第10話 いざ、ダンジョンへ②
「君が佐藤君かい?」
筋骨隆々で青髭の目立つ男が言った。
「あ、はい。よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ頼むよ。荷物持ちとは言え必要な仕事だ気を抜かないでくれよ? ああ、あとこれ書いといてくれ。同意書だ」
「は、はい!」
同意書はダンジョンアイテムの配当の事や、怪我や死亡時の保険の内容だった。
一通り目を通した響はささっとサインをした。
たかが荷物持ち。だけど響からしたらD級ダンジョンと言うだけでもかなり危険だ。言われなくても気を抜いたりはしない。
今回の攻略隊は響を含め8人。F級の響にD級が3人、C級が4人と中々心強い。この面子ならばC級ダンジョンだとしてもクリア出来るかもしれない。
リーダーは先程響と話していた武田という男。
独自の攻略隊を持っているため、界隈では少しだけ名の知れた男だ。
今回のメンバーも響以外は武田組だ。
新顔の響にも皆声をかけ、F級探索者の事を馬鹿にする人間はいなかった。それどころか低ランクでも頑張っている響を皆応援していた。
(なんだか皆凄い良い人達だな。今日この攻略隊に入れて良かった。この人達となら安心出来る)
響は今回の攻略がどんどん楽しみになってきていた。
────
──
─
ゲートの中はまるで迷宮のような所だ。
スタート地点から少し進むと左右の分かれ道。特段珍しくもないが、F級の響からしたらこういうリスクは避けたかった。
「さて、早速分かれ道だが二手に別れよう。いつも通りボス部屋に辿り着いた組は他の組を待つこと。これだけは絶対に守ってくれよ」
「あ、あの俺は……」
「ああ響君はうちの攻略隊は初めてだったね。うちはこういう時、あらかじめ別れるメンバーは決めているんだ。君は俺と一緒に行こう! 何かあっても守ってやるから大船に乗ったつもりでいるといい!」
ガハハと笑う武田はなんだか心強かった。
武田チームはC級2人D級が1人、そしてF級の響。
残りのメンバーは目つきの悪いC級覚醒者について行き、左の通路へと進む。
(そういえば武田さんはどれくらいのステータスなんだろう。覗き見るのはなんだか悪い気がするけど、バレるもんじゃないしいっか)
響は武田のステータスを確認する為に頭の中でそう念じた。
【ステータス】
C級覚醒者 武田俊哉 Lv17
HP:290 MP:65
力51
防御力36
知能11
速度28
精神力22
表示されたステータスを見ると、当たり前だが響より遥かに高い。
しかし、思ったよりも低いんだなと感じた。
それはきっと先程見た、探索者組合副会長クラッドのステータスがずば抜けて高かったからだろう。
(武田さんはC級の中でどれくらいの位置にいるんだろう)
「おい響君! ボケボケしていると置いてくぞ!」
「あっ、す、すみません」
ステータスの数値に夢中になっていたので、歩き始めていた事に少しも気付かなかった。
先に進んでいる武田達を見て、響は小走りで追いかけた。
それから少し歩くと先頭の武田が足を止めた。
腕を出し待てのアクション。どうやらモンスターのおでましらしい。
暗闇の中から姿を現したのは3匹のコボルト。
見た目は二足歩行の狼。だがサイズは熊と同等かそれ以上だ。
鋭い眼光にだらしなく垂れた唾液。喉を鳴らし獲物を舐めるように睨んでいる。
「コボルトか。全員構えろ!」
「おう!」
武田は大剣を構える。残る2人はハンマーと弓。前衛に重きを置いた編成だ。
「お、俺も……!」
荷物持ちと言えど最低限自分の身は自分で守る必要がある。響はボロボロの長剣を構え、様子を窺う。
(コボルトなんて久しぶりだ。弱点とかわかるのか?)
【コボルトLv5】
・弱点 頭部
目目連を使おうと思ったわけではなかった。しかし、響の考えに反応し自動で情報を紡ぎ出した。
(おお! やっぱりモンスターの情報も見れるのか!それに弱点まで……目目連か、思ったよりとんでもないぞ!?)
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