side りな子

「ごめんなさい。聞いてませんでした」

「はあ?本当に、何回も言わせないで欲しいんだけど」

「ごめんなさい」

「わかったわよ、これが最後よ」



 通りすぎて行く人達が、女の子と私を見ながらヒソヒソと何かを話し、駅に消えていく。

 たぶん……修羅場か親子喧嘩と思われている事だろう。



「さっきも言ったけど。空があなたみたいなおばさんを好きなわけないから。勘違いしないでよね!あなたが可哀想だから、空が傍にいてあげてるの、わかってる?」

「わかってます」

「だったら、これ以上。空を振り回さないで」

「わかりました」

「あなたと空の関係は、仕事だけなの。それ以上でもそれ以下でもないの」

「はい」

「わかってくれたなら、もういいわ」

「あの……」

「何?」

「深森君の事、どうかよろしくお願いします」

「な、何よ。気持ち悪いわね」

「ごめんなさい、でも、深森君は私の大事なマネージャーなので……。長い間一緒に仕事をしている私は、深森君に幸せになってもらいたいんです」

「あなたが心配しなくても、空は幸せになれるから」

「そうですよね、ごめんなさい」

「だから、謝らないでって言ってるでしょ。もう、いいわよ」

「あっ、待って……」



 女の子は、帰って行ってしまう。

 可愛らしい女の子だった。


 名前を聞くのを忘れてしまった。


 もしかすると、彼の元カノだったりするのだろうか?

 名前を聞いていたら、彼に確かめられたのに……。


 と彼女に言われて少し凹んでいた。

 自分がおばさんなのは、わかっているのに……。


 わかっているのに……。


 どうして、私、傷ついたんだろう。


 彼に好きだと言われて、少し、その気になった?

 彼に好きだと言われて、おばさんじゃなくなるとでも思った?


 そんなわけないのなんて、わかってるのに……。


 わかってるのに……。


 今になって、少しだけ友姫の話がわかった気がする。


 自分は、まだであると信じたい気持ち。

 おばさんって事を受け入れたくない気持ち。


 あっ!!醤油買って帰らなくちゃ。


 うつむいたら、地面に吸い込まれそうだから前を向く。


 前を向くとスーパーの看板が目に入る。


 落ち込んでなんていられない。


 私には、仕事がある。

 デザインを考える為にも、たくさんの商品に触れるのが一番の近道。


 買い物は、私の学びの場でもあるのだ。

 いろんな商品のパッケージを見ながら、今はどんなものが流行っているのかがよくわかる。


 さっきの出来事は忘れてしまおう。

 スーパーに入って、頭の中をリセットする。





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