渇きと食欲

あれから深い森をひたすら歩いている二人。そんなアンディにジェシカは話しかけた


「今どこに向かってるのアンディ」


「とりあえず俺の知り合いが居る町に行ってしばらくそこでお前を成長させる」

「そのままお前の身に何も起きなければずっと住めばいいし他所に家建てて生活送るのもいいだろ」

「とにかく今はこっちから何かする必要はないと言う事だ」


「分かった」


***********


しばらく歩くと雲行きが怪しくなり次第に雨が降り始めた。

2人はずぶ濡れになりながらもなんとか洞窟を見つける事ができそこに避難し雨宿りをしていた。

アンディはリュックから荷物を出し火起こしの準備をしている。


「さ…寒いよアンディ……」


「ああ待ってろ、もうすぐた」


少し待つと焚き火に火がついた。


「ほら、とりあえず服乾かせ風邪引くぞ」


ずぶ濡れになった衣服を1枚1枚と脱ぎ焚き火に近づけ乾かしていた。

冷えた身体も暖まりジェシカはアンディに気になる事を尋ねた。


「ねぇアンディ」


「なんだ」


「人が私たちの血を飲んだらどうなるの……」


「悪魔になる」

「半人半妖と呼ばれ目に映る生き物全てを見境なく襲い人間の男の内臓を好み人間の女は犯され生き血を吸われ柔らかい肉を好む」

「ごく稀だが子孫を残す為の道具として扱われる事もある」

「どちらにしても世界から嫌われている事に違いはない」


「それなら私たちも人間に憎まれているの」


「俺たちは技術や魔術、そして戦闘技術などを人間に教え相互理解をして生きている」

「何より狩りの依頼があれば受けている」


「そうなんだ」


「だが気をつけろよ。俺たちの事をリーパーだと分かるとお金欲しさに邪教徒に情報を教え攫われ奴らの餌になった仲間は数知れない」


「そんな……」


「だからこそ抗う為に力を付け対抗できるようにしておかなくてはならないんだ」


「そっか……確かにそうだね!なんかアンディやけに饒舌だったよ」


「そうかよ」


クロスリーパーの血が世界の脅威になる。だが助けられているのもまた事実。久しぶりに会話も弾み色んな情報も聞けて一段落しようとしたその時だった外に人の気配をジェシカは感じた。


「誰かこっちをみてる気配がする!」


「ああ、分かってるよ」


雨も小降りになり気配のする方を見ると"人"が既に抜き身の剣を持ちダルそうな感じで肩を揺ら揺ら横に揺らしながらこっちを見ていた


「"あの人"大丈夫なのかな……」


「ジェシカ"アレは"さっき話した悪魔だ」


「え…アレが…」


ジェシカには見た目は人と見分けがつかない。

何が悪魔で何が人間なのか。

そして何故アンディはすぐ悪魔と分かったのか全て謎だった。

するとアンディが私の前に立った。


「ここは俺がやる戦い方をよく見ておけ」


「うん。分かった」


アンディが戦闘準備に入る。


「ブラッディローズ」


そう言うと右手から血が垂れ始め槍の形に形成されていく。

しかし色が私と違ってアンディのは赤黒色だった。

それを見た悪魔は舌舐めずりし目を見開いてこっちとの距離を詰めてきた。

するとアンディもほぼ同時に距離を詰めたにも関わらずアンディの方が遥かに早い。

すかさず槍の先端が自分の方を向くように持ち方を変え柄側の方で悪魔の腹を狙い払い上げるように高く上げた。

悪魔は空中に払い上げられたがダメージを受けてるようには見えなかった。

ジェシカはアンディを見ると既に槍を更に持ち方を変え悪魔に向け狙いを定め槍を投げていた。


あまりの行動の速さについていけないようで槍は見事悪魔の腹に刺さった。

相当なダメージを受けたようで空中で叫んでいた。

するとさっきまで地面にいたはずのアンディは悪魔に刺さっている槍を足場に乗っていた。


「え!?いつの間に…」


するとアンディは一瞬で足場にした槍から離れ体勢を変えると腹に刺さってある槍を握り更に悪魔を上に放り上げると同時に槍を腹から抜くと悪魔の腹から大量の血が空中に舞った。

そんな空中に舞っている血をアンディは自分の足場のようにして両脚に力を入れ高く飛び上がり打ち上げた悪魔の更に上に来た。

アンディは槍を構え上から下へ一気に急降下し悪魔の心臓を刺しそのままの勢いで悪魔は槍が突き刺さったまま地面に打ち付けられた。


「ブラッディ・レイン」


そう言うと槍は消え時間差で血の雨が降ってきた。

そんなアンディはジェシカを呼びまだ息のある悪魔を私のところに持ってきた。


「飲め」


「え…?」


「血を飲め。次いつ渇きが来るかなんてわからねーからな」


「でも…悪魔だよ…」


「悪魔は元人間だ。さあ飲め」


そう言うとアンディは何の躊躇もなく首元にかぶり付き私を見ながら血を吸っている。


「ほら飲め」


「うん…」


アンディとは反対の首元に口を当て頸動脈に牙を押し込みまだ生温かい鮮血を飲んだ。

小雨の降りしきる森で一匹の悪魔は心臓を貫かれ左にはアンディ、右には私が首元にかぶり付き生き血を吸われている。

まさに弱人強食。そう思いながらジェシカは血を啜っていた。


**********


この日はそのまま洞窟で朝を待つ事にした。

焚き火にあたりながらアンディが言う。

さっきの戦いは相手が弱かったから良かったと。

アンディが言うには悪魔にも様々な強さや上位などがいて通り名まである悪魔もいると言う。

更に魔術を使いこなす悪魔までいると言う。


「いいか、さっき見せた戦いは基本中の基本だ」

「俺たちリーパーは血を操りそれを自分の力を利用するんだ」

「自分だけの血だけではなく相手の血までもな」


「うん…」

「それよりなんでアンディの血の武器は赤黒いの?」


「あー?お前な…これが普通なんだよ…」

「ジェシカの真紅が珍しいんだよ」

「あんな綺麗な真紅の武器なんて誰も形成できねーし保つ事すら困難なんだ…」


「じゃ…なんで私は皆んなと違うの」


「ジェシカ。違うんじゃない…"選ばれたんだ"」


「誰に!?私みんなと同じがいい!」


「古代マリア様からの寵愛だ。次世代のマリアになれる素質がお前の中にはあるんだ」


「そんな…私そんな事なんて望んでなんかない!」


「運命は逆らえない、だがなすぐに受け入れろなんて言わねーよ」


「……どう言う事」


「今のお前には運命を受け入れるか逆らうのかの選択以前だ」

「いずれにしても力量不足な事に間違いはない」

「1歩づつ地味に強くなって行くしかねーよ今はな」


真を突かれたジェシカは不貞腐れた。


「分かってるよ!うるさいな!」


そんなジェシカをみて笑うアンディ。


「はは!ほら早く寝ろ。朝早くから出て向かうぞ」


アンディに見守られながら眠り朝を迎え日が昇る前から洞窟を出て目的地である町に向け霧の立ちこむ森へ歩いて行くのだった。

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