第19話
火の番はどうなってるのかと心配していたら、ちゃんと誰かが見てくれていた。
「あー、戻って来た」
「村上くんどうして?」
「葉月に頼まれたぁ。俺らんのとこの火おこす代わりに見とけって」
「ありがとう」
「んじゃ行くわー」
炭を足して火も落ち着いた頃、池田くんが戻って来て、その後、葉月くんが戻って来た。
「ごめん。あちこちで呼ばれて……」
葉月くんが申し訳なさそうに謝った。
「これ、先生の手伝いしてきたらくれた」
池田くんは大きなマシュマロを持って帰って来ていた。
思わず瑛里華と顔を見合わせる。
「池田くんはしょうがないよねー」
「先生に呼ばれてたんだもんねー」
「ホント、ごめん」
葉月くんが慌てる。
「一翔は今日のために練習したのが裏目に出たな」
「言うなって!」
何かうろたえてる?
「どう言うこと?」
「オレの兄貴に聞いて、一翔はいろいろ火おこしの練習してたから」
「『言うな』って言ったろ……」
「いろいろって?」
「火おこしは毎年与えられる道具が違うんだよ。去年は新聞紙じゃなかった。一昨年はキリみたいなの渡されたって言ってたし」
葉月くんは「何でも簡単にやってのける人」というわけではなくて、見えないところで努力する人なんだ。
池田くんの包丁さばきにもびっくりしたけど、瑛里華のことも……みんなわかんないことがいっぱいある……
「食べよっか」
「食べよう」
「腹減った」
葉月くんに焼肉のタレを一番に渡した。
「ちょっと意地悪言い過ぎちゃた。ごめんね」
葉月くんが笑ってくれたから、わたしも笑って、2人で顔を見合わせてもう一度笑った。
「ねぇ、マシュマロ先に焼いていい?」
「食べたーい」
「焼いちゃおっ」
瑛里華と2人でもらったマシュマロを先に焼き始めた。
「なぁ、絶対に気づいてないと思うから、オレ言おうか?」
「これ以上勇は何も言わなくていい」
ボソボソと葉月くんと池田くんはずっと話していて、瑛里華はずっと笑顔だった。
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