第13話 みんなにプレゼントを買おう!後編
「確かに、これはエメラルドね。それにチェーンもプラチナだというのは確かなようね。でも、100万ゴルというのはおかしいのではなくって?」
「なっ……なにをっ……。」
私は露天商にいちゃもんをつけて格安でたたき売らせる方法を取ることにした。
露天商は顔を真っ赤にしてこちらを睨みつけている。
周りの目があるから手は出さないようだが、周りに人がいなければ殴りかかってきたことだろう。
「そうねぇ、このエメラルドの質と、プラチナですと……よくて5万ゴルというところかしら?あら、よくみればこのエメラルド傷があるわね。これだと1万ゴルでも高いかもしれないわねぇ。」
ただ淡々と高いことを理屈をつけながら指摘していく。
まあ、この世界の価値がよくわかっていないので、もしかしたらエメラルドという宝石はこの世界ではとっても高価なものかもしれないけれどね。
私は魔族だからこのくらいのいちゃもんはつけないと。
「あらあら、よく見ればこちらのブレスレットも同じ素材で作られているようね。先ほど店主は1年に一つ扱うかどうかといった高価なものだとおっしゃっておりましたけれど、こちらのブレスレットはおいくらですの?素材は一緒ですものね。こちらも200万ゴルなのかしら?」
「ぐっ……。」
よく見れば他にも同じエメラルドとプラチナで出来ていると思われる製品がいくつも置いてある。これらはすべて200万ゴールドなのだろうか。
店主に問いかければ店主は顔を真っ赤にしてこちらを敵を見るような目で睨みつけてきた。
「まあ、怖い怖い。本当のことを言われてそんなに怒るだなんて。あなたがいけないのよ?ぼったくろうとするから。」
「な、なにをっ……商売の邪魔だっ!!そのネックレスはやるからとっととここから離れろっ!!」
「まあ、いいんですの?1年に1つ扱うかどうかもわからないような200万ゴルもする高価なネックレスをただでもらえるだなんて。」
店主は声を荒げて私を追い立てようとする。
どうやら私は店主のプライドをズタズタに切り裂いてしまったようだ。
うん。よくやったわ私。
これでこそ魔族らしいと言ったものよね。
声を張り上げて言ったし、これでしばらくはこの露天商のところには客が来ないことだろう。
私はネックレスをタダで手に入れることができて、かつ魔族らしくこの露天商の商売を邪魔してみせた。これは自分でも及第点だと思う。
本当だったらここで露天商に暴力でもくわえれば完璧なのかもしれないけれど、それはやめておく。
「とっととあっちにいけっ!!」
店主は顔を真っ赤にしながら私を追い立てる。
うんうん。いいことだ。
私は自分のとった行動に自分で満点をつけて、その場を後にする。
手にはお婆さんへのプレゼントのネックレスを持って。
そうして帰りがけにリボンを買った店主の元を通ったときに、
「あんた良くやったな。スッキリしたよ。」
なんて声をかけられた。
意味がわからなくて私は首を傾げた。
「ああ、あんたには普通のことだったのかな。恐れ入ったよ。またうちのお店に来てくれよ。今度はもっといい商品を用意しておくよ。」
「ええ。楽しみにしておくわ。」
私はみんなにプレゼントを渡すため意気揚々と家に帰ったのだ。
☆☆☆☆☆
「ありがとうございます。似合いますか?」
クロロに赤いリボンを、
「ありがとうございます。似合う?サーヤお姉ちゃん。」
ライラックに紫色のリボンを、
「まあ、素敵なネックレスね。ありがとう。どうかしら?」
エメラルドのネックレスをお婆さんに渡した。
3人ともにこにこ笑顔で嬉しそうにしているのを見ると、私も嬉しくなって微笑んだ。
「それにしても、このネックレス高かったでしょう。」
「ええ。ですが、店主が大幅に値引きしてくれて……。200万ゴルのところを100万ゴルにしてくれたんです……」
お婆さんがにこにこ笑いながら尋ねてくるので私はそう答えた。
するとお婆さんはギョッとしたように目を瞠った。
「さ、サーヤちゃん。あなたこのネックレスに100万ゴルも支払ってしまったというの……。」
お婆さんがとても驚いているので私は首を傾げる。
100万ゴルを持っていたことに驚いているのだろうか。まあ、実際にはタダでもらったんだけど。
「いえ……ちょっと店主脅してみたらタダで……。」
「ぷっ。まあ、まあまあまあ、良い買い物をしたのね。サーヤちゃんは。」
タダでもらったと言うとお婆さんは今度は愉快なものを見たとばかりに楽しそうに笑い出した。
タダでもらったものをくれたと気分を悪くしないのだろうかと不思議に思いながらお婆さんを見つめる。
「確かにエメラルドという宝石を使って入るけれど、ここに傷があるから値段はグッと安くなるわね。そうねぇ、いいとこ1万ゴルくらいかしら。ふふっ。この露天商顔を真っ赤にして怒ったでしょう。」
「え、ええ。」
「しばらくこれを売ってた露天商はここで商売はできないわね。」
「え、ええ。確かに私が大げさに商売の邪魔をしたから……。」
「ふふ。それは正解だったわね。その露天商は悪徳商人よ。サーヤちゃん。良くやったわ。きっと、街のみんなも喜んでいることね。」
なあんて言われてしまったわけで。
どうやらあの露天商は悪人だったようです。
……もしかしなくても、私はまた魔族として不適切な行動をしてしまったのではないかと、がっくりと肩を落としたのだった。
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