side りな子

 二階に上がり、部屋に入ると泰作は眠っていた。

 苦しんだり、うなされている様子はないから、熱は上がりすぎていないのがわかる。


 風邪がうつるのも避けたかったけれど、泰作が「ゆき」などと、また呼んだらどうしようと不安になった私はすぐに部屋を出た。


 長く一緒にいると自分の気持ちがわからなくなるものね。


 隣の部屋を開けた。


 子供部屋にしようと思っていた部屋は、雲の柄の壁紙だ。


 あの頃は、子供が出来ないなんて夢にも思ってなかった。


 もっと早く、出来ない未来も考える方がよかったのよね。


 今さら、色々言っても遅いんだけど……。


 子供が産めない年齢を迎えても、子供が欲しかったと思う気持ちは消えない。


 たぶん、きっと。


 女で産まれた私は、一生背負っていく事になるのだろう。


 そう考えると私は泰作に、申し訳ない事をしている。


 だとしても、不倫する動機になるの?と思ったりはするけれど、いや動機にはなるのかも知れない。


 このまま、一緒に居てもいいのかな?


 ゆっくりと子供部屋の部屋を閉じる。


 私達の思い描いていた未来は、こんなんじゃなかったよね。


 きっと、もっと、幸せだったのかも知れない。


 今だって幸せ。


 でも、それ以上にもっと……。



ーーって、そんな事を今さら考えたって仕方ないこと。


 だけど、もしもって考えてしまう事はよくある。


 友姫と私と何が違うの?


 子供ってどうやってやってくるんだろう。


 結局は、私より友姫の方が優れていたって事なのかな?


 選ばれなかったって事は、そうだよね。


 これ以上、考えるのはやめよう。


 子供も出来なくて、泰作も奪われていたら……。


 私は、友姫より劣っているのを認めなくちゃならないじゃない。


 認めたくない。


 私達夫婦は、レスでもお互いを思っていると信じたい。



「お願い……」



 小さな声で呟いた。

 泰作に聞こえない事は、わかっているのに……。


 私は、一階に降りる。


 今日は、リビングで寝よう。


 仕事が遅くなった時の為に、リビングのソファーをベットになる仕様のものに変えた。


 引き出しがついていて、布団をしまっておけるのも便利だ。


 こんな時、この仕事をやっていてよかったと思った。


 この仕事をしていなければ、リビングで眠れるようにしていないのだから……。


 今日は、疲れちゃった。


 歯磨きして、ゆっくり休もう。




 これから先の事を今は考えたくなかった。

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