番外編03 一万字インタビューには程遠い
【アルドー(以下ア)】さて、本日は人生のほとんどを寝て過ごした方にお越しいただきました。
と、言いたいところですが、逃げられた為、記憶の殆どを共有されている、通称『ダミー君』に代理でお話を伺います。
聞き手はアルドー・ルカ・マグノリアです。よろしくお願いします。
【ダミー君(以下ダ)】よろしくお願いします。
【ア】まずはお名前と出身地からお願いします。
【ダ】ハルト・カツラギ、太陽系第三惑星地球の日本をルーツとした地球人です。
【ア】初めて本星ではなく地球という名が出ましたね。
【ダ】現在のマグノリアの方には馴染みがないと思われましたので。
【ア】その地球からマグノリアへやって来た経緯を教えて下さい。
【ダ】それはマスターの話ですか? それとも星船の話ですか?
【ア】まずは星船からお願いします。
【ダ】CEOシャハル・ドーン氏のもとへ集った各分野の若きスペシャリスト達が移住を計画しました。
他チームによる計画が頓挫して売りに出された小型宇宙船を買い取り、辺境の惑星を破格の値段で購入し移住してきました。
【ア】身も蓋もない説明ありがとうございます。ところで、星船に名前はあったのですか?
【ダ】買い取った時は『女神の裳裾』号だったそうです。
【ア】裳裾!?
【ダ】ええ、恥ずかしいので単純に星船にしたそうです。
【ア】そ、それはそうでしょう。それではハルトさんの経緯をお願いします。
【ダ】シャハル氏によって買い取られた小型宇宙船の改装にあたって、医療セクションの設計・運用を依頼された会社の従業員でした。
出向期間が終わり社に戻った所解雇を言い渡された挙句、星船に拉致されました。
【ア】拉致ですか。
【ダ】家の玄関前で意識を飛ばされ、気づいたら星船にいて帰りたくても帰れない所まで来ていました。
しばらく自暴自棄になっていたようですが、ソフィア様と出会って正気に戻ったようです。
【ア】そこは割と曖昧なんですね。
【ダ】感情面は私には理解が難しいです。
【ア】あー、そういうのは無理かー。馴れ初め聞きたかったなあ。
⋯⋯気を取り直して、貴族社会についてお聞きします。
【ダ】はい。
【ア】星船を降りてから貴族社会を作ったようですが、何故か解りますか?
【ダ】マスターが見聞きした物を統合しますと、『王国かっこいいじゃん』だそうです。
【ア】は?
【ダ】当時のドーン商会メンバーは、主に二十代から三十代の若い方達で構成されていました。
マスターは『頭のいい馬鹿』と思っていたようです。
【ア】ハルトなら言いそう。
【ダ】ドーン氏を国王に据えた後は、星船の各セクションの室長を元老院と称して新たに役職をつけた様です。
爵位については星船での重要度とドーン氏のお気に入り具合で上下が決まったようです。
【ア】いい加減だなぁ。それを千年続けるとか信じられない。私の先祖。
【ダ】星船のデータベースで爵位について一応調べたようです。
マスターが最初の眠りについた後に私にも依頼がきまして、貴族の振る舞いを調べました。
【ア】え、どういう事?
【ダ】クルーの皆様は貴族ではありませんでしたし、何より当時の地球は貴族社会ではありませんでしたから。
【ア】なのに何故。
【ダ】マスターのお考えでは『カレッジの飲み会のノリ』『俺の考えた最強の国』『やっぱ王侯貴族よ』だそうです。
【ア】えぇぇ、なのに清貧なのぉ?
【ダ】移住計画発案者のバーレイ様、後のエピ公爵閣下がそれだけは譲れないと仰られたとか。
かつて地球にあった宗教で必要以上の科学製品を厭う宗派があったそうです。
それに感化されたとか。現在の服装もその流れですね。
【ア】⋯⋯母上の始祖が。ていうか、何でずっと続けるかな、うちの先祖は!
んんっ。ありがとう。文献で分からなかった部分が埋められました。
【ダ】それは何よりです。
【ア】服装と言えば、神殿長は皆とは違って裾の長い上着をきていますが、それは一般市民と差別化しているのですか?
【ダ】芸術のコルデラ侯爵が服飾も担当されてまして、初めはマスターのルーツが着用していた『着物』を作ったようですが、⋯⋯私が着こなせなくて。
【ア】そんなに面倒な服だったのですか?
