第3話 まずはレベルを上げなきゃ……(使命感

 ――レベル上げ。

 日本人の若年層ならほぼ常識レベルで説明不要の文言だ。

 敵を倒して経験値を稼いで強くなる事。 超分かりやすいネ!

 さてさて、具体的に何を倒せばレベルが上がるのか? 


 当然、生き物・・・の殺害だけどちょっと待ってほしい。 


 実をいうと殺生をしなくてもレベルは上がる。 

 このステータスシステム、ユーザーの行動をかなり細かくモニターしているらしく何かすればそれだけで経験値が入る仕組みらしい。 極論、息をするだけでも入る。


 ただ、それは数値にすると小数点の彼方のような低っい数値なので効率よく上げたいのなら能動的に動かないとダメなのよ。 噂によると『取得経験値倍』とか『~増加』みたいなスキルがあったらしくて何もせずに何もしなくてもレベル上がる人がいたとかいう話はあったけど実際に見てないから知らない!


 「で、どうすればレベルは上がるんだ?」

 「え? 生き物を殺せばガッと上がるよ!」

 「息をするだけで経験値が貰えるとかいう件はなんだったんだ?」

 「そーなんだけど、私と蓑鋤の構成的に何もしないは難しいのよー。 ここでスキルの出番!」

 「そう言えばなんかあったな」

 

 スキル。 私のは思い出す事ができるだけだけど、蓑鋤のは違う。

 彼の初期スキルは『暴食』。 割とヤバい代物で殺した相手からスキルを奪う事ができる。

 名前もそうだけど効果もやべぇ! これぞチートスキル! 


 使い方によっては無双できるんじゃないかって思うじゃん? 

 でも、このぶっ壊れスキル。 実はかなり深刻な問題があってだねぇ……。

 ぶっちゃけると前の私が死んだ理由ってこれなのよ。 


 蓑鋤のステータスには浸食度っていう特殊数値が存在し、それが一定値を突破するとスキルが『暴食』から『ベルゼブブ』に変わる。 そうなると見た目も化け物になって近くの生き物を手当たり次第に襲うようになるのよ。

 で、前の私達はその辺を理解しておらず、蓑鋤最強! 素敵―! 私を食・べ・て♡


 ――からの化け物変異で美味しく頂かれちゃったわー。 


 この世界を生き残る為にはまず力が要る。 それには蓑鋤のスキルは必須。

 

 「つまり、蓑鋤が暴走しない程度に強くなって私を守ってくれればいいのよ! お願いします!!」

 「清々しいまでに他力本願だな」

 「ダメ?」


 私はシナを作って蓑鋤に体を寄せてすりすりとすり寄る。 

 ほらほら、可愛い幼馴染のアピールですよ~。 蓑鋤は小さく息を吐く。


 「分かった。 で、レベルを上げるという方針自体は了解したけど、生き物を殺したらスキルが増えて暴走する事になるんじゃないのか?」

 「あ、そこは大丈夫。 倒した時に選べるみたいだから取らなければいいのよ」

 「だったら俺もスキルなしに近い状態にならないか?」


 実を言うとそうだった。 『暴食』はぶっ壊れスキルではあるけれどデメリットが大きすぎる。

 私の勘なんだけどこのスキルは多分だけど引いた奴をボスモンスターに仕立て上げる為に用意された罠なんじゃないかと思っていた。


 浸食度とスキル保有数は比例関係にある。

 はっきりと検証した訳じゃないけど、前回の蓑鋤のレベルは20。

 奪ったスキルは10。 10個目を奪ったと同時に暴走した。


 恐らくはレベルの半数以下までならスキルを保有できるはずだ。

 つまりレベルが2上がる度に一つ奪えばいい。 

 その辺の管理を間違えなければ蓑鋤は最強のチート主人公になれるってワケよ!!


 「……話は分かったが、どちらにせよ奪えるようになるまで独力でレベル上げとやらをしなければならないという事なのか?」

 「そこは大丈夫! 自力で取得したスキルは浸食率の加算に含まれないのよ! ――ここで私の未来知識が活きる場面!」

 「そうか。 で? その未来知識とやらでどうやってレベル上げをするんだ?」


 ノンノン。 焦っちゃいけないぜ。 ダーリン。

 まずは落ち着いて自らのステータスと向き合うんだ。  


 

 ――はい、場所は変わって外!


 空は相変わらず変な光の格子がある。 ちなみにずっとあんな調子なので夜でも少し明るい!

 

 「どう? いけそう?」

 「行けそうだ」


 蓑鋤は拳を握ったり開いたりしながら小さく頷く。 手には金属バット。

 近くにあったバッティングセンターから借りてきたものだ。

 数時間経過した事によりすっかり混乱から避難へとシフトしたので人は居ない。


 要因として最も大きいのはモンスターの出現だ。 

 レベル上げの為なのか雑魚いゴブリンとかの定番モンスターが湧くようになっている。

 ゲームのつもりなのか一応はレベルを上げられるようにできているみたいね!


 前回はそこそこ大きな生き物を殺すのぶっちゃけ無理だったから私はちょっとしんどいけどスキルがあるから大丈夫よ! 

 はい、いい加減にスキル取得の話をすると重要なのはジョブ!

 最初は全員、無職だけどステータスに意識を向けると転職メニューへと移動できるの。


 これに気付かなくって初動が遅れた人は多かったみたい。

 ちなみに私は気付くのに半月かかったわ! 私のうっかりさん☆

 人によって就けるジョブに違いがあるみたいで私の場合は――


 戦士、僧侶、武道家、魔法使い。 わおド定番! ちなみにこの四つは誰でもなれる汎用ジョブよ。

 私の場合はそれにプラス鑑定士って選択肢がある。

 前回はレアっぽかったから取ったんだけど、役には立ったけど生き残るには辛いジョブだったわ。


 選択が完了すると一つスキルを貰えるみたい。 鑑定士は「鑑定」スキルだけ!

 相手のステータスの一部や物品の詳細が分かる便利スキルよ!

 ただ、レベルで精度が変わるみたいで、格上や複雑だったりレアな代物は勘低不可だったわ。


 このゴミスキル! 初手で取った私はひたすらに蓑鋤の足を引っ張ってたお荷物だったのよ……。

 最悪な事に「暴食」の事をよく分かってなかった私は「鑑定」しまくってあいつ使えるスキル持ってますぜアニキぃって積極的に盗らせてました。 この疫病神! お前は死んで当然だ!


 ――うぅ……。 許してつかぁさい。


 今回はちゃんと頑張るから許してぇ……。 そんな訳で鑑定士はスルーして僧侶に決定。

 ちなみに変更は特殊なアイテムか一定レベルに達するまでできないから選択は慎重にね?

 手に入れたスキルは「回復」。 文字通りHPを回復してくれる上、疲労まで抜いてくれる便利スキルよ。


 怪我がつきものなご時世になっちゃったから体のケアは重要!

 それにスキル使用は経験値の入りが生き物を殺す事の次に多いから使いまくってたらレベルが上がるのよ! 

 前回は鑑定しまくった事もあって割とすんなり10代半ばぐらいまで上がったわ。


 ――雑魚だから死んだけど(涙

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