。脳裏に焼きついていますから。」

「なにそれー!!魔王ごっこ??魔王はそんな喋り方してなかったよ〜!!」

自分が魔王だって言ったら信じてもらえない。だから冗談でいった。

「魔王も覚えているのかもしれないですよ。もしかしたら。」

そよ風がまたカレンダーを揺らした。

ペラッ8月のページが開いた。

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