【ダ】肩やら脚やらがはだけてしまって。あられもない姿に。
⋯⋯そんな訳で、今現在のものはある宗教の聖職者が着用するものを参考に作られました。
【ア】そ、それは大変だったね。⋯⋯次に建築物についてです。星船と王城とで建築様式が違いますが何故ですか?
【ダ】移住初期は仮の住居として、星船で作られたパーツをキューブ型の住居に組み立てていました。
素材はそれ用に地球で用意されたものです。
ですが、素材は有限ですのでこの惑星にあるもので建てる流れになり、『王が住むなら城!』と言って建築のフォンス侯爵が、データベースにあった設計図を元に建てました。
次に『式典するなら聖堂!』と、宗教も無いのに聖堂が加えられました。
という訳で石の建物となりました。
【ア】へ、へぇぇぇ。
【ダ】宗教は皆様個々には信仰されていたかもしれませんが、信仰を他人に押し付けないという決まりがあったようです。
人々を後年纏めるには何かシンボル的なものが必要だろうと、ソフィア様を担ぎ上げておりましたね。
シャハル氏は嫌がるマスターに神殿長を押し付けて来たそうです。
【ア】ああ、予想通りだねぇ。彼らが個々で信仰していたものは、今では領地や集落でひっそり続いているかも知れませんね。
その土地特有の文化とか習慣がありますから。
【ダ】左様でございますね。
【ア】次はエネルギーです。星船の発電は何ですか?
【ダ】核融合でした。燃料は主に重水素と三重水素ですが、この星で調達するのが設備的に難しいので、持ち出しの燃料が尽きたところで運用されなくなりました。
代わりにこの星の発光微生物で有機発電所が造られました。
細かいシステムの話は割愛させていただきます。
【ア】ああ、神殿の裏の光っている⋯⋯。
【ダ】左様でございます。王城や地方都市には小規模なものが造られたと伺っております。
【ア】ところで君の動力はどうなっているんですか?
【ダ】一日に数時間、皆様の就寝時に専用ドックでデータの最適化作業と同時に充電しています。
【ア】あれってそういうものだったんだ。緊急時はどうしていたのですか?
【ダ】ペアの王に先立たれた人形達が常に数名おりましたので、ローテーションを組んでおりました。
彼女達は充電が必要ではありませんし。
【ア】ところで話は変わりますが、ソフィア嬢とご両親はドーン商会長と仲が悪かったようですが、同じ志で乗船したのでは無いのですか?
【ダ】先程、シャハル氏は計画が頓挫した星船を購入したと申しましたが、その頓挫したグループの機関士長でした。
そのままシャハル氏がご自分の計画に引き入れました。
そういう経緯で乗船された方は少なからずいたようです。
【ア】なる程。頓挫しては生活に困りますからね。
と、すると、元々何処かの惑星に移住するつもりではあったんでしょうか?
【ダ】そのようです。家族四人で地球を離れるつもりだったようですね。
あまり詳しくはマスターもご存じないか、私と共有していないのかも知れません。
個人情報ですし。
【ア】ふむ、では最後にダミー君について教えて下さい。いつ頃作られたのですか?
【ダ】マスターがソフィア様のクローンの製作を命じられてすぐです。
すでに人型のアンドロイドの骨格は有りましたので、その上にマスターをスキャンして外見が作られました。
基本動作は既にありましたので、そこにマスターの情報が入力されました。
それと執事、ナニー等のプログラムが組み込まれました。
【ア】子育ても出来るんだ。
【ダ】マスターが寝ている間、人形の調整をしなければなりませんでしたので。
【ア】え、凄くない? 万能過ぎるでしょう。
───ここで外からガタガタと音が。
【ジョイル(以下ジ)】わー、陛下、駄目ですよぅ。怒られますよ。
【ア】おや、ジョイル。こちらに居たのかい?
【ジ】たった今戻りました。ハルト様も一緒です。
【ハルト(以下ハ)】一体何を。⋯⋯陛下、まだいらしてたんですか。
【ア】あっ。おかえり、ハルト。今、君の代わりにインタビューを。
【ハ】録音は中止だ、ダミー。
「引き抜きは駄目です。陛下。ダミーはフローレスへ連れて行きます」
「こんな高性能勿体ない」
「自分と同じ顔が王城で役に立つとか、心情的に無理」
「う。顔を変えれば⋯⋯」
「今となってはお金かかりますよ。素体も古いですしね」
「わかった。諦める」
【ア】さて、途中おかしなことになりましたが、インタビューはこれで終了です。
ダミー君、ありがとうございました。
【ダ】どういたしまして。お役に立てたなら何よりです。
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