第6話 艇長室にて
『コンコン』
と扉をノックする音が部屋に響いた。
艇長室の扉は開いたままだった。
と自身のデスクで書類に目を通していたシバが顔を上げると、入り口で顔を覗かせているクロードの姿が目に入った。
「入れよ。早かったな」
とシバが言うとクロードは扉を閉めて部屋に入ってきた。
「今日は大変だったな」
とシバが
「まあね、まさかあそこで炎竜が出てくるとはね……本当に助かったよ」
クロードはそう言いながらシバのデスクの前にある応接セットのソファに腰を下ろした。
「でもうちの三連装砲はスゲー威力だな。いつもの事ながら」
とクロードは感心したように言った。
「だろう? だが一撃で仕留められたのはカーンの腕があっての事だな。カーンにちゃんと礼を言ったか?」
とシバは満足げに応えた。
「うん、言った。それにしてもあんな急降下から一撃で仕留めるって尊敬するなぁ……俺もあんな風になりたいなぁ……」
「なんだ? お前も砲撃手になりたいのか? 冒険者になったのは勇者になるためじゃなかったのか?」
「いや、そうなんだけどね。でもちょっとカーンには憧れるなぁって……」
「そうか。それなら憧れだけにしとけよ。初志は貫徹しないとな。ところでクロード。なんであんなところに炎龍がいたんだ? もしかしてお前は呼び寄せ体質か?」
そう言うとシバは背もたれに身体を預けるように椅子を傾けた。
「呼び寄せ体質ってなんだよ。そんなんじゃないよ。依頼はあの浮遊島の洞窟に住み着いたゴブリン退治のだったのは知っているだろ?……それはすぐに片付いた」
クロードは呆れたような顔で否定した。
「ああ、そうだろうな。ま、ゴブリンぐらいならクロード一人だけでも余裕で退治出来ただろう?」
とシバは背もたれを軽く揺らしながら応えた。
今回のクエストは貴族所有の浮遊島の洞窟に繁殖しまくったゴブリンの退治依頼だった。通常、浮遊島にはゴブリンは生息していない。今回は元々大陸の一部だった土地が地殻変動で浮上して、できたばかりの浮遊島だった。クロード達が退治したのは、島がまだ地上の一部だった時から住み着いていたゴブリンだった。
貴族がこの浮遊島を買い取ったのは良いが、そのゴブリンの処理に困り、ギルドへ依頼してきたという事だった。それ以外には、わざわざゴブリンを浮遊島等に放つという嫌がらせも貴族社会にはあるようだった。
「まあね……で、さっさとゴブリン退治を終わらせてみんなで飛空艇を待っていたら、空からワイバーンと炎龍が降ってきたんだ」
「なんだって? なんであんなものが降ってくるんだ?」
シバは呆れたように言った。
「うん。降ってきたというより炎龍とワイバーンが争いながら空から舞い降りて来た……いや落ちて来たって感じかな」
クロードはその時の状況を思い出す様に、こめかみに指を当てて考えながら話した。
「要するにあの皇女殿下がワイバーンに乗って炎龍と戦いながら、あの浮遊島に降りて来たから加勢したって事だな?」
シバはクロードが言わんとする事を先に理解したようだ。
「そうそう、そう言う事だよ。流石、よく分かっていらっしゃる」
とクロードは笑った。
「しかし、なんで皇女様がドラゴン退治なんかしていたんだ。それもたった一人で……。どう見てもドラゴン退治に慣れているとは思えないんだが……」
シバは表情も変えずに言った。
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