鶴の一声-起
この話は、友人の相談事から始まった。
「家族の仲が最悪だ」
というのも、彼の家は地域でも有名な地主だった。
祖父は1代で財をなし、まぁ正直金持ちと言って差し支えない家だった。
不仲の理由はと言うと。その財産の相続に関してだ。
家長の祖父はそれなりの歳だ。
祖母は先立ち、足腰が悪くなるまで世界各地を飛び回っていた祖父はいよいよ余生を家ですごし始め。
介護とは縁遠いほど元気ではあったが。
それでもこの手の話は遠からず必要ではある。
しかし、必要に迫られたところで額が常軌を逸していれば、
それを奪い合う人間もタダでは済まない。
今後の人生何不自由なく暮らすには、払うものを払った後でも十分な金額が残ると分かれば。
興味がわかずにはいられないだろう。
家庭の不仲はそれが原因だ。
「でもそういうのって、そもそも遺言書とかがベースになるんでしょ?なら、争ったところでおじいちゃんの意思次第なんじゃないの?」
「それがさ。遺書がふたつあるんだよ。」
「遺書が…2つ?」
普通に考えればありえない。
そもそも遺書は、自身の亡き後に自身の意思を示すための物だ。
つまりそれは、本人の意思がふたつあることになる。
「どっちか偽物とかじゃなくて?」
「それがさ。本人に聞いてもどっちも書いたって言うんだよ。意味わかんないだろ?」
「でも、どの道それが家庭内不仲にどう繋がるんだよ」
「2つとも内容がまるっきり違ってさ。んで適用されるってなった方に自分に不利だったらも第あるだろ?だからどっちかが本当の遺書だって言いたいみたい」
「え、待ってそれって内容を見たってこと?」
「見たも何も。発表してたよ。」
やはり金持ちの考えは分からない。とでも言うべきなのか。
遺書をふたつ作って発表するなんて。
何を考えているか分からない。
「面倒だしさっさと何とかして欲しいしさ。お前ちょっとなんで遺書ふたつあるのかー調べて見てよ。」
「そりゃ記事に取り上げていいなら調べたいけど…家庭の事情じゃ取り上げきれないからな…」
「大手財閥の家庭事情!とか名打てばちょっとは有名になるんじゃない?w」
「地域でちょっと有名程度は財閥っていうのかな…」
ともあれ。私はこの変な祖父に興味が湧き、調査することとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます