第3話 FATE BEAT

その言葉が頭に落ちた瞬間、朔の胸の奥で何かがゆっくりと崩れた。

呆然と視線を落とす。


生き返った意味なんて──いったい、どこにある?


助かったはずの自分より、これから死ぬ響。

未来に手を伸ばせると思ったのに、そこに待っていたのは“3年後の喪失”だった。


「…3年後、響が…」


息が詰まる。

喉の奥が冷え、胸の内側が空洞になっていくようだった。

今こうして死神と話してることすら、手触りのない夢のようで。


生き返った理由も、望んだ願いも、すべて霧の中に溶けていく。


ただひとつ、冷えきった絶望だけが、朔の足元に沈んでいた。


「嘘だ」

【嘘じゃない。今から廊下を通る女】


廊下を、看護師に車椅子を押されながら移動する少女が通った。


【今の女は半年だ】


看護師の噂で聞いたことがある。

"まだあんな幼いのに、あと半年なんてね。"

似たような境遇ではっきりと覚えていた。


しかし──あのとき死神は言っていた。

“死に時を操れる”と。


「でも……助けられるんだよな、?」

わずかな希望にすがるように問いかける。


【無理だ。宿主だけだ】

淡々とした声が、まるで刃のように冷たく胸に刺さる。


「どうしたらいい、俺は……」


───3年後、何が原因で??

死神の発言で聞こえなかったところがあった。

あの濁った“???”の部分。


「原因は……!? なあ、響は何で死ぬんだよ!」


【分からない。俺は寿命しか見えない】


その言葉が決定的だった。

朔の中で、焦りと恐怖と怒りがごちゃ混ぜになり、胸の奥で暴れだす。


「じゃあ……お前はなんの為に……!ここにいるんだよ!!」


声が震え、叫びにも似た問いが飛び出す。

死神に対しての怒り。

そして、それ以上に──何もできない自分への怒り。


自分が生き返った意味が、ただの空白みたいに見える。

響を救えないのなら、なぜ自分だけが助かった?

その答えが、どこにも見つからない。


胸の内側で、絶望がゆっくりと膨らんでいった。


「でも、俺は寿命を喰える」


「寿命を、喰う、?」

息が引っかかるように、朔は声を震わせた。


【でも、宿主の指示でしか無理だ。つまり、お前の能力になるな】


「……でも、どう死ぬのか分からないんじゃ……」

───意味がない。


胸の奥で、焦りと不安が絡み合う。


【神ってのは俺だけじゃない。他にもいるし、お前みたいな立場の奴もいるってわけだ。

公言してないだけで、それなりにいる。

そういう奴の寿命は俺たちには見えない】


「何が言いたい、?」

頭の中で、可能性と絶望が渦巻く。


【つまり……見つければいい】


「何を?」

朔の視線は死神の目に絡め取られる。


【運命の神、ロキアを】

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