第5話 効果なし?
「……効果が、ない?」
「……はい、
「うん、最初ので十分に伝わったよ。ありがとう、
「……そ、そうですか。それなら、よかったです……」
それから、数時間後。
休憩用のお部屋にて、斎月さんお手製の美味しい賄いを嗜みつつそんなやり取りを交わす私達。本日はほうれん草とキノコの和風パスタ……はぁ、今日も最高です。
ですが、今は手放しで堪能しているわけにもいかなくて。と言うのも、今しがた斎月さんに伝えたようにコーヒーの――いえ、正確には萱草の効果が出ていないようでして。……いや、正直に言うとほっとしている部分もあります。優星さん自身のご希望とはいえ、やはり本当に忘れてしまってよいものかはまだ――
「……でも、だとしたら……うん、よほど強いんだろうね」
「……よほど、強い?」
「うん。確かに、
「……確かに」
すると、ややあって説明をする斎月さん。……なるほど、それは確かに。そう言えば、あの時も相当に時間がかかっていたと思いますし。……ええ、今でも胸が塞がります。あの時の斎月さんの表情を思うと、今でも――
「そういうわけで、もしもまた彼が来てくれたらそう伝えておいてほしい。その上でこれからも来てくれるならもちろん歓迎だし、ガッカリして来なくなってしまったらそれも仕方がない。言わずもがな、決めるのは彼――優星くん自身だからね」
「……分かりました、斎月さん。ですが、萱草の効果がどうであれ、きっと今後も継続し来店くださると思います。先ほどもお伝えしましたが、チョコシフォンもブレンドコーヒーも本当にお気に召していらしたので」
「……そっか、それなら嬉しいね」
その後、柔らかな微笑で要望を伝える斎月さん。ですが、その心配は杞憂でしょう。実際、とてもお気に召していらしたのは優星さんのお言葉からもご様子からも明らかですし。
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