第24話 スキルブックを手に入れろ!②


呻き声を上げたメイジの胴体がボトリ、と落下した。アンデット系なので血潮の類はないが、腐った肉片が少し飛び散った。


それと同時にボロボロの本も地に落ち、響は一瞬にしてそれを拾った。


「これがスキルブック……?」


【スキルブック初級】

・魔法系統 サンダーボルトLv1

・MP10を使用し雷撃を放つ。確率で状態異常感電有り。


スキルブックとは便利な物で、本を開けば勝手にスキルが身につく。

今回の中身はサンダーボルト。初級魔法とはいえ、雷系統は攻撃力、殲滅力に長けている。

この状況下では大いに役立ってくれるはずだ。


(良かった、攻撃系スキルだ! 早速コイツらにぶっぱなしてやる!)


即座に本を開くと、訳の分からない文字が記されている。

だが不思議とそれがサンダーボルトであると理解出来た。


「魔法なんか使ったことないけど、スキルなら他と同じ要領か……? ええい、物は試しだ! サンダーボルトッ!」


1番近くにいたスケルトンに手をかざし叫ぶ。

するとほんの少しの脱力感と共に、掌からは雷撃が放たれた。


「ほ、本当にでた!」


サンダーボルトは雷鳴と共にスケルトンに襲いかかり、その周囲のモンスターにまで影響を及ぼした。

腐敗臭と人肉の焼ける嫌な臭いが鼻を刺激する。


たった一撃の元に5体のモンスターを倒す事に成功し、その他にも数体感電状態に陥っている。


「すげえ……これが魔法系スキル。これなら、いける!!」


後方から飛んでくる火の玉を白光で切り裂き、バックステップで距離をとる。


「サンダーボルト!」


【レベルアップしました】


大群に向けサンダーボルトを放つと先頭の数体が倒れ、周囲が感電し大きな隙が生まれた。


(出来るだけ無駄撃ちを控えてここを最小限に乗りきらないと……! こればかりにたよってられない!)


響は白光を構え跳躍。

そして倒しきれなかったグール目掛けて全力で振り下ろし、そのまま横に薙ぎ払う。

直後、アンデットナイトの剣が眼前に迫る。


ギリギリの所でそれをいなし、即座に斬り返す。


「らあああぁぁぁ──ッ!!!!」


蹴り飛ばし、斬り殺し、焼き殺した。

襲い来る腐敗したモンスター達を次々に殺した。

響自身、幾度となく肉を裂かれ、血を流した。

だがそれでも響の腕が止まることはなかった。


やがて、白光の切っ先が最後のアンデットナイトの頭部を貫いた。


「ッはぁ……はぁ……これで、やっと終わった……」


【レベルアップしました】


全身の筋肉が悲鳴を上げている。

心臓がやけにうるさい。


響はソロで、モンスターハウスの殲滅を完了させたのだ。Eランクダンジョンとは言え、とてもじゃないが普通のF級探索者が達成出来る内容ではない。


一歩間違えれば、この場で倒れていたのは響だったかもしれない。

膝に手をつき呼吸を整える。まだ脳は興奮しているのか、どうにも落ち着かない。


「危なかった。サンダーボルトが無かったら……多分、死んでた。もっと強くならなきゃ……もっと」


スキルブックと目目連に救われはしたが、今回乗り越えられたのは決して諦めない精神力あってのもの。

F級としてさげずまれながらも、堪えてきた響自身の能力のおかげだ。


「このままボス戦でもいいけど、念の為もう少しレベル上げしておいた方がいいか? 消耗してるけど、さっきみたいにならないように気をつければ大丈夫そうだな」



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