第4話 珍獣妻の生態観察記録
――この珍獣(妻)を理解しなければ、生き残れない。
そう確信した僕は、スマホのメモ帳に『珍獣観察日記』を書き始めた。
【観察1】
“珍獣、朝から性欲全開。
シャツを畳みながら、僕の腰に手を伸ばしてくる。”
【観察2】
“珍獣、寝る前に触ってくる。
寝た後も触ってくる。(行動原理不明)”
書けば書くほど、僕の生命への危機感で胸が締めつけられた。
僕(このままでは……絶滅する)
それでもやっぱり、
この苦労をどこかに吐き出したかった。
だから――つい魔が差してしまった。
Xの裏垢を作り、日記の一部を愚痴として投稿したのだ。
【投稿】
「妻(30)、昼夜問わず僕を触ってくる。
僕(40)は絶滅危惧種なんだけど。
どうすれば生き残れますか。」
投稿して、スマホを置き、寝た。
翌朝。
僕「……ん?通知……え?」
画面を見た瞬間、心臓が止まるかと思った。
“いいね 1.2万”
“リポスト 4,800”
“コメント 700”
……バズっている。
コメント欄には見知らぬ人たちが、
「奥さんの元気さ羨ましい」
「絶滅危惧夫、保護案件w」
「シリーズ化してください」
「珍獣妻、強すぎる」
……などと好き勝手に書いている。
僕「地獄か……?」
僕が震えていると、
リビングで妻のスマホが“ピコン”と鳴った。
妻「なんかさぁ……『珍獣妻』ってワード、めっちゃ流れてくるんだけど?」
……終わった。
妻が僕のスマホ画面を覗き込んだ瞬間――
妻「……ぷっ……ふふっ……っはははははは!!」
床に転がって爆笑し始めた。
妻「ちょっ……これ……私のこと!?
“珍獣、夜110%”って何!!
“理性:未検証”って書いてあるじゃん!!
フォロワーさん大爆笑してるし!!」
僕「いや、その……」
妻は涙を流しながら笑い続けた。
「よーくん……これ、連載したら?
私、前向きな珍獣だから気にしないよ?笑」
いや気にしてほしい。
妻はケラケラ笑いながら続けた。
「じゃあ次は、私が“絶滅危惧夫の生態”を書くね♡」
夫の平和は、SNSの海に沈んだ。
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