Curtain
kesuka_Yumeno
めぐる日々、訪れる朝
白っぽいカーテンが揺れる。二人で暮らすには、狭いはずの部屋はまだ、生活の影はなく、いつでも立ち去れるかのように閑散としていた。
「狭い部屋も広い部屋も落ちつかない」
小さく言うと、貴方は眉尻を下げ困ったように笑う。
何か、失敗しただろうか。そう思い、隣を見上げる。
ふっ、と息を吐いて私に伸びる腕に思わず目を瞑る。
予想に反し、貴方は私の頭をくしゃくしゃにする。
そのまま我儘を言っても、怒られない。
そんな日常が始まった。
まだ死んだように色のない部屋。
カーテン、布団、スマホ、それから貴方。
「お箸とスプーンも欲しいな」
床に座りながら、どうやってプリンを食べるか、二人で議論した。
そんな問題がひどく、おかしくて
「楽しいね」と言うと見たことない顔をされた。
それがまた、可笑しくて笑ってしまう。
◇ ◇ ◇
夜が来た。
眠るのが怖い。
いつ、また起こされるのかわからないから。
布団の中に頭まで潜り込んで眠る。誰も入ってこないように。
そのくせ、貴方の気配がないと安心できない。だから時々、そっとめくって辺りをうかがう。
珈琲の苦い香りがする。
右手をおずおず伸ばすと、指先に温かいものが触れる。
そこで、ようやく私は泥みたいに沈む。
貴方はそのまま、飲み干すまで私を見つめている。
気配でわかった。
◇ ◇ ◇
何事もなく、朝が訪れる。
正面に君の顔があって、不思議だなぁと眺めていた。
このまま、また目を閉じてしまおうか。
次に、瞼を持ちあげたら、卵とフライパン、それから菜箸と、あとは何があれば玉子焼きができるだろう。
そんな他愛ないことを、話したい。
毎日、そんな朝がくる夢を見ている。
Curtain
